表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

509/550

508話 ドワーフ王国21

左手での細剣の取り扱いを初めて3日後。なかなか様になってきた翠鷹。だが、やはり右手で振るうより速度は出ない。

 肘や手首が安定しない感じがする。だがこればっかりは反復練習しかないだろう。そもそも利き手に比べて筋力も少ないだろうし、筋トレも必要だ。

 義手に慣れるために右腕を使う訓練も必要だが、その合間に左手でも訓練をしようと心に決めた翠鷹。皆が迷宮から戻ってくるにはまだまだ時間がある。次の甲蟲人侵攻までも約1ヶ月ある。この3日間も朝から晩まで素振りを続けていたが、これから毎日続ければきっと普通に戦えるまでにはなるだろう。いや、するしかない。若い頃のように一日中剣を振り続けて、身体の衰えも感じてきたがやるしかないのだ。

「まだまだウチはやれる。」

 自分はまだ戦える。利き手を失おうとも戦えるのだ。そう強い気持ちをもって特訓してきた。

 あとは義手の出来具合だろう。茶牛には神速の突きを放てるような

 義手をとお願いしてある。

 今日は約束の3日目だ。

 僅かながらの不安を胸に抱いたまま、翠鷹は『鋼の四肢』へと向かったのだった。


「おぉ、翠鷹来たかぁ。」

『鋼の四肢』では茶牛がすでに義肢の整備を終えて待機していた。

「茶牛はん、もうウチの義手は出来ましたん?」

「あぁ出来たぞぉ。外れにくい仕組みってのが悩みどころだったんだけどなぁ。逆の発想で取れやすいし、着けやすいヤツを作っただぁよぉ。」

「取れやすく着けやすい?それやったら突きを放つ度に義手が外れてまうんやないの?」

「そうだなぁ。そこでこの強力なバネが付いた腕輪が役に立つんだぁ。」

「バネ付きの腕輪?」

「んだぁ。まだ無事に残ってる腕にこの腕輪をはめるんだぁ。で、この腕輪のバネを義手に装着する。すると外れやすい義手がバネの力で戻ってまた腕の接合部に填まるって寸法だぁ。」

「よくわかりまへんなぁ。取り敢えず1回着けてみても?」

「あぁ。着けてみてくれやぁ。まずは残った上腕に魔石を埋め込むところからだなぁ。」

「せやったなぁ。それがあったん忘れてたわ。お手柔らかに頼んますね。」

 茶牛はナイフを翠鷹の残った上腕に当てて切り口を作った。

「うぅ。やっぱり塞がった傷口を開くんは痛いなぁ。」

「ここからが本番だべぇ。」

 そう言うと茶牛は拳大の魔石を上腕の切り口に埋め込む。

「ぐぎぎぎぎっ!んあ!!」

 意識が飛びそうになる翠鷹。歯を食いしばりなんとか耐えた。


「うぅ。3回目でも慣れないなぁ。ものごっつ痛いわぁ。」

「足の時は気を失ってたからなぁ。少しは慣れたんだべぇ?」

「せやなぁ。どうにか踏みとどまった感じやわ。で、次は腕輪を着ければええんやな?」

「そうだぁ。義手の前にまずは腕輪を残った上腕に装着するんだぁ。」

 ベルトでしっかりと腕に填まるようになっている腕輪を残った上腕に装着した翠鷹。

 ベルトを締めるのに手こずった為、茶牛にも手伝って貰う。

「ふぅん。腕輪に3つバネが付いてるんやね。」

「んだぁ。それで義手を装着して、義手にも3つバネを留める金具があるから義手を着けた後にバネを留めるんだぁ。」

「こうやね。」

 翠鷹は装着した義手に3つのバネを留めていく。

「ふぅん。普通に動かす分には外れないんやね。」

「あぁ。急激な動作をした際に外れやすくなってるんだぁ。」

「どれ。試してみるわ。」

 翠鷹は右腕を素早く動かして突きの動作を繰り返す。


 腕を伸ばしきった際に義手が外れる。が、すぐさまバネの力により引き戻されて再び義手が接合部に填まる。

「おぉ!1回外れた義手がまた勝手に填まったわ。」

「だろぉ?取れにくい義手って言われて色々と考えたんどけどなぁ。いっその事外れても勝手に元通りになるようにって考えたんだぁよぉ。」

 その後も数回、腕を伸ばしては引き戻す動きを繰り返す翠鷹。

「うん。外れては勝手に戻るのを繰り返すわ。これなら神速の突きを放った際にも外れた義手が勝手にまた装着されるんやね。えぇ感じやわ。さすが茶牛はんやね。バッチリやで。」

「気に入って貰えたならよかっただぁよぉ。寝ずに頭を捻った甲斐があったってもんだぁなぁ。」

「寝てないん?それは無茶させてしもうたなぁ。すんまへんなぁ。」

「なぁにぃ。気にすんなぁ。皆が戦えるように義肢を作るのが儂の役目だからなぁ。でも流石に眠いわなぁ。儂は今日一日寝て過ごすから翠鷹は義手に慣れるようにしてくれやぁ。」

「はいさ。ウチは宿屋で義手の調整するわ。明日の朝、藍鷲はんに連絡入れて聖都までのゲートを開いて貰うようにしましょ。」

「あぁ。それで頼むわぁ。んじゃ儂は寝るだぁ。おやすみなぁ。」

「おやすみなさいまし。」


 茶牛に挨拶を返して『鋼の四肢』を後にした翠鷹。

 宿屋への帰り道すがら屋台で昼食を買い込むと宿屋に戻った。

「ほな、試してみるかね。王化、賢王。」

 王化して右腕の義手で細剣を握る。

「タキオン・スラスト!」

 神速の突きを放つ。王鎧の中で義手が外れる感覚がある。が、次の瞬間にはバネの力で義手がまた装着される。

「うん。これならいけるわ。ほんま茶牛はんに頼んだら何でも出来てまうなぁ。」

 その後も義手での細剣の取り扱いを試して1日過ごした翠鷹。

 茶牛はそれまでの睡眠不足を取り返すが如く熟睡した。


 翌日には茶牛と合流して藍鷲を呼び出した。

「義手完成したんですね?」

「えぇ。茶牛はんがええの作ってくださいましたわ。」

「それは良かった。では聖都に戻りましょうか。」

 開いたゲートを潜り抜け聖都に戻った翠鷹と茶牛。

 翠鷹はその後も聖都にて義手での細剣の取り扱いと左腕での細剣の取り扱いを特訓するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ