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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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488話 獣王国7

 一方その頃、獣王国へと戻ってきていた金獅子はなんとか仁王のリングを起動させようと躍起になっていた。

 元々右手中指に着けていた自身の王玉のはまったリングには問題なく神通力を通すことは出来ている。つまり右手にまでは神通力を通せているのだ。あとはその神通力を新しくはめた右手人差し指に流すだけである。

 だがこれが思った以上に難しい。

 常に右手に通した神通力は中指に流れるように無意識に調整していた為、意識的に他の指に流すのが困難なのだ。


 蒼龍や紫鬼にもコツを聞いてみたが、彼等はネックレスと右手親指のリングや、左右の腕にはめたバングルと左足のアンクレットなど、そもそも2つ以上の王玉を所持はしているものの、身に着けている位置が離れており、底まで細かい神通力の制御は必要としないらしい。


 だと言うのに自分は2つの王玉のはまったリングを右手に両方はめてしまっている。

 もともと中指にしていた自身のリングはいいとして、碧鰐から預かった守護神の加護を持つ王玉のはまったリングが右手人差し指にしかサイズが合わなかったのが悪い。碧鰐自身も右手人差し指にはめていたリングであり2人の手の大きさが大差なかった事からこういった状況になってしまっていた。


 神通力の精密操作か。そう言えば魔族領にて大剣を打ち直して貰った時に何気に神通力を流していた事を思いだした。

 あの時はいつも右手に集中させる神通力を大剣に集める事が出来ていた。

 つまり神通力をコントロール出来ていたのだ。要はそれをもっと緻密に行えればいいのである。

 金獅子の1人での修行が始まったのであった。


 獣王国に戻って1日目。

 王化の限界持続時間まで獣王となって神通力の制御を目指す。

 だが掌にまでは通すことは出来ても指にまで意識が向かない。いや、向けてはいるのだが掌に流した途端に中指に流れてしまう。

 失敗だった。

 王化が解けてしまっている間は溜まっていた書類仕事を片付けた。

 とは言ってもすでに内容の吟味はさらており、あとは王である自分の承認さえあれば済むようになっている。

 優秀な部下達に礼を言いながら承認印を押印していく。

 で、また王化が可能になれば獣王となって神通力の制御の特訓をする。

 失敗続きで溜まった書類も5分の1が見終わったところで1日目は終了した。


 2日目。失敗。

 溜まっていた書類は5分の2が片付いた。


 3日目。失敗。

 溜まっていた書類は5分の3が片付いた。


 4日目。失敗。

 溜まっていた書類は5分4が片付いた。


 5日目。失敗。

 溜まっていた書類はすべて片付いた。だが毎日何かしらの書類が運ばれてくる。

 承認印を押すときも右手人差し指を意識するようになっている。


 6日目にして変化が現れた。

 右手人差し指にはめたリングの王玉が碧色に輝き始めたのだ。

 まだ仁王出来るほどの神通力を流せてはいないとわかるが、人差し指に多少なりとも神通力を流せた事に本人も驚いた。


 7日目。

 いつものように金獅子が声を上げると、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏う。

 次の瞬間、その煙が吸い込まれるように体の中に消えていき、煙が晴れると獅子を想起させるフルフェイスの兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王の姿となる。

 これは今までに何度となく行ってきた右手中指への神通力を通した際に出来る王化である。

 何度かその状態で右手人差し指への神通力を流す事を試すが、碧色の王玉が輝くことはなかった。


 この日、何度目かになる獣王化のあと、金獅子は右手を前に突き出して人差し指のみを伸ばして手を握る。左手で右手首を握り込む。

 そして

「王化!仁王!」

 と叫んだ次の瞬間。右手人差し指にはまる碧色の王玉から碧色の煙が立ち込め、獣王の両腕前腕を覆う。

 そしてその煙が腕に吸い込まれるように消えていき、残ったのは碧色に輝く前腕の王鎧だった。

「成功か?」

 金獅子自身も信じられない様子である。しかしその王鎧の変化こそが仁王化が出来た証明である。

「成功だ!」

 やっと実感が湧いてきた金獅子は1人はしゃいだ。


 今の感覚を忘れないうちに仁王化を解いて再び右手を伸ばして人差し指のみを伸ばす。左手は右手首を掴む。

「王化!仁王!」

 またしても人差し指の王玉から碧色の煙が両腕を包み込み、晴れた後には両前腕は碧色に輝いていた。

「これだ!このポーズが重要なんだな。人差し指のみを伸ばす。このポーズだ!」

 独り言ちる金獅子。

 さて、後はちゃんと仁王の権能が使えるかの検証である。

「障壁展開。」

 金獅子の目の前に僅かに光り輝く透明な壁が現れる。高さ2m、横幅2mほどの障壁である。

 試しに本気でぶん殴ってみるが障壁は砕けも凹みもしなかった。

 まさに碧鰐が使っていた障壁と同様である。


 次は権能の回数制限の確認である。碧鰐は16枚の障壁を操れた。

 果たして金獅子はどうか?

「障壁。障壁。障壁。…。」

 次々と目の前に障壁を展開していく。結果として金獅子では12枚の障壁展開が限界だった。碧鰐よりも4枚少ない。

 これは今後も訓練する事で増やせるのかは不明だが、やってみる価値はあると思われた。


 次は障壁の展開場所である。碧鰐は目に入る場所ならドコにでも障壁の展開が出来た。金獅子はどうか?

 障壁の展開持続時間は?強度は?魔術や魔法は通すのか?障壁の大きさは変えられらのか?

 金獅子にはまだまだ検証が必要だった。


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