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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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480話 旧王国領セブンガ3

 悪徳奴隷商の家も貴族の屋敷に負けず劣らず立派なものだった。

 それに月に1度の大口取引の後だからか警備兵の数も多い。

 俺は3階の窓から侵入したのだが、早速警備兵に見つかってしまった。

 ただ警備兵は声をあげるでも無く長剣を振るってきた。

 声をあげられて仲間を呼ばれる方が面倒なのでこれには助かった。

 きっと侵入者を仕留めた方が成功報酬でも出るのだろう。それなら声を上げて仲間を呼ばなかったのにも頷ける。

 長剣を振り回して迫ってくる警備兵。俺はその斬撃を全てナイフで受け止めると剣を振り上げた瞬間を狙って踏み込む。

 顎先へとナイフの柄で強打を与える。ぐらつく警備兵。その頭部に向かってハイキックをお見舞いする。

 その場に崩れる警備兵。帰りの邪魔にならないように手足を縛って適当な部屋に押し込む。

 すると次の警備兵がやってくる。

 長剣を振り回す警備兵。俺は殺さないように首筋にナイフの柄を当てて意識を刈り取る。そしてまた手足を縛って部屋に押し込む。

 するとまた次の警備兵がやってくる。


 そんな事を15回も繰り返した。

 次の警備兵が来ないことを確認すると俺は金庫室を目指した。

 最初に入ったのは衣装部屋だった。数え切れないほどの衣装が所狭しと並べられ吊られている。

 中には金ピカのいつ着るのだろうと思うような衣装もあったが、この部屋には用はない。次の部屋を目指す。


 数えて6部屋目、角部屋までやって来た。この部屋になければ金庫室は2階以下になる。それは面倒だ。俺は金庫室である事を祈りながら6番目の部屋を開ける。

 部屋の奥には巨大な金庫が1つ置かれており、見事にここが金庫室で間違いなさそうだった。

 ただ、そんな金庫の前に1人の男が椅子に座って待機していた。

 男は両サイドの髪を刈り込み、長い前髪を後ろの髪と共に結わえており、異様な雰囲気である。

「なんだよ。一晩限りの警備って言うから楽な仕事だと思ったのによ。まぢに盗賊入るのかよ。だるっ。」

 男は起ち上がると椅子を後方へと蹴り飛ばす。

「あー。俺はAランクの傭兵なんだが、大人しく捕まる気はあるか?」

 男に問われる。

「残念ながら捕まる気はないよ。」

 軽い口調で返す。

「ちっ。だるっ。ヤルしかなぇのか。」

 男は両太股に固定された鞘から2本のナイフを抜き放つ。

 2本共に指を護るための太めの護拳(ガード)が付いており、握った手を隠している。


「Aランクの傭兵とやらがなんでまたこんな所で警備なんてやってんだ?」

 俺は思わず聞いた。

「あン?割の良い仕事だったのさ。一晩だけの金庫の護衛で金貨5枚だぜ?テメェが来なけりゃ何もせずに座ってるだけで金貨5枚の仕事だった訳よ。それなのにわざわざオレ様がいる時に来やがって。だるっ。」

 その応えを聞きながら俺も腰から2本のナイフを抜き取る。

「あン?獲物まで同じかよ。だるっ。やりづれぇじゃねーか。」

 言いながら男は右手を前に、左手を後ろに構える。両手共に順手でナイフを握っている。

 対する俺はいつも通り右手は順手、左手は逆手でナイフを握り、やや左手を前に出して構える。

「なぁ。やっぱり考え直さねぇか?オレ様はAランクだぞ?テメェに勝ち目はねぇだろ?」

「さてな。やってみないとわからないだろ。」

「ちっ。だるっ。」

 男は言うなり特攻してきた。

 左右のナイフを振り抜き、斬り込み、突きを放つ。

 俺はひとまず受け手に回った。ナイフを弾き、突きを去なす。

 互いに獲物がナイフのため、超近距離での攻防が続く。

 男が右手のナイフを振るった、と思いきや護拳で殴り掛かってきた。

 俺は咄嗟に左腕でこれを受け止めたが2、3歩後退させられる。

「あれぇ。今のはボディに入ったと思ったんだけどなぁ。テメェ反応速度はまぁまぁだな。」

「そう言うお前は格闘ナイフ術の使い手か。」

「お?知ってんのか?格闘ナイフ術。」

 格闘ナイフ術とはナイフの使い方だけでなく、その動きの中に格闘術も織り交ぜたもので、ナイフで斬ると共に殴る。ナイフで斬ると見せかけて蹴るなど、上手くナイフの斬撃と打撃を織り交ぜた戦術だ。

「そうなのよ。オレ様は格闘ナイフ術の使い手でな。ただナイフを握るテメェとは違うのよ。だからよぉ。もう諦めて降参しろや。オレ様にテメェが敵う訳ねぇだろ。」

「だからやってみないとわからないだろって。」

 俺は今度は攻勢に出た。

 左手のナイフを振り抜くと共に右手のナイフで突きを放つ。突いたナイフを斬り上げて左手のナイフで突く。

 どれも目の前の男にナイフで防がれてしまう。

 が俺も前蹴りを放ち、男を3歩ほど後退させる。

「おー痛ぇ。テメェだるいな。そこそこやるじゃねぇか。」

「褒めてんのか?ありがとよ。」

「褒めてねぇよ。だるいって言ってんだ。」

「怠いならお前こそナイフを置いて大人しくしてろよ。」

「はぁ?それじゃ報酬が手に入らねぇだろうが。何のために寝ずの番をしてやってると思っていやがる。」

「ならやり合うしかないな。」

「ちっ。だるっ。」

 次は男が攻勢に出た。

 ナイフで上下左右に縦横無尽に斬りかかる。

 俺もナイフで受ける。蹴りが飛んでくるのを膝を上げて受ける。

 拳が飛んでくるのを腕を曲げて受ける。

 左手のナイフを振るってきた男が右掌を俺に向けた。なんだ?

「アイスニードル。」

 男の掌から氷の針が飛んでくる。俺は慌てて仰け反ってこれを避けた。

「ちっ。これも避けるのかよ。」

 詠唱している様子は無かった。つまり、目の前の男は魔法を放ってきたのだ。


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