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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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507話 旧王国首都ワンズ13

 先程から面白いくらいにワイバーンが墜落してくる。

 それも紺馬が上空目掛けて矢を射る度に数体ペースで落ちてくる。

 その多くは翼に穴を開けられて揚力を失って墜落してきていた。中には眼球を見事に貫かれて脳まで達して絶命している個体もいる。

 あのゴブリンパーティーを抜けてきて、よく矢がそこまで残ってるなと思ったら白狐が言うには倒したゴブリンから矢を回収していたらしい。野営の撤収していたからそれを見ていなかった俺は、一瞬紺馬の矢は無尽蔵に湧き出ているのかと思ってしまったところだ。


 とは言え、矢の数にも制限があるようで、急降下してくるワイバーンには目もくれず、上空を飛行するワイバーンのみに的を絞っているようだ。

 降下してきた奴らは俺達が相手をすれば済むからな。実に合理的だと言える。

 ワイバーンと言えばやはり注意すべきは鋭い爪のある足での攻撃だ。

 急降下しながら大きく口を開けて噛みついてこようとする個体もいるが、喉の奥に大剣やら刀やらを突っ込まれてそのまま地面に激突していく。

 俺と紫鬼は緑鳥の護衛として後方待機しており、白狐に金獅子、銀狼と蒼龍が地上に降り立ったワイバーンの相手をいている。

 中には4人の攻撃から逃れてこちらにやってくるワイバーンもいたが、俺が爪による攻撃をさばき、紫鬼が拳で絶命させる流れが出来ている。

 このペースなら1時間もあれば邪魔なワイバーンは殲滅できるだろう。

 まだ崖の上にあるであろう巣に籠もっている個体もいるが、それらは襲ってこない限りは無視でいいだろう。

 あくまで通行の邪魔をしそうな個体のみ倒していく。


 それでも100体は倒しただろうか。

「矢が切れた。ワタシはワイバーンの死骸から矢を回収するからあとは任せた。」

 紺馬はそう言うなり地面に倒れているワイバーンから矢を引き抜き始めた。

 それでもまだ上空から降下してくるワイバーンが数十体はいる。もうここいらのワイバーンは全滅させる勢いだな。

「はははははっ!私の愛刀、白百合が血を求めてますよ!!」

 っと妙なテンションになっている白狐が次々と襲い来るワイバーンを斬り捨てる。

「ふんっ!やぁ!」

 蒼龍も急降下から牙を剥いてくる個体に三叉の槍を突き出して串刺しにしていく。

「でりゃあぁぁぁぁあ!」

「せいっ!やぁ!」

 金獅子と銀狼は降下からの攻撃を受け流して、地上に降り立ったところを斬り伏せている。

 ワイバーンと言えばBランクのそれなりに強い部類の魔物だが、王達にとっては苦戦する相手ではなかったようだ。

 そう言う俺も周りを見渡せるくらいには余裕があった。

 ほとんどを4人が相手取っているってのもあるけどな。


 暫くすると上空を飛ぶ姿も見えなくなり、地上にはおびただしい数のワイバーンの死骸が溢れていた。

 俺はドランの餌になりそうな微塵切りにされていない死骸のみを影収納に収めていく。

 相当数の死骸を仕舞いこんだところで、紺馬も矢を回収し終えた為、昼休憩を挟んでから湖に向けて足を進める事にした。


 その後は特に魔物や魔獣に出会うこと無くさくさく進めた。もともとワイバーンの住み家が近いこともあって他の魔物や魔獣も近寄らないような場所だったのだろう。

 ワイバーンの巣があった崖を超えるとまた森の中に入り、木々に日の光を遮られた。

 日中でも薄暗い森の中が日が落ちてきた事でより暗くなっていく。

 想定では2日目には湖に到着する予定だった。が、ゴブリンやらワイバーンやらの相手をし過ぎたのだろう。日は落ちたというのにまだ湖に到着しない。

 仕方なく森の中でも根が地上に出ていないような平らな場所を探して野営の支度をした。

 昨日はゴブリンパーティーのせいで短時間の睡眠時間しか確保できていなかった為、今日は見張りを2人立てて、残りはちゃんと寝れるように割り振った。

 夕飯は作り置きのカレーにした。ハンマーヘッドシイラのフライを乗せたフィッシュフライカレーだ。

 やはりハンマーヘッドシイラのフライは好評で、また仕入れられる時には仕入れておこうと思った。だが、魔魚だからな。魚屋に並ぶこともないだろうからまた自分で獲ってこないといけないか。

 これから向かうのは湖に面した『嘆きの迷宮』だ。魚系の魔物も出ると言う話だし、上手いことハンマーヘッドシイラや他の魔魚が獲れる事を期待しよう。


 翌朝はこれまた作り置きのサンドイッチを影収納から取り出して朝食を済ませると北西に向けて足を運んだ。

 3時間も進むと森が開けてきた。

 すぐそこには巨大な湖がある。

「これが人族領で3番目に大きい湖。レ・ヨン湖ですね。」

 博識な白狐が言う。

「この広さで3番目?向こう岸が見えないくらい広いぞ?」

「ここは縦長な地形ですからね。東側に立てば西の対岸は見えるくらいのはずですよ。」

「1周するのにどのくらいかかるかのう?」

「さぁ、私も1周した事はないですから正確なところは。10時間くらいですかね。」

「迷宮の入口を探すのも苦労しそうじゃな。」

 紫鬼の呟きに銀狼が答える。

「いや、迷宮の入口は湖の南側らしいからな。北西に向かって歩いてきたからそこまで遠くはないだろう。」

「そうか。なら安心じゃ。」

 俺達は南に向けて足を進めた。

 銀狼の言う通り、1時間もしないうちに迷宮の入口が見えた。

 そこは湖を背後に違和感ありまくりな扉が設えられており、扉の両サイドには柱だけが立っている。もともとは屋根でもあったのかもしれないが、今は見る影もない。

「いいか?開けるぞ?」

 金獅子が両開きの扉を開けると角度的に湖の下に向かって降りていくような階段が続いていた。

「いよいよ、迷宮探索だ。準備はいいか?」

 金獅子の問いに皆頷き返す。

 さて、3番目の迷宮だ。どんなお宝に出会えるか、今から楽しみだ。


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