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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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510話 嘆きの迷宮2

 その後地下13階、14回ともに膝下のまでの水溜まりの中を進み、出てくる魔物もリザードマンにサハギン程度。ピアニアなどの魚も体長50cm程と大きくはなっていたものの、金獅子の電撃のおかけでスムーズに進めていた。


 が、地下15階層に足を踏み入れてこれまでの階層との違いに多少戸惑っている。

 というのも、今まではただの迷路のような造りだったのに対して、地下15階層に降り立ったそばから重厚な扉が設えてあるのだ。

 まるでボス部屋のようなふんいきだが、まだ15階層。中ボスも出るには早いだろう。

「いつまでも扉を見つめていてもらちがあかないだろ。開けて進もうぜ。」

 銀狼が言うと白狐も続く。

「ですね。ひとまず扉を開かない事には先に進めませんし。」

 これに待ったをかけるのは金獅子。

「ちょっと待て。これまでとは事なり部屋になっているのだろう?となると水攻めがあるぞ。絶対にだ。確実に水攻めがくるぞ。」

「そんなの入ってみないとわからないだろうに。それに黒猫が言うとおり王化すれば水中でも息が出来ることは確認したんだ。立ち止まる必要はないだろ?」

 銀狼が金獅子に向かって言うも金獅子は首を縦に振らない。

「水攻めだぞ?全身が水中に沈んでは俺様の電撃も使えん。皆感電してしまうからな。」

「五月蠅い。金獅子は待っていればいい。ワタシ達で片付ける。」

 金獅子が尚も言い募ろうとしたところで、紺馬が1人扉を開いてしまった。

 紺馬に続いて蒼龍も扉を潜って行く。

「ちょっ!待っ!俺様の心の準備が!」

「諦めろよ兄貴。さぁ行こうぜ。」

「むぅ。仕方が無い。行くか。よし、行くか!」

 気合を入れるように言うと金獅子も銀狼とともに扉を潜って行く。

「案外金獅子さんも臆病ですね。」

「まぁ、誰にでも弱点はあると言う事じゃろ。ワシもカエルだけは苦手でな。ジャイアントトードなんかは見る度に鳥肌が立つわ。」

「そうだったんですね。私はニワトリが苦手です。ドコ見てるか分からないあの顔が気持ち悪くて。」

「そうなのか?カエルもニワトリも美味いのにな。」

「クロさんに掛かればなんでも食材になってしまいますね。」

「いや、俺でも食べる虫と食べない虫はあるぞ。」

「ささ、3人とも。先に行ってしまわれましたよ。ワタシ達も急ぎましょう。」

 くだらない事を話していたら緑鳥に急かされた。

 俺達も扉を潜って部屋に入る。


 部屋の中は25m程となかなかの広さがある。なぜ分かるかって壁に5mずつのラインが引かれているのだ。それ以外は何の変哲もないただ広い部屋。

 いや、天井部分に穴が複数空いているな。

 そこまで確認したところで最後に這入ってきた緑鳥が扉を潜ると同時に勝手に扉が閉まる。

 そして鳴り響くドドドッと言う音。

 次の瞬間には天井部分に空いた穴から盛大に水が溢れ出した。

「ほらな!言った通り水攻めだ!」

 金獅子が勝ち誇ったように言う。

「どこまで水位が上がるかが問題だな。それに水攻めだけで終わるとは思えん。敵が出てくる可能性も考慮して備えよう。」

 冷静に蒼龍が言う。

 その間にも水位は上がり腰まで水に浸かる。


 まだ水は止まらない。このままでは胸まで水に浸かる。

 そうなると履いているゴム長にも水が入る。そうなると逆に動きにくくなるかもしれない。

「ゴム長を脱ぐんだ。水が入り込んだら動きにくくなる。すぐに胸まで上がってくるぞ。急いで脱ぐんだ。」

 俺は皆に言う。

 すでにゴム長の胸部分から水が入り込んで来ている。本格的に水に頭まで浸かりそうだ。

「王化して備えよう。王化!牙王!」

 銀狼が王化する。それに続いて皆で王化して行く。

 水位はどんどん上がり遂に頭まで水に浸った。


 防水は天井部分ギリギリのところで止まった。あの僅かな空間で息継ぎしろって事か?まぁ俺達は王化して息が出来るようになっているから気にならないが、普通のダンジョンシーカーだったら相当苦しい状況だろう。

 とか思っていたら不意に天井が割れて巨大な魚が放逐された。

 こいつは知っているぞ。ハンマーヘッドシイラだ。

 体長は5mほど。25mのプールとなった部屋の中を自在に泳ぎ回るハンマーヘッドシイラ。


 壁際まで泳いで行ったかと思いきやいきなり方向転換してその強靱なハンマーの如きコブのある額で紫鬼へと突進してきた。

 思いっきり右腕を後方に引いてから渾身の拳をハンマーヘッドシイラの額にお見舞いする紫鬼。だが水中では上手く力が入らなかったのだろう。拳は弾かれ、そのまま突進を受けることになった。

 ハンマーヘッドシイラは止まらず紫鬼を壁まで押しやると自身の額と壁で紫鬼を押し潰す。

 ゴボッと紫鬼が空気を吐き出し、気泡が上がる。相当な衝撃だったのだろう。だが紫鬼はそこから盛り返しを見せた。

 グググッと聞こえてきそうな万力でハンマーヘッドシイラを押し返すとその強靱なコブ目掛けて猛ラッシュを叩き込む。水中だと言う事を忘れるくらいの猛撃にハンマーヘッドシイラがどんどん後退していく。

 ゴギンッと水中にもかかわらずコブが割れる音が響いた。次の瞬間、ハンマーヘッドシイラは腹を上に水面に浮かんでいった。

 ハンマーヘッドシイラの討伐を確認したかのように床に空いた穴から排水が行われる。

 見る見る間に水は無くなり、後には絶命したハンマーヘッドシイラが横たわるのみ。

 うん。ちょうどいい。コイツを捌いてフライを作ろう。ちょうど時間的にも夕飯の時刻になる。

 俺はさっさとハンマーヘッドシイラを3枚に卸すと分厚く切り身にして揚げていく。

 白狐と緑鳥、それに紺馬も手伝ってくれたので調理はいつも以上にスムーズだった。


 揚げたての魚のフライと白飯で夕飯にする。

 捌きたての魚の切り身を使ったおかげが、普段よりも身がプリプリしている気がする。

「こんな美味い魚が食えるなら水攻めも悪くないな。」

 調子よく金獅子が言う。

「この階層はこんな部屋にばかりかもしれないし、王化はこまめに解いて必要時に時間切れにのらないように気を付けよう。」

 銀狼が皆に言う。


 夕食も終えて皆で休憩する事にした。

 またいつ水が溢れてくるかわからないので、見張り役で2人は起きて番をする。

 水の迷宮らしくなってきたな。

 さて、暫し休憩したら先に進む事にしよう。


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