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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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497話 甲蟲人:百足6

 片足全てを失い機動力を失った百足型甲蟲人に容赦ない追撃が飛ぶ。

「火炎矢!五月雨!!」

 10本の炎の矢を連射する精霊王。その矢は獣王がつけた胸部の傷に吸い込まれるようにヒット。

 百足型甲蟲人の身を焼く。

「ぎゃわぁぁぁあ!熱い!熱いっ!!」

 そこに紅蓮の槍で薙ぎ払いを敢行する龍王。紅蓮の槍からは炎が上がっている。

「双龍旋!」

 右腕の手首を断つ紅蓮の槍。傷口からは炎が上がる。

「ぎゃっ!こっちも熱いっ!!」

 満身創痍の百足型甲蟲人。

 それでも片腕を振るいナイフの刃を向けてくる。


 三叉の槍でナイフを弾き上げて紅蓮の炎を灯す槍で突きを放つ龍王。腰部の外骨格を砕きながらその身を燃やす紅蓮の槍。さらにそこに精霊王の放った火炎の矢が飛んでくる。

「ぎゃぁぁぁぁあ!燃える!アタクシがもえてしまうワ!!」

 炎に巻かれた百足型甲蟲人。大知を転がり炎を鎮火させるも息も絶え絶えである。


「はぁ、はぁ。やっと消えたわネ。もぅ!熱いじゃないのヨ!」

 立ち上がり残った膝上と片足を使って歩み寄る百足型甲蟲人。

 左腕1本でもナイフを振るい、三叉の槍を弾き上げると紅蓮の槍までも叩き落とす。

 そのままの流れで龍王。の胸部に吸い込まれるナイフの切っ先。

「がはっ!」

 胸部に鋭い痛みを覚えて吹き飛ばされる龍王。しかし切っ先は王鎧の表面を砕いただけで肉体には届いていない。

「けっ!」

 そこに強酸の唾を吐きかける百足型甲蟲人。咄嗟に腕を戻し、胸部の前でクロスさせた龍王。

 無事だった右腕前腕にも強酸を浴びて王鎧が溶かされる。

「きえっ!」

 そこにナイフを掲げて飛び掛かる百足型甲蟲人。ナイフには毒が塗ってある。王鎧が剥がれた龍王に迫るナイフの刃。

「障壁!」

 三度ナイフを受け止めた見えない障壁。

「もー!何なのヨ!これは!」

 ガシガシと障壁を叩く百足型甲蟲人。だが障壁はその打撃にも耐える。


「氷結矢!五月雨!!」

 10本の氷の矢を連射する精霊王。振るわれていた右腕を瞬時に凍らせる。

「何ヨ!?また氷?!」

 凍りついた右腕を動かそうと藻掻く百足型甲蟲人。しかしそう易々とは氷は砕けない。

「雷鳴剣!」

 そこに大剣を振りかぶる獣王。

「くっ!」

 肩口でこれを受け止める百足型甲蟲人。その外骨格は強固であり獣王の渾身の一撃すらも受け止める。

 凍りついたままの右腕を振るい獣王を先制する百足型甲蟲人。

 凍りついたナイフを振るう百足型甲蟲人と大剣を振るう獣王。大剣が当たる度に剥がれ落ちる氷。

 数合の斬り合いの果てに凍りついたナイフの氷が全て剥がれ刃が露わになる。

「じゃっ!」

 突き出されたナイフを攻防に跳んで躱した獣王。

 躱す際にも大剣を振るい肩口に痛打を与えている。

 さらに龍王が三叉の槍で肩口を狙い突きを放つ。

「龍牙突!」

 何度となくダメージを受けて百足型甲蟲人の外骨格も砕け始めている。


「うおぉぉぉぉお!雷撃断頭斬!!」

 跳躍した獣王が大剣を大きく振りかぶる。

 その威力は凄まじく、硬い外骨格で覆われた百足型甲蟲人の肩口も度重なる攻撃に耐えきれずにその外骨格が砕け散る。

 肩口から入り、左の肺にまで達する大剣。

「ぐぼっ!」

 緑色の体液を吐き出しながらも大剣を握る左腕に噛みつく百足型甲蟲人。

 咄嗟に身を引いた獣王であったが、僅かに牙の到達が早く王鎧の前腕部を噛み砕かれる。しかし、咄嗟に身を引いた事で肉体へのダメージは回避した。

「があぁぁぁぁあ!」

 だがそれでも大口を広げ噛みつこうとしてくる百足型甲蟲人に対して、獣王は真っ直ぐに大剣を突き出した。

「でりゃあぁぁぁぁあ!」

 大剣は口から入り脊髄を破壊してうなじから飛び出した。

 さらに雷撃がその身を焼く。

「ぎょえぇぇぇぇえ!」

 その後数回大剣を噛み締める音が響いたが百足型甲蟲人は力尽きてその場に崩れた。

「やった、か?」

 呟く獣王。ピクリともにしない百足型甲蟲人を見てやっと大剣に込めた力を抜く。

 獣王達の勝利である。

 だが勝利の余韻に浸っている場合ではない。こうしている間にも翠鷹を蝕む毒が回っていく。


 死してもなおその咬合力は凄まじく、大剣を噛む百足型甲蟲人の頭部を外すことが出来ないでいる獣王。

「こいつを外すのは時間がかかりそうだ。蒼龍、先に翠鷹を後方に運んで緑鳥の治療を受けさせてくれ。」

「了解した。」

「紺馬も蒼龍と共に行け。」

「獣王、アンタは大丈夫なの?」

「俺様は心配ないさ。いいから行け。」

「分かった。」

 落ちていた翠鷹の細剣を拾った精霊王。

「障壁解除!」

 翠鷹を囲んでいた障壁が消え去る。

 それを確認した龍王が翠鷹をおぶって後方へと走り去る。それに続く精霊王。群がってくる蟻型甲蟲人を次々と射貫き道を空ける。


 遠ざかっていく3人の背中を見ていた獣王が呟く。

「さてと、雷纏解除。」

 獣王の躰に纏っていた雷が消え去る。

「ぐはっ!」

 雷の力で無理矢理躰を動かしていた反動が獣王を襲う。全身の筋肉が痙攣する。

「ぐぅぅぅあぅぅぅ。やはり反動が凄まじいな。使い所が難しい技よな。」

 痙攣する腕と足で百足型甲蟲人が咥えたままの大剣を抜こうと藻掻く。

 だががっちりと噛み合わされた百足型甲蟲人の口から大剣を引き抜くことは容易くない。


 そんな獣王を遠巻きに見ていた蟻型甲蟲人達が近付いてくる。

「むぅ。敵将は倒したと言うのに。俺様、ピンチか?」

 大剣を抜けないままの獣王に蟻型甲蟲人が群がってくる。


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