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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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481話 旧王国領セブンガ4

 『魔素酔い』と言うのがある。これは大気中の魔素に当てられて気分が悪くなる賞状で10万人に1人くらいの割合で存在する。

 『魔素酔い』は大人になるにつれて改善していき、成人になる頃には落ち着いてくる。

 だがそんな『魔素酔い』持ちの中でさらに100万人に1人くらいの割合で魔素を体内に取り込むようになる者が現れる。それは『魔素喰い』と呼ばれ、人間族でありながらにして魔力を持つという特殊体質になる。

 そんな『魔素喰い』は意識せずとも魔力で身体能力を向上させて人並み外れた膂力にスピードを持つと言う。

 そんな『魔素喰い』にあって初めて魔法を発現させたのが、黒猫の目の前に立ち塞がるAランクの傭兵、カザフステインだった。

 カザフステインは10歳の頃には『魔素喰い』となり、体内に魔力を溜めていった。そんな魔力が暴発しそうになった13歳の頃、魔術というものを知って自分にも使えないかと試してみた。

 詠唱など知らない子供たちだったカザフステインだったが、試しに「ファイア」と唱えると掌から炎を発現させた。

 魔族しか扱えないはずの魔法を放ち周りを驚かせたカザフステインだったが、当の本人は魔法の力に魅せられて魔術を学ぶようになった。

 魔術師達が詠唱を必要とする中、自分は詠唱なしでイメージした魔術を発動させる事が出来た。

 それを魔法と呼び、通常魔族しか扱えない事を知ったのは15歳になった頃。

 カザフステインはこれを自分に神が与えたギフトだと認識し始めた。

 ギフト持ちのカザフステインが傭兵としてその名を轟かせるようになるのは19歳の頃。

 傭兵登録が可能となる18歳から初めてたった1年でAランクに成り上がった。

 魔法を使えるという圧倒的なアドバンテージがありながらも、魔法は魔力が底をついたら放てなくなる。その事を危惧したカザフステインは格闘ナイフ術を学び始め、23歳の時にはそれをもマスターした。

 今黒猫と対峙するカザフステインは29歳。まさに脂の乗りきった年頃だった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目の前の男は魔法を放ってやがった。藍鷲のような魔族なのか?それにしては肌の色が青白くない。むしろ日に焼けた小麦色の肌をしている。

 なのに何故魔法を使えるのか?そんな事を考えている間にも魔法が飛んでくる。

「アイスニードル。」

「アイスニードル。」

「アイスニードル!」

 ナイフと拳が迫る中で突然放たれる魔法。俺は咄嗟に避け、ナイフで弾き、なんとか直撃を避ける。


「ちっ。テメェ、ホントにだりぃな。魔法にも対抗してくるとはな。さては魔族と戦った事があるな?」

「まぁな。って言ってもまさか人間が魔法を放ってくるとは思わなかったぜ。特殊体質か?」

「あン?『魔素喰い』ってやつだ。そん中でもオレ様は特別でな。『ギフト持ちのカザフステイン』とはオレ様の事よ。」

「ギフト持ち?知らないな。」

「ちっ!だるっ。オレ様の名前を聞いても怯まねぇとか面倒くせぇな。」

「『魔素喰い』ってのも初めて聞いたよ。世の中広いな。俺の知らない事がまだまだありそうだ。」

「1000万人に1人だからな。貴重な体験だぜ?そん中でも魔法を使えるのはオレ様だけだ。光栄に思って死ねや。」

 カザフステインと名乗った男はナイフを振るってくる。

 俺はナイフで去なし、弾き、避け、反撃として斬りかかる。その間にもカザフステインは魔法を放ってくる。

「アイスニードル!」

 俺は右手のナイフで叩き落とす。


「それしか使ってこないのな?使える魔法はそれだけか?」

「ちっ。火炎系統は屋内じゃ使えねぇしな。こいつが1番発動も速ぇ。なのに避けるとかテメェ、マジでだりぃな。」

「氷なら弾けるし叩き落とす事も出来る。俺には効かないよ。」

「うるせっ。オレ様の勝ちは揺るがねぇよ。」

 互いに斬り斬られ血が飛び散る。

 カザフステインは右手のナイフで突いてくる。

 左手のナイフで弾きあげる。

 左手のボディブローが飛んでくる。

 右腕を曲げて肘で受ける。

 弾きあげたナイフを振るってくる。

 右手のナイフではたき落とす。

 がら空きになった顔面に渾身の左フックを打ち噛ます。

 吹き飛ぶカザフステイン。だがすぐに立ち上がる。

 髪を結わいていた紐が外れて長い前髪が男の視線を隠す。

「くっそ。痛ぇじゃねぇか!」

 カザフステインのラッシュが始まる。


 右のナイフが飛んでくる。左のナイフで斬りかかる。左の膝が飛んでくる。右のストレートが放たれる。

 目線を追えず取り敢えず向かってくる攻撃を捌く事だけに集中する。

 が、捌ききれなくなった俺の外套が切り裂かれる。腕にも足にも切り傷が増える。

「アイスニードル。」

 避けた先に氷の針が飛んでくる。

 咄嗟にしゃがんで避けた俺は、そのまま足払いを仕掛ける。

 軽く跳んで躱すカザフステイン。

 その落下の勢いを乗せて両手のナイフで斬りかかってくる。

 俺は両腕を上げてこれをナイフで受け止める。

 しかし、落下の勢いを乗せた攻撃は重くナイフをすり抜け俺の両肩を斬りつける。

「うわっ!」

「はン!今のは効いただろ?どうだ?観念する気になったか?」

「いや、まだまだだ。」

 俺は一気に攻勢に出た。

 ナイフを振るい、蹴りを放ち、ナイフで突く。

 そのうち何度かはカザフステインの腕や足や腹部を斬りつけて出血させる。

 俺はナイフを振るう勢いそのままに回転してしゃがみ込み足払いを仕掛ける。


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