491話 甲蟲人:蟻19
「負傷者は即刻後方に退避!ここが最前線だぞ!死守しろ!」
金獅子が声を張り上げながら最前線へと向かう。
前線ではハンター達に代わり獣王戦士団の面々が蟻型甲蟲人と対峙していた。
至る所に瓦礫と化した家々が崩れ、足場も悪い。
そんな中でも獣王戦士団の面々は甲蟲人の侵攻を押さえていた。
「うぉぉぉぉお!」
大剣を振るい蟻型甲蟲人を吹き飛ばすタイガニリヤ。
「もっと押し込め!村の中では足場が悪い。村の外へと敵を追い出すのだ!」
戦士団員達へと檄を飛ばす。
「「「おー!」」」
それに触発された軽装の猿獣人や猫獣人、兎獣人が果敢に攻め込む。4人一組で蟻型甲蟲人へと向かっていく。
「はぁぁぁぁあ!」
その隣では巨大な戦斧を振り回したエレファンタスによって蟻型甲蟲人の首が飛ぶ。
「右舷の奴らに後れを取るな!左舷の重戦士団の力を見せつけてやれ!」
「「「うぉー!」」」
重装備に身を固め斧や鎚で武装した犬獣人や犀獣人、熊獣人達が蟻型甲蟲人とぶつかり合う。
こちらは2人一組で1体の蟻型甲蟲人と対峙している。
負傷者は即刻同じ組のメンバーにより後方へと運ばれて、僅かながらに残った家屋にて残ったハンター達によって治療を受ける。
治療とは言っても簡単に止血されて動けるようになったらすぐさま最前線へと逆戻りだ。
矢筒を背負ったハンター達は後方から敵の中央に向けて矢を射続けている。大したダメージにはなっていないと分かりながらも牽制のために続けているのだ。
上手く関節部に刺さる事は稀ながら敵の足止めにはなっていた。
煩わしそうに長剣で飛び行く矢を払う蟻型甲蟲人達。その間は足も止まり進行速度が落ちる。
その間に最前線を守る戦士団員達が敵を押し込み、腕を刎ね、首を刎ねて数を減らしていく。
だが蟻型甲蟲人の物量が凄まじくなかなか前線を押し込むことは出来ずにいた。
そんな中でようやく金獅子の待ち望んだ増援が到着する。
他の王達である。
ゲートの出現場所から大きく移動すると言う事もあり、緑鳥含め全員が馬に乗り彼方より駆けてくる。移動を考慮して全員が集まってからゲートを使用してきたようで、駆けつけたメンバーは全員が集まっている。
紺馬などは馬上からも矢を射始めて敵の中腹を狙う。
1度に5本の矢を射ている事からそこまで精密射撃をしている訳ではなく、足止めの為の射撃だと分かる。
村まで到着した面々は村の代表者であるゴロニャーゴを呼び止め、馬を留めておいて貰うよう依頼し、すぐさま最前線へと合流する。
最前線にて1人奮闘する金獅子を見つけることは容易かった。
「金獅子の兄貴!待たせたな!」
迫り来る蟻型甲蟲人へと壮健を振るいながら銀狼が言う。
「おう。待っておったぞ。村はご覧の有様だ。だが完全に蹂躙された訳ではない。敵を押し込み足場の悪い村の外へと追い出したいのだがな。敵もなかなかにやりおる。」
「あの獣王戦士団でも手を焼くかよ。」
大剣を振り回しながら金獅子が答える。
「うむ。全員に甲蟲人と対峙する時の心得は伝えてあるがな。なにぶん初めての接敵だ。まだ外骨格の強度にも慣れておらんからな。」
「確かに。蟻の奴らますます硬くなってないか?」
「うむ。それは俺様も思っておった。敵も強化されているのやもしれん。」
双剣を振るいながら金獅子と会話する銀狼。
銀狼の言う通り蟻型甲蟲人の外骨格が以前にも増して硬くなっている気配がある。
「もしかしてこいつらも進化してやがるのか?」
「だとしたら不味いな。今回の侵攻はまだ半ば、後半になればますます硬度が増すやもしれん。」
「オレ達はいいとして一般兵士に対応出来なくなるとヤバいな。」
「だな。俺様達がどれだけ数を減らせるかの問題になってくるやもしれんな。」
そんな事を話す2人の後方から雷を纏った竜巻と電撃の矢が飛んで行く。
朱鮫と藍鷲の後方からの魔術・魔法が飛び始めたのだ。
2人の傍に白狐がやってくる。
「敵将の姿はまだ見えませんね?」
「あぁ。後方待機しているのであろう。」
白狐の問いに金獅子が答える。
「俺様も碧鰐の王玉で仁王形態になる事は出来た。障壁も張れる。だがやはり2つの王玉を起動させる事で王化時間が短縮されるのでな。緑鳥達の周りに障壁を張るのはもっと敵兵が減ってからでないと王化継続時間切れになる可能性が高い。そこでだ。白狐。お前には緑鳥達の護衛も任せたいのだが?」
「緑鳥さん達は後方にいるのでそこまで甲蟲人がやって来る恐れはないかとは思いますが、わかりました。今回は私が最後の砦になりましょう。その代わり敵将は任せましたよ?」
「うむ。俺様は敵兵を抜けて敵後方の敵将を目指す。」
とそこに翠鷹・紺馬もやって来た。
「ウチも一緒に敵将を目指しますわ。」
「ワタシも行こう。」
「これで3人か。あと1人はどうするか。」
「それなら我が行こうか。」
蒼龍だ。三叉の槍で蟻型甲蟲人を吹き飛ばしながら金獅子達のもとへと合流したのである。
「うむ。これで4人だな。では王化して一気に敵後方を目指すぞ。」
「「「おぅ!」」」
役割分担も決まったところで戦局が動く。




