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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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498話 甲蟲人:蟻20

 翠鷹が目を覚ました時、視界には見慣れぬ天井があった。

 あの世にも天井はあるんやなぁっとボーッと考えていた翠鷹であったが、右腕に違和感を覚えてそたらを見やると肘付近に包帯が巻かれており、そこから先が無くなっていた。

 あぁ、腕まで無くしたかぁ、と思っていた所に緑鳥の声が聞こえてきた。

「目が覚めましたか?具合はどうですか?」

「ここは?」

「獣人族の方の家です。無事な家屋を貸し出して頂いています。」

「ウチ、百足の毒にやられたんやないの?」

「えぇ、ですが全身に毒が行き着く前に解毒の聖術が間に合いました。ただ、右腕前腕部はすでに壊死が始まっており、残念ながら切断するしかありませんでした。」

「そーかぁ。せやったらしゃーないなぁ。命が助かっただけでも儲けもんや。」

 躰を起こそうとする翠鷹に対して緑鳥が言う。

「まだ横になっていてください。外ではまだ蟻退治が続いています。今暫くは安静にしていて下さい。」

「そーかぁ、まだ敵と戦っとるんやね。せやったら寝取る場合やないな。ウチも戦うで。」

「ダメです。毒にやられて腕を失ったばかりの人に戦わせる訳にはいきません。解毒が間に合ったとは言え、躰は毒に侵されていたんですから。血液も足りてないはずです。ここには輸血の準備はありませんでしたから。」

 そっと翠鷹の肩を押してベッドに寝かせる緑鳥。

「まだ暫くは蟻退治に時間がかかりそうです。今回はもう休んで下さい。すべて終わったら聖都に戻って輸血です。まずは身体を休めて下さい。わたしは他の負傷者を診てきます。いいですね?きちんと横になってて下さいね。」

 それだけ言うと緑鳥はベッドから離れて行った。

 ボーッと失ったばかりの右腕を見やる。まだ手首が痛む気がする。幻痛というやつだろうか。足を失った時にはなかったことである。

 手首に噛みつかれた時の事が思い出される。噛み砕かれた骨、注入された毒。やはり失ったはずの右手首が痛む。

 両足だけでなく、右腕前腕も失った。まだ茶牛に世話になって義手を作成して貰わねばなるまい。

 義手になればもう神速の突きは放てなくなるかもしれない。恐らくだが突きを出す速度に義手の接続部が耐えきれずに外れてしまうだろう。

 一番の武器である速度を失った自分にまだ出来る事はあるだろうか。ぼんやりとそんな事を思う翠鷹、まぁ考えるのは後にしよう。今は緑鳥の言う通り身体を休めることにしよう。そう考えて目をつむる翠鷹。

 遠くで戦闘音が聞こえる。人々の叫び声も聞こえる。雄叫びに近いそれを聞きながらうつらうつらとし始める翠鷹。

 やはり血が足りてないらしい。すぐに意識を手放して眠りに落ちる翠鷹であった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 鬼王が甲蟲人:蟻を蹴散らしながら敵の最後方へと抜け出た。

 すでに敵将と戦う獣王達の姿は見えない。だが、一カ所、蟻共がたむろっている場所があった。

 何事か?と思い足を向けると獣王が迫る蟻共を殴り飛ばしながら奮闘している。だが敵の数が多く、押し潰されそうな勢いである。

 慌てて、鬼王はそちらに向かい、獣王へと群がる蟻共を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、投げ飛ばしながら獣王のもとへと急ぐ。

「おぉ。紫鬼か。助かった。」

「どうした金獅子?大剣は?」

「見ての通り、敵将に噛みつかれてな。最後の最後で俺様の武器を封じおった。」

「蒼龍達は?」

「翠鷹が毒にやられてな。今は後方まで翠鷹を運んで貰っておる。1人でもどうにかなると思っておったのだが、なかなかに厳しくてな。来てくれて助かった。」

 迫り来る蟻を殴り飛ばしながら鬼王が答える。

「まったく、武器を封じられておるのに1人で残るなどと無茶が過ぎるぞ。ワシが来なかったら蟻共に潰されておっただろうに。」

「あぁ。雷纏の反動が酷くてな。身体を動かすのもしんどいわ。」

「大人しくしとれ。ワシが蟻共を蹴散らしてくれる。」

「助かる。」

 そして暫く経つと宣言通り鬼王は群がっていた蟻共を殲滅した。


「来たついでだ。この百足の顎を外すのを手伝ってくれ。」

 獣王はなんとか百足の口を開かせようと四苦八苦している。

 蟻型甲虫人に囲まれて滅多打ちにされていたが、王鎧のおかげでそこまでダメージはない。

「俺様が下顎を掴んでおくから上顎を引っ剥がしてくれるか?」

「おぅ。任せろ。」

「「ふんぬっ!」」

 死してなお、その咬合力は衰えない。むしろ死後硬直でより硬くなっているかもしれない。

「ぐおぉぉぉぉぉお!」

「でりゃぁぁぁぁあ!」

 格闘すること数十分。ようやく百足の顎が外れて大剣が自由になった。

「ふぅ。なんとかなったな。」

「思った以上に硬かったな。身体のほうはどうじゃ?まだ動けるか?」

 左手で大剣を担ぎ上げ、右肩を回しながら獣王が答える。

「あぁ。全身筋肉痛だが、なんとか動ける。まだ蟻は多い。休んでいる暇はなさそうだな。」

「あぁ。さっさと片付けて休もうや。」

「だな。」

 2人は別々に蟻共に向けて走り出した。


 その後、金獅子の王化が解けるまで戦闘は続き、多数の負傷者を出しながらも獣王戦士団の活躍もあり、第6次甲蟲人侵攻は終わったのであった。


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