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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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513話 嘆きの迷宮5

 地下26階層から29階層はそれまで通りサハギンとリザードマンが群れとなって襲いかかってくるだけで、1度に襲い来る数が増えた程度でそこまで脅威と呼べるものはなかった。

 25階層であったような大掛かりな仕掛けもない。

「宝箱も見つからないですね。」

 寂しそうに白狐が言うが確かに何もない。

 もしかしたら隠し通路でもあるんじゃなかろうかとそれっぽい壁を叩いてみても反応はない。

 俺達はさっさと下階への階段を見つけると下の階層へと降りるのであった。


 30階層ではやたらにサハギンが出てきた。通常種からソルジャー、ジェネラルなど様々な陣形で俺達に迫ってきた。

 とは言え苦戦するでもなく先に進むと、広めの空間に出た。

 横幅、奥行きともに50mはあるだろうか。

 壁際には幅1mほどの溝が掘られており、何処からか水が流れては何処かへと流れ去っていく。

 そんな広場に堂々たる姿勢で直立していたのは黄金の全身鎧を着込んだサハギンだった。

「あれは、サハギンキングか?」

 銀狼が言う。

「サハギンキング?」

 ソルジャーやジェネラルの存在すら知らなかった俺は思わず聞き返す。

「あぁ。キング種だ。通常のサハギンは体調2mほどだが、キングは3~4mほどと身体もデカい。サハギンの集落でも稀にしか発生しない最上位種だな。」

 ゴブリンキングにオークキング、キングリザードマンやらと魔物にも王がいることがちょっと不思議な感じがする。

 っと思考が逸れた。まずは目の前のサハギンキングとやらを倒さなくちゃな。

 そう思っているとサハギンキングは俺達を見回し、蒼龍に目を留めると5mはありそうな二叉の槍の先端で蒼龍を指し、空いた左手でコイコイと手招きする仕草を見せた。

「面白い。同じ槍使いとして我をご指名か。」

「おい、蒼龍。別に相手の言う通りにしなくても。」

「いや、あいつからは同じ武人の風格を感じる。答えてやらねばあいつも気が済まんだろう。」

 銀狼の制止を振り切り、蒼龍が1人前に出る。

 それを見たサハギンキングは満足げに頷くと両手で二叉の槍を構える。

 蒼龍は相手の攻撃が届かないギリギリの場所に立ち、三叉の槍を構えた。

 互いに右腕を攻防に、左腕を前方にして槍を構える。

 固唾を飲んで見守る俺達を前に、槍同士の壮絶なやり合いが始まった。


 最初に仕掛けたのはサハギンキング。構えたままの姿勢から槍を引かずに突きを放つ。

 あくまで牽制の為の一突きであり、本気の攻撃ではない事がわかる。

 そんな一撃を受けるでも無く1歩斜め前に出る事で避けた蒼龍。それにより蒼龍の射程範囲にサハギンキングが入った。

 空かさず三叉の槍で突きを放つ蒼龍。しかし、様子見で突き出した二叉の槍を素早く戻したサハギンキングは、これを受け流す。かと思えば間髪入れずに槍の石突きで蒼龍に殴り掛かる。

 前方の左手を槍から離し、上体を反らしてこれを避けた蒼龍。受け流された三叉の槍を右手1本で振るいサハギンキングの胴体を薙ぐ。

 しかしこれを読んでいたかのように二叉の槍を縦にして受け止めたサハギンキング。くるりと槍を回して三叉の槍を上方にかちあげると、上向いた槍の先端で斬りかかる。

 半身になってこれを避けた蒼龍は、お返しとばかりに上方にかちあげられた三叉の槍を振り下ろす。

 頭上を狙った一撃だったが、サハギンキングは首を傾けることで左肩で受けた。肩に付けた鎧が大きく凹む。

 この一撃で腕が痺れたのか、サハギンキングは右腕1本で槍を横薙ぎに振るい大きく距離を取った。

 左腕を振り痺れを確かめているようだ。

 2、3度腕を振るい状態を確かめると、再び両腕で二叉の槍を構える。そこに蒼龍が突きを放つ。1本前に出る事で右腕を後方にずらしてからの一突きは空気を切り裂くようにビュンッと風切り音を立ててサハギンキングへと迫る。

 これに対してサハギンキングは自身の二叉の槍を突き出し、円を描くように先端を回すと蒼龍の三叉の槍を絡め捕った。

 両者の槍が絡み合い、互いに押し込み合う。力は拮抗していたようで槍は上方に振り上げられた。

 サハギンキングはそのまま上方から二叉の槍を振り下ろす。蒼龍は手元に槍を戻す。

 両手で握り直した三叉の槍を掲げてサハギンキングの振り下ろしを受け止めた蒼龍。

 三叉の槍の先端で二叉の槍を下方に弾くと下から突き上げるような突きを放つ。

 二叉の槍を下方に弾かれた事で体勢を崩したサハギンキング。その脇腹目掛けて三叉の槍が迫る。

 ガシュッと音がしたかと思えば蒼龍の三叉の槍が黄金色に輝くサハギンキングの鎧を突き破り腹部を突き刺していた。

 しかし、これを気にした様子もなくサハギンキングは下方に弾かれた二叉の槍を跳ね上げて右下から斬撃を放つ。

 槍を持つ右手を離して半身になってこれを避ける蒼龍。半身になる際の身体の振りを利用して腹部に突き刺した三叉の槍を振り抜く。

 これには堪らず片膝をついたサハギンキング。5m近い巨体が膝をついたことで顔が蒼龍の顔の高さと同じになる。

 暫く見つめ合う2者。

 微かにサハギンキングが頷いたように見えた。次の瞬間、蒼龍により三叉の槍での高速突きがサハギンキングの首元に滑り込み、その首を落としたのだった。


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