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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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523話 嘆きの迷宮15

 地下62階層から69階層までは大気中を泳ぎ回る魚に囲まれた迷路のような作りだった。

 各階層には小部屋が設えられており、ドリルヘッドシイラをはじめ、歯がサーベルのように長く尖った鮫科の魔魚、サーベルシャーク。額からノコギリの刃が生えたノコギリサーモン。鼻先に爆薬を仕込んだかのような爆発を起こす魚雷ツナ。なぜか手足の生えたマッチョクラゲなどなど、多種多様な魔魚が襲い来た。

 特にヒレに小さな刃が無数についており、微細動して全てを切り裂くというチェンソーエイはヤバかった。

 突進してきたところを紫鬼が止めに入ったのだが、その際にヒレで胸元をザックリ斬られて緑鳥に聖術を受けて直していた。

 最後は金獅子が力技で半身に斬り倒したのだが、死んだ後もヒレの微細動が止まらず、解体にも時間がかかった。


 と言うことで61階層から69階層までで9体の巨大な魔魚を仕留めてきた俺達は、地下70階層を前に休憩を取ることにした。

 夕飯は狩った魔魚をフライにする。

 俺は調理用具を影収納から取りだすと、鍋に油を注ぎ魔道コンロにかけた。

 魔魚の身はすでに切り分けられているので、塩を振って置いておく。

 ボウルに卵を割り、混ぜてから薄力粉、水を加える。

 切り身にコショウを振って卵に潜らせてからパン粉をまぶす。

 油が高温になったことを確かめてからパン粉を付けた切り身を投入し、きつね色になるまで揚げる。

 1人3枚で、8人だから24枚揚げてみた。


 ハンマーヘッドシイラの身は普通の白身魚と同じ様だったがドリルヘッドシイラはどうだろうか?

 皿に盛り付けて皆で実食。

「うむ。この身は何というか歯応えが違うな。」

「弾力がある感じだな。」

「んー。ちょと噛み切るのが大変。」

 金獅子、銀狼、紺馬が言ってくる。

「そうか?ワシはこのぐらいの噛み応えがあるのも嫌いじゃないぞ。」

「うむ。筋肉質なのか?噛めば噛むほど味が出るぞ。」

「確かに咀嚼するほどに味が広がっていきますね。」

「私もこれ、嫌いじゃないですよ。」

 紫鬼、蒼龍、緑鳥、白狐には好評だ。

 どれどれ。俺も食べてみるか。

 うん。ホロホロ崩れると言うかしっかり噛み切る必要はあるが、弾力もゴムを噛むようではなく肉を噛む感覚に近いかもな。そうだな。魚と言うよりは肉を食べてる感覚に近い。

「魚ってか肉に近いな?」

「おぉ!確かに。」

「ジャイアントボアがこんな歯応えだったな。」

「肉のフライだと思えばこれはこれで美味しいかもな。」

 金獅子、銀狼、紺馬もそう考えれば美味いかもとの事。

 まぁ初めて食べる魔魚にしては上々な意見じゃないか?


 通路には様々な魚が泳いでいる為、一応見張り役は2人にして就寝する。

 6日目にして70階層手前。まあまあな速度じゃないか?

 迷宮到着までに3日間かかっているが、帰りはワイバーンもゴブリンも出てこないだろうから当初予定の2日間で帰れるだろう。

 迷宮内も中ボスやら小ボスは倒しているので半分くらいで外に出られるかな。となるとあと4日間くらいは先に進める。1日10階層のペースで降りているので、最下層の地下100階層には十分間に合うだろう。

 さて、俺もそろそろ眠っておこう。


 明けて翌日。地下70階層へと降りていった俺達は早速扉に閉ざされた部屋の前にいる。

 階段を降りたらすぐに扉があったので、今までのように小ボスが出てくる部屋だろう。

「準備はいいな?扉を開けるぞ?」

 金獅子が言うのに合わせて皆で頷く。

 金獅子が先頭で扉を開けると中は今までのように50m四方はある部屋になっており、壁際5mほどは水で満たされている。

 上階でタコ型クラーケンが出てきた時と全く同じ作りだ。

 特に室内に敵影はない。となれば水中から現れるのだろう。

 俺達が部屋の中央にまで歩みを進めた時、右手の水辺が盛り上がり、イカ型の魔物が姿を現した。

「こいつはイカ型のクラーケンですね。」

「普通のイカの魔魚との違いがあるのか?」

「色が違うじゃないですか?イカの魔魚は白っぽいけど、クラーケンは白乳色です。」

 よくわからん。だが白狐からしてみれば明らかに色が違うらしい。

「クラーケンって事は再生持ちだよな?オレが王化して足を凍らせていくぞ。王化、牙王!」

 銀狼が王化してクラーケンへと突っ込んでいく。

 クラーケンは8本の足と2本の触腕で銀狼を迎え撃つ。

「氷結双狼刃!」

 迫り来る足を双剣で切り裂き、切断面を凍らせていく銀狼。

「俺様達も王化して挑むぞ!王化、獣王!」

 金獅子も王化してクラーケンへと向かう。

 それに続いて白狐、蒼龍、紫鬼、紺馬も王化する。

 再生を阻害しているとは言え、相手は上位の魔物である。王化した方が無難だろう。

 遅れて俺も王化する。

「でりゃぁぁぁぁあ!」

 金獅子が大剣を振りあげてクラーケンへと跳躍する。

「飛剣!」

 白狐が飛ぶ斬撃を放ち、襲い来る足を切り落とす。が、やはり再生持ちで斬られたそばから足が生えてくる。

「氷結双狼刃!」

 銀狼が次々と足を切り落とす。

「おりゃぁぁぁぁあ!」

 紫鬼なんかは巻き付いてきた足を引き千切っている。

「龍覇連突!」

 蒼龍が三叉の槍でクラーケンの頭を穿つ。

「火炎矢!」

 紺馬の放った矢がクラーケンの左眼に的中。身悶えるクラーケン。

 水中に逃げようとするクラーケンを追って俺も水中に潜る。

 すでに足の半分は中程から斬られて氷漬けにされている。

 弱っている今が追撃のチャンスだ。

 俺は残った右眼の辺りを狙ってナイフを突きを入れる。

「キュイィィィィイ!」

 耳障りな高音を発したクラーケン。その口から猛烈な水流を放つ。これはウォーターカッターだな。俺は黒刃・右月と黒刃・左月を交差させてこれを防ぐ。その間に金獅子らも水中に潜り追撃を始めた。


 戦闘時間は15分程度であろうか。最後にはクラーケンの死骸が水中に浮くことになった。

 こいつも貴重な食料だ。切り分けて影収納に仕舞いこむ。

 もちろん銀狼が切り取って氷漬けにした足も忘れずに仕舞う。

「ここもお宝はなしですか。しぶちんですね。」

 白狐は不満そうに言う。

「まぁもうちょっと降りてみようぜ。何か出てくるかもしれないし、期待せずに待とうや。」

「ですね。過度な期待せずに期待しておきます。」


 部屋を出たらすぐさま下階への階段があった。

 よし、先に進もう。


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