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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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522/546

521話 嘆きの迷宮13

 明けて翌日、6日目。

 地下56階層から下もそれまでと同じで小部屋が並び、全てに天井からの水が放流されて水で満載になった小部屋内でのマーメイド、マーマンとの戦いが待っていた。

 変わったのは1度に出てくる魔物の数が増えた事くらいか。

 今は地下59階層。出てくる魔物の数は10体を超えた。

 マーメイド、マーマンにとって水中はベストな環境下であり、魔族領で戦った者よりも動きが素早く力も強いように感じる。やはり迷宮の力とやらで強化されているのかもしれないな。

 だが流石にこうも水中戦が続けば俺達も慣れてきた。

 大振りの攻撃は水の抵抗を受けやすい為、動きは最小に、斬りつけるよりも突く方針でマーメイド、マーマンと対峙する。

 しかし、案の定紺馬などは水中で弓矢を扱うには厳しく、鳥打ちの刃で応戦している。紫鬼も打撃は水中戦ではかなり厳しく、組技を多用してマーマンを締め上げている。


 そんなこんなありながら地下60階層に到着。

 この階層にはボス部屋のように50m四方の大部屋が1つ。

 扉を開けて全員で中に入ると勝手に扉がしまるのもいつも通りだ。

 ただ、いつもと異なるのは部屋の中央10mにしか床がない事だ。左右に20mずつ水辺がある。ここは水中から敵が襲ってくるパターンだな。

 そう考えていると案の定、入口から見て左側の水辺からタコ型の魔物が現れた。

「また魔魚か?」

「いえ。体表の色が普通の赤よりも暗い赤です。こいつはタコ型のクラーケンですね。」

「クラーケン?それなら再生持ちだろう。銀狼。王化して足を氷結させてくれ。」

 金獅子が呟くと白狐がそれを否定し、敵がクラーケンだと断定した。

 銀狼も金獅子に言われるがままに王化して敵の動きを待つ。


 まるで銀狼が王化するのを待っていたかのように、そこからタコ型クラーケンの8本の足が床を這いながら近付いてきた。

「オレが切り飛ばして凍らせる。みんなは足を避けつつ本体の頭を狙ってくれ。」

 銀狼は言うなり1人飛び出して次々とタコ足を切り飛ばしていく。

「氷結双狼刃!」

 半ばから斬られたタコ足は切り口を凍らされて再生出来ずにいる。

 魔族領で戦った経験が活きているな。

 俺はナイフを両手に持って銀狼が言う通りタコ足を避けつつ本体の頭を目掛けて跳躍。左右のナイフを深々とその頭頂部に突き刺す。

 だがナイフの刃の長さだと脳にまで達する事がないようで、ブニブニした感触しか手元に伝わってこない。

 俺はタコの頭を足場に床へと跳躍して戻ると金獅子に向かって言う。

「あのクラーケンの頭は分厚い肉に覆われているようだ。脳まで破壊するなら金獅子の大剣を突き刺すのが1番だろう。」

「うむ。わかった。俺様に任せろ。」

 金獅子は言うなりタコの頭に跳躍して大剣を突き立てる。根元まで刺さった大剣を無理矢理縦に切り裂く。

 それまで水中にあったタコの顔が水上に出てきた。

「ブルシュアァァァァア!」

 一声鳴いたかと思えば8本脚の付け根をこちらに向けてきた。あ、やべっ。

 ブシャッ!

 避ける間もなくタコ墨が噴出された。俺は頭からタコ墨を被った。巨大なクラーケンだけあって吐き出す墨の量も多い。全身墨だかけである。

 まぁイカ墨と違ってサラサラしているのでベタつかないのがまだ救いかな。

 見やれば俺の隣にいた紫鬼にもタコ墨が掛かっている。ちょうど身体の左側半分が真っ黒だ。

 そんなタコ墨を吐いたタコ型クラーケンは金獅子の攻撃がトドメとなったらしく、頭を下に、半分以上の足を氷付けにされた状態で水中に浮かんでいる。

 こいつも食べられたはずだ。俺はタコを床に引き揚げると影収納に収まるサイズに切り分けて仕舞っていく。

 その間に紫鬼はクラーケンが出た方と反対の水辺に浸かりタコ墨を落としていた。

 タコの収納が終わったら俺も水浴びだな。


 地下60階層はこの大部屋しかなく、タコ型クラーケンを倒したところで出口側の扉が勝手に開いた。その先には下階に続く階段がある。

 濡れた俺と紫鬼の服を乾かしつつ、昼飯にした。

 そろそろみんな魚介類に飽きた頃だろう。と言うことで取り出したのは鶏の唐揚げと米。鶏の唐揚げは迷宮に潜る前に地上で調理して影収納に仕舞いこんでいたものだ。

 揚げたてを仕舞ったので、取り出した唐揚げはまだ湯気が立っている。


 ホント影収納って便利だな。収納しちまえば時間経過も止まるから熱い物は熱いまま、冷たいものは冷たいままに持ち運びが出来る。

 なにより作り置きしておけばこうして迷宮内でもきちんとした食事が出来るのがありがたいな。

 普通のダンジョンシーカーなら携行食を食べるかその場で簡単に調理する必要があるだろうが、俺達は影収納から取りだせば良いだけなので飯の準備も簡単だ。

 そう言えば他の迷宮では別に潜っていたダンジョンシーカーに出会ったが、今回は特に誰とも出会っていない。

 そんな事を思っていると

「クロの料理はホントにありがたいのぅ。」

「あぁ。黒猫がいなかったら迷宮攻略が倍以上辛いものになっていただろうな。」

「夜王の料理は下手な地上の料理屋よりも美味いしな。」

 と紫鬼、蒼龍に紺馬が言い出した。

「食事は大事だからな。黒猫の料理に救われている部分は確かに大きい。」

「俺様も王城で食べるよりも美味いものが食えて満足だぞ。」

 銀狼に金獅子賞も言い出した。

 これには

「ふふふんっ。クロさんの料理の腕は並の料理人以上ですからね。 

 」

 となぜか白狐が自慢げに言い返す。

「本当に美味しいですよ。久しぶりの魚介類以外もいいものですね。黒猫様。」

 緑鳥からも言われて悪い気はしない。

 そんなこんなで昼食を終えた俺達は地下61階層へと向かったのだった。


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