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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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509話 嘆きの迷宮1

 階段はひたすら続き、結構深いところまで降りてきた感じがする。

 ただ階段の両脇には蝋燭の炎が焚かれており暗さは感じない。

 扉を潜り、階段を降り始めてから10分もするとようやく第1階層に到着した。

 他の迷宮同様に入り組んだ通路が連なり、1種の迷路のようになっている。

 壁や床は煉瓦のような石造りで、規則正しく並んだ煉瓦は真新しく感じられる。誰かが掃除でもしてんのかってくらいにピカピカだ。

 廊下の壁面にも蝋燭の炎が焚かれて視界は良好だ。

 マッピングはいつも通り緑鳥に任せて俺達は通路を進む事にした。

 並び順は銀狼、金獅子、白狐が先頭を歩き、その後ろに緑鳥と紺馬、最後尾に俺と紫鬼、蒼龍と言った陣形だ。


 最初のT字路を左に曲がると早速魔物に遭遇した。

 第1階層って事もあり、遭遇したのは3体のスライムだった。

 ほぼ水分で出来た不定形の身体をずるずると引きずりながら近付いてくる。

「これは、何の変哲も無いスライムですね。」

 ささっと白狐が白刃・白百合を振るいスライムの核を割る。

 核を割られたスライムは水溜まりとなって迷宮の地面に染み込んでいった。

「まだ1階層目だからな。そこまで強い魔物も出てこんだろう。」

 金獅子は言うとスタスタと先頭を歩く。


 その後もスライムには遭遇するものの、下階に降りる階段は見つけられず1時間余りが経過した。

 そこでマッピングを行っている緑鳥が言う。

「これだけ歩いても同じ箇所を1度も通っていません。この迷宮、かなりの広さがありそうですね。」

「広い迷路か。それはそれで攻略が難しそうだな。」

 緑鳥の言葉を受けて銀狼が呟く。

「まぁ地道に行くしかあるまいて。前衛が疲れたら交代するからな。ワシらも躰を動かさんと歩いとるだけだと退屈じゃて。」

 紫鬼が金獅子達に声をかける。

「と言ってもまだスライム程度では疲れもせんわ。暫く大人しく後ろをついてくるといい。」

 金獅子が紫鬼に向かって言った。


 そこからさらに1時間。

 出てくる魔物はスライムのみ。それもアシッドスライムなどの変異種ではなく、通常種のみ。

 そろそろ歩き疲れてきた頃に下階に降りる階段を発見した。

 俺達は早速地下2階に到達する。

 が、ここでも遭遇するのはスライムのみ。たまにジャイアントスライムの姿もあったが、所詮はデカいだけのスライム。白狐に核を斬られて水溜まりと化した。

 2階層目もかなりの広さがあり、2時間弱かけてようやく下階への階段を見つけた。


 そんな事を繰り返して、地下5階層目。

 ようやくスライム以外の魔物に遭遇した。サハギンだ。水棲の魔物のイメージだが、ここでは普通に行動できるらしい。

 手には二叉の槍を構えて襲い来る。

 とはいえ所詮Dランク程度の魔物では白狐達の相手にはならず、すぐさま斬り捨てられた。

 そうこうするうちに下階に続く階段を見つけ、地下6階層に降り立った。


 地下10階層まではスライムとサハギンしか遭遇しなかったが、10階層にはリザードマンが出てきた。

 湾曲した刀、シャムシールに丸楯を手にして襲いかかってくる。

 1度に遭遇する数も多く、5、6体で動き回っているようだ。

 時には背後から近付いてくるリザードマンもおり、紫鬼、蒼龍と共に対処した。

 とは言えCランク程度の魔物。俺達の相手にはならなかった。


 ここまでは普通の迷宮と変わらず、特に水が溢れたりもせず、水中で戦うような機会もなかった。

 だが、それも10階層まで。

 11階層目からは膝下くらいまでの水に浸かった状態で廊下を進むことになった。

 水があることでサハギンやリザードマンの動きにも変化が見られた。明らかに地上にいる時よりも移動速度が速くなっている。

 水に浸かった事で動きが悪くなった俺達とは対比するように動きがよくなった魔物達。

 しかしながら彼我の力量差が覆るほどではなく、難なく撃ち倒していく。


 地下12階層では膝下までの水の中を魚が泳ぎ始めた。

 ここで役に立ったのが影収納に仕舞いこんでいた水の浸食を防ぐ防水着である。ゴム製のブーツ兼用の長ズボンで、そのゴム部分が胸辺りまであるような恰好となるものだ。魔族領で使ったものだが、捨てずに残しておいてよかった。


 膝下の水辺を泳ぐ魚の中には肉食のピラニアなどもおり、時折噛まれては痛い思いをした。

「えぇい!こうも魚が多いと進みにくいな。電撃で一掃するぞ。」

 金獅子はそういうと王化して大剣を水面につけた。

「せーの、で跳びあがれよ。じゃないと感電するからな。では、せーの、雷鳴剣!」

 金獅子の合図に合わせて皆が水面から跳び上がる。

 それに続いて金獅子が放った電撃が水面を走る。

 するとピラニアやらの小魚が水面にぷかっと浮かんできた。

「ピラニアって食えるのかな?」

「さてな。小さいからあまり食う肉は無さそうだが。」

 俺の疑問に銀狼が答える。

「ピラニアも大きいものだと50cmほどの個体もいるそうですよ。それらはスープの出汁によく使われると聞いた事があります。小魚でも出汁を取る分にはいけるんじゃないですかね?」

 とは白狐の言葉。

 魚の出汁か、何かしらには使えそうだな。

「んじゃ浮いてきた魚は一通り捕まえてくれるか?後で何かしらに使おう。」

 俺が言うと皆で魚のつかみ取りが始まった。感電して仮死状態になっているだけなので、生き物を仕舞えない影収納には入れられない。だから影収納に仕舞えない魚はその場で腹を割いて内臓を洗い流してから影収納に仕舞いこんだ。


 そんな事を何度か繰り返すうちに一段高くなった場所に階段を発見した。

 水が入り込まないように一段高くなっているんだろう。

 事前に聞いていた水というキーワードに合った階層に突入したわけだが、次の階層はどうだろうか。

 一段高くなった場所で軽く食事を終えた俺達は地下13階層に向けて階段を降り始めたのだった。


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