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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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517話 嘆きの迷宮9

 地下40階層からは水が腰辺りまでに増水しており、また水棲生物との遭遇戦になった。

 全長10mほどにもなる電気ナマズや、5mほどの噛みつき亀、3mにもなるピラニアなど、魔物認定はされていないが、襲われたら一般人など命を持って行かれるレベルの水棲生物が多種存在していた。

 地下45階層では巨大なイカ型のクラーケンではない魔魚、イカを魚と言っていいかは置いといて、が出てきてまたイカ足が再生するのではないかと銀狼が王化して氷結双狼刃で足を切り落としていったが、やはりこいつも上階の巨大タコのように再生持ちではなかった。

 そんなこんなあって現在は地下50階層へと続く階段前で休憩だ。


 夕飯は大量に仕入れた蟹やら海老やらタコやらイカやらをそのまま茹でて、盛大な海鮮パーティーにした。

 ピラニアやナマズなども新鮮なため、刺身にした。

 やっぱり蟹を食うときには皆一様に黙りこくった。なんだろな、あの瞬間って。皆して蟹の身を殻から外すのに一生懸命になって無言になる。一応、殻から外しやすいように茹でた蟹の足には切り口を入れたりと工夫したのだが、それでも無言になるタイミングがそれねりの頻度であった。

「やっぱり蟹を食うときは無言になるよな。」

 銀狼も同じことを考えていたようで、食後に皆に向かって言っていた。

「塩茹でしただけで十分、美味いんだがな。身を殻から外すのに手こずるよな。」

 金獅子が返す。

「私は蟹よりも海老の方が好きですね。あのプリップリな身の弾力といい、口の中に広がる塩味の効いた味といい、幸せの体現のような食材ですね。」

「ピラニアの刺身も結構いけるぞ。淡白な味でどれだけでも食べられる。」

 白狐と紺馬は蟹よりも海老やらを刺身やらがお気に召したようだ。


 4日目となる今日はここで休息をとることにした。

 4日かけて半分。なかなかのペースになってきたか。

 明日は半分の50階層。今までの迷宮で考えれば中ボスも呼べる魔物が出てきていた階層である。

 ここは万全の態勢で挑みたい。

 階段付近ということで見張り番は交代制で1人だけ立てて他は眠りについた。

 腹が膨れていた事もあり、これまでの迷宮踏破の疲れもあり、この日はぐっすりと眠れたのだった。


「では良いか?中ボス部屋に降りるぞ?」

 金獅子が周りを見渡しながら言う。

「あぁ。流石に今日で5日目だからな。帰りのことも考えると今日中には60階層には到着してないと不味いからな。」

 俺が返す。

「皆もよく眠れて体調は万全ですもんね?何が出ようと大丈夫でしょう。」

 とは白狐の言。

「うむ。では参ろうか。」

 金獅子は言うと下層への階段を降りていった。

 降りた先には巨大な扉が設えられていた。ボス部屋って感じだな。

 全員が階段を降りた事を確認してから金獅子が扉を開けた。

 部屋の中は100m四方の正方形。やはり壁際1mほどを水が流れている。

 そんな部屋の中央に立つのは小柄な人型の魔物。それを見た白狐が声を上げる。

「河童じゃないですか!絶滅したと聞いていましたが、迷宮には残ってましたか。」

「河童?」

 思わず聞き返す。

「えぇ。河童は水棲の妖怪で我々同様に妖気を持つ妖魔です。確か力自慢で相撲が得意だとか。その他にも妖気を使って水系の妖術を使ってくるはずです。」

 力自慢?部屋の中央に立つ姿は体長1m50cmにも満たない小柄な人影である。

「あの体型で力自慢か?」

「えぇ。見た目に騙されないようにして下さいね。」

 白狐が全員に注意を促す。

 目をこらせば顔には嘴、頭はざんばら髪に頭頂部はハゲているのか皿のようになっている。さらに背中には亀のような甲羅を背負っている様子。

 ただ、ある程度近付かないと反応しないのか、俺達が部屋に入っても近寄ってくる様子は無い。


「とにかく近付くか。あちらさんも様子を窺っているようだしな。」

 そう言うと金獅子が広場の中央に向けて足を踏み出す。

 何があるかわからないので、緑鳥と護衛代わりに紺馬をその場に残し、俺達もそれに続く。

 白狐が河童だと言う、魔物まであと5mと迫った時、河童が急に喋り出した。

「おっす。オラ河童の河太郎。いっちょオラと相撲すっか?」

 魔物とは思えないほど流暢に喋り出した。

「相撲、か。また一対一の勝負をしようと言うのか。」

 金獅子が問うと

「ん?オラ強ぇから何人でかかってきてもいいぞ?全員一気にでも構わねぇよ。」

 ちゃんと会話が成り立っている。

「そうか。全員相撲か。それなら紺馬と緑鳥以外のメンツで対戦しようではないか。」

 金獅子が構えていた大剣を背中に戻す。

 相撲だからな。そりゃ素手か。金獅子に続いた銀狼も抜剣した双剣を鞘に戻すので、俺も習ってナイフを仕舞った。

「よし!準備はいいか?んじゃあ、はっけよーい。のこった。水球爆弾!」

 掛け声と共に河童の河太郎が手から水球を放ってくる。

 水球は先頭にいた金獅子にあたると

 バチンッ

 と大きな音を立てて炸裂する。あまりの衝撃に金獅子は弾き飛ばされ扉前に待機していた紺馬達の方まで吹き飛ばされた。

「おい!ちょっと待て。相撲じゃろうが?」

「ん?河童の相撲は何でもありだぞ?勝った方が強い。それだけだ。ほれ、水球爆弾!」

 紫鬼が抗議の声をあげるが気にした様子も無く河童の河太郎はまたしても水球を投げ付けてくる。

 咄嗟に身を引いた紫鬼と蒼龍の手前で水球は地面に落ち、

 バチンッ

 と音を鳴らして炸裂する。

「なんでもありかよ。」

 銀狼が言うと仕舞った双剣を再び抜剣する。

 それに続けて背中に背負った三叉の槍を取り出して構える蒼龍。

 白狐は最初から抜剣状態を維持していた為、俺も慌ててナイフを取り出す。


 こうして河童の河太郎との『相撲』勝負が始まったのだった。


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