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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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495話 甲蟲人:百足4

 振り抜かれた2本のナイフ。

 賢王は辛くも細剣で受け止めた。

 そしてお返しとばかりに細剣での突きを放つ。

 その長い胴体からは想像もつかないような軽い動きでこれを避けた百足型甲蟲人。さらに凍りついた3本のナイフを振りかぶる。

「させるか!」

 後方から獣王が飛び込む。

「断頭斬!」

 これをノールックで右腕2本で受け止めた百足型甲蟲人は、獣王をチラ見すると無事な右側3本足での蹴りを放つ。

 腹部に痛打を受けて転がされる獣王。その間にも賢王に向けてナイフが振るわれる。


 細剣を縦横無尽に振り回してナイフを受け流す賢王に対して、百足型甲蟲人は左足での蹴りを放つ。

 4連撃となった蹴り足が賢王の腹部に突き刺さる。

「ぐはっ!」

 そのまま凍りついた3本の左腕のナイフで殴り掛かる百足型甲蟲人。それを龍王が三叉の槍を伸ばして受け止める。砕ける氷、刃が露わになる。

「龍覇連突!」

 そのまま高速の連続突きを放つ龍王。百足型甲蟲人はその連続突きを巧みなナイフ裁きで受けきる。

「きえっ!」

 左腕で龍王へと斬りかかる百足型甲蟲人。

 三叉の槍を掲げてこれを受け止めた龍王。

 だが続く右腕の2連撃を左腕に受けてよろめく。

 そこに3本の右足による蹴りが飛ぶ。脇腹に蹴りを受けて吹き飛ぶ龍王。


「クフフフフフッ。まるで相手にならないわネ。」

 残った5本の腕を広げ、手首を曲げ伸ばしてナイフを振るう百足型甲蟲人。

「くそっ。」

 獣王が立ち上がり百足型甲蟲人へと歩み寄る。

 その背後からは精霊王が百足型甲蟲人を狙って火炎の矢を番える。

 賢王に龍王も立ち上がり百足型甲蟲人を取り囲む。


「てりゃっ!」

 龍王が三叉の槍を突き出して百足型甲蟲人を牽制する。

 その槍を身を躱して避けた百足型甲蟲人であったが、その避けた先に獣王の大剣が迫る。

「雷鳴剣!」

 雷を纏った斬撃を放つ獣王。

「コンティニュアス・スラスティング!」

 その反対方向からは賢王が鋭い細剣による連続突きを放つ。

 さすがに両方は避けられないとみた百足型甲蟲人は雷撃を伴う獣王の大剣を避けた。

 そこに鋭く突き刺さる賢王の細剣。

 だが肩口の外骨格でこれを受け止めた百足型甲蟲人。お返しとばかりに左腕でナイフを振るい細剣を持つ賢王の腕を切り裂く。


 咄嗟に細剣を手放してしまった賢王は慌てて、左腕を伸ばして細剣を受け止める。そしてそのまま無理な体勢で細剣を上に振るった。

 これが上手く下から2番目の左腕を直撃し、左腕の手首を刎飛ばした。

「くっ!やりやがったわネ!」

 右腕2本でナイフを振るう百足型甲蟲人。細剣を振るった体勢の賢王の背中を切り裂く。

 まだ王鎧は破られていない為、ナイフに付いた毒は躰には回らない。それだけが救いだった。


 さらに賢王の背中を蹴り飛ばす百足型甲蟲人。

 と、その背中に精霊王の放った5本の火炎の矢が突き刺さる。見事に外骨格の切れ目を狙って射られたものであり、自身でも狙いが粗くなると言っていた5本の矢を同時に放ち、全てをヒットさせた。戦いの中でも成長している精霊王である。

 振り向きざまの顔面に向けてさらなる矢を射る。

「火炎矢!五月雨!!」

 ほぼ同時に射られた10本の炎の矢。なんとこれは百足型甲蟲人がその強靱なる咬合力でもって咥えて受け止めた。

「ぺっ!甘いわネ。顔面への攻撃なんて全て噛み砕いてやるワ!」

 余裕の表情の百足型甲蟲人であったが、雷鳴剣を振り抜いた獣王が1回転して再度大剣を振るってくる。


 右腕のナイフでこれを受け止めた百足型甲蟲人であったが、ナイフを通って電撃が走る。

「あばばばばばっ!」

「水撃・龍翔閃!」

 龍王の突き出した三叉の槍の先端から高圧の水撃が放たれ、百足型甲蟲人の前から3本目の左足を吹き飛ばす。

 さらに

「龍牙突!」

 回転を加えた三叉の槍が前から2本目の左足の膝下を吹き飛ばす。

「ちぃっ!」

 左腕でナイフを振るい龍王を牽制する百足型甲蟲人。

 自分から気が逸れた事を確認した獣王が軽く跳躍する。

「雷撃断頭斬!」

「くぅ!」

 咄嗟に首を傾けてこれを避けた百足型甲蟲人であったが、大剣は右肩に当たり、1番上部の右腕を肩口から斬り飛ばす。


 これで残るは左腕2本と右腕1本、左足2本に右足3本である。

 ガードが緩くなったところで賢王が仕掛ける。

「当たれ!タキオン・スラスト!!」

 光の速度すら置き去りにする神速の突きを首筋に向けて放つ。

 しかし

「けっ!」

 百足型甲虫蟲人が強酸の唾を賢王の顔面に吐きかける。

 ちょうど王鎧の右眼に強酸がかかり手元が狂った。

 神速の突きは僅かに首を逸れて百足型甲蟲人の顔の前を通過する。

 すると、なんと百足型甲虫蟲人は伸びた賢王の右手手首に噛みついた。

 バキバキバキバキッ

 強靱な顎で噛みつかれた手首の王鎧。生半可な攻撃では傷すらつかないような強度を誇る王鎧に対して百足型甲蟲人の咬合力は勝っていた。

「きゃーっ!」

 噛み砕かれる手首。さらに牙から毒液が流れ込む。

「ぐっ!」

 手首を噛まれながらもフラつく賢王。

「いかん!早く離させないと!雷鳴剣!」

「龍覇連突!」

「火炎矢!五月雨!」

 残る3人の攻撃が百足型甲蟲人へと迫り、やっと手首を離して上体を反らしてこれらを避けた百足型甲蟲人。


「くっ、くっそっ。毒か…こんなところで…。」

 フラつきながらも百足型甲蟲人から距離を取る賢王。しかし、力尽きて倒れ込み、気絶したのか王化も解けてしまった。

「不味い。気絶したか。こうなりゃ王化時間がどうのと言ってる場合ではないな。蒼龍、一気に攻めるぞ!」

 獣王は龍王に向けて指示を出す。

「王化!仁王!」

 獣王が叫んだ次の瞬間。右手人差し指にはまる碧色の王玉から碧色の煙が立ち込め、獣王の両腕前腕を覆う。

 そしてその煙が腕に吸い込まれるように消えていき、残ったのは前腕を碧色に輝かせた王鎧姿の獣王だった。


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