表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

512/546

511話 嘆きの迷宮3

地下15階層は他の部屋も同じように入ると勝手に扉が閉まり、天井から水が溢れてくると言うお決まりのパターンだった。

 天井付近まで水が溜まると天井部分が開き魔魚が放たれる。

 魔魚も様々で見覚えのあるハンマーヘッドシイラ以外にも、鼻先がノコギリのようになっているサメ、広げたヒレが刃物のように薄く尖っているエイ、身体がそのまま刃物になっている太刀魚などなど、知らない魔魚も沢山出てきた。


 そのいずれもが王化した俺達の敵ではなく、水中での戦闘に慣れないうちは戸惑いもしたが、慣れるにつれて簡単に撃退出来るようになっていった。

 だがやはり水中が苦手だと言っていただけあって、金獅子はまだまだ慣れないようだ。水中にあっては手足をバタつかせて見るからに溺れている人そのものだ。

 大剣の重みもあってか、水面に浮上する事も無く、水底をバタバタと暴れまくる。

 部屋に溜まった水が床から抜けていき、水から上がってきて一言。

「俺様もそろそろ水の中に慣れたな。次は俺様も魔魚の相手をするぞ。」

「いやいや、どこが慣れたんだよ。」

「金獅子さんはそこまで水中にいるんだって意識しない方がいいんじゃないですかね?息も出来るわけだし、大剣の重みで浮くこともないんだから普段通りにしていればいいと思いますよ?」

 俺がツッコむと白狐が助言を与える。

「まぁ人には向き不向きがあるからな。兄貴は水中では大人しくしておいてくれればオレ達がなんとかするよ。」

 銀狼が優しく声をかける。

「むぅ。慣れてきたとは思うんだがな。まだダメか。」

「これから先の階層ボスでも水中戦の可能性もあるからな。金獅子は水中に慣れることだけを考えておけば良いだろう。」

「ワタシも水中では矢が射られないからな。ともに水中戦に慣れるようにしようじゃないか。」

「うむ。皆がそう言うならもう少し水中に慣れてからにするか。」

 そんなやり取りをしつつ、さらに階層を下って行く。


 地下16階層から19階層もだいたいの造りは地下15階層と同じだった。

 ただ1度に出てくる魔魚の数が増えた程度。

 すでに水中戦にも慣れ、王化した俺達の相手ではなかった。

 途中で1泊して、そして辿りついた地下20階層。

 こちらも地下19階層から下って早々に扉が設えられていた。ただ、今までの部屋の扉よりも大きい扉が、今までとの違いを表している。中ボス部屋って感じか。

 2日目にして地下20階層となると、まぁ他の迷宮と同じくらいの進行速度であろうか。

「うむ。水中戦にも慣れてきたからな。今度こそ俺様の出番だな。」

 相変わらず水中に慣れた様子のない金獅子が言っている。どこからくるんだその自信は?

「中ボス部屋っぽいな。今までとは扉の重厚さが違う。」

 とは銀狼の言葉。皆それに頷く。

「まぁいつまでも眺めていても仕方あるまいて。さっさと扉を開けて中に入ろうぞ。」

 紫鬼が扉に手をかける。

「む?重いな。せいっと。」

 奥開きの扉を開く紫鬼。

 その先では50mはありそうな巨大な空間があり、壁に沿って数メートルの幅の足場があるが、中央付近は大きく凹み水が張られている。深さはどんなものか上から見ただけではわからない。

 ここも他の部屋と同じく、全員が部屋に入ると勝手に扉が閉まった。

 敵を倒すまでは出られないような造りだ。

 さて、今までとは違って天井から水が溢れる事はなさそうだ。すでに中央のプールの中に敵が潜んでいるのだろう。

 通常ならは部屋の壁際にある数メートルの足場を使って敵と対峙するのだろうが、俺達には王化がある。

 やはり水中で息が出来るのは大きなアドバンテージだ。

「敵は水の中か。ねら王化して一気に攻めようか。」

「そうだな。地上から攻撃するよりは早く片付くだろう。」

「ワタシは地上から矢を射るよ。」

「そうだな。紺馬はそうしてくれ。」

 銀狼と蒼龍が話を進める。

 と、そうこうしているうちに中央のプールから巨大なイカの足が出てきた。

「クラーケンか?!」

「いえ、足が赤いです。こいつはイカじゃなくてタコですね。」

「タコ型のクラーケンか?」

「いえ、ただのデカいタコでしょう。こんな低層にクラーケンなんて出て堪るもんですか。」

 金獅子の疑問に白狐が答える。確かに足が赤い。タコのようだ。

「再生持ちかもしれない。まずはオレが足を斬り凍らせる。王化!牙王!」

 銀狼が言うなり王化してタコ足に斬りかかる。

「氷結双狼刃!」

 プールから飛び出たタコ足は見事に斬られて宙を舞い、切り口は氷結してしまう。

「王化、龍王!我は水中から攻める。」

 言うなり蒼龍はプールに飛び込む。

「私も水中で。王化!破王!」

 続けて白狐も王化してプールに飛び込む。

 水面から飛び出した足は銀狼と金獅子、紫鬼に紺馬と俺が対応し、水中でからは蒼龍と白狐が攻める形になった。

「どりゃ!」

 金獅子がタコ足に斬りかかる。

 先端を斬られたタコ足だが、再生する様子は無い。

「こいつ、再生持ちじゃなさそうだぞ。」

「なら氷結は不要か。双狼刃!」

「雷鳴剣!」

 銀狼と金獅子がタコ足を切り刻む。

「ふんぬっ!」

 掴みかかったタコ足を力任せに引き千切る紫鬼。

 紺馬は緑鳥の前に出て、迫り来る足に向けて矢を射る。

 そこに俺も突入してタコ足を切り刻む。

 タコ足が8本、切り刻まれて地上に打ち上げられている。

 水中では墨でも吐かれたのか真っ黒な水の中で蒼龍と白狐が戦っている。


 程なくして、三叉の槍に巨大なタコの頭を突き刺した蒼龍がプールから上がってきた。

「クラーケンよりは弱かったな。」

「えぇ。再生持ちじゃなかったのが大きいですね。」

 水に入った2人が言い合っている。

 なにんせよ、大きなタコが手に入った。刺身もいいがおでんの具にしてもいいな。魚は沢山仕入れたからつみれも作れる。大根もあるし、おでんにしよう。

 俺は早速調理器具を取り出しておでんの準備を始めた。

 影収納の中に仕舞っては時の流れが止まるから味を染み込ませる事は出来ない。となると2時間は煮込みたい。

 と言うことでこの部屋で休むことにした。

 輪切りにした大根とぶつ切りにして串に刺したタコ足を煮汁にぶっ込む。獲った小魚を包丁で叩いてつみれを作る。


 2時間後、それはまぁ美味しいおでんが出来上がりましたとさ。

 20階層にはまだ他にも部屋がありそうだ。就寝は他の部屋も攻略してからだな。

 腹ごしらえして準備は万端。さて、次は何が出てくるかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ