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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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469話 邪神教1

 翌朝、日が昇った直後から行動を開始した。

 先導してくれるのはマリアベイルだ。

 まだ人通りのない道を俺達はマリアベイルの案内のもと進み、街外れの一見何の変哲も無い一軒家に到着した。

「本当にここなのか?」

「はい。見た目はただの民家ですが、中に地下に繋がる階段があります。」

「んじゃ、早速乗り込もうかのぅ。」

 指を鳴らしながら紫鬼が言う。

 俺達は室内に誰も居ないことを確認してから玄関扉を開けて中に入った。

 ちなみに、鍵はかかっていたが、俺がちょちょいと針金で開けてやった。簡単な鍵だったので数十秒で解錠出来た。


 民家の中は何の変哲も無い一軒家だった。だが、生活感がない。まるで空き家のような有様で生活用品などが一切見当たらなかった。

「本当にここなのか?ただの空き家にしか見えないな。」

「えぇ。民家自体は空き家同然です。が、こちらへ。」

 マリアベイルは俺達を台所へと案内する。壁際に置かれた木箱を横にずらすと不自然な大きさの床下収納がある。確かに人が通れそうな程に大きい蓋がされている。

「皆様、準備はよろしいですか?」

 マリアベイルに念を押されて俺達は頷き返す。

 マリアベイルはその床下収納の蓋を外してみせる。

 するとそこには人1人が通れる程度の広さの長々と続く階段が現れた。あまりの長さに底が見えない。ただただ階段が続いている。

 地下という事もあり等間隔に置かれた光源となる魔道具の明かりがうっすらと階段を照らす。

 その光源のおかげで照明等は必要なさそうだ。

 マリアベイルを先頭に白狐、俺、紫鬼の順に階段を降りていく。


 階段はひたすらに長かった。感覚的にはもう地下10階分ほど降りてきている。

「随分と深いですね。」

「えぇ。地下の空洞にまで繋がっていますから。」

 白狐の問いにマリアベイルが答える。

 途中から天井となる岩壁が見え始め、さらにその階段を降りると天井の高さは20mほどにはなろうか。下にはひしめくように木製の家々が立てられており、階段から1番遠い場所には祭壇のようなものも見える。

「ホントに民家がある。どうやって地下まで資材を運んだんじゃ?」

「わかりません。相当長い期間を経てここまで家を増やしていったものと思われます。それこそ、1年や2年ではここまでの集落は作れないでしょう。」

 紫鬼の疑問にマリアベイルが答えてくれる。

 地下だというのに照明の魔道具のおかげでそこまで暗くは感じない。隣にいる白狐の表情も読み取れる。

 まだ早朝の為か外に出ている人は少ない。絶好の潜入チャンスだった。

「祭壇の方に参りましょう。この時間ならまだ先頭に陣取れます。毎朝朝礼が行われているので、そこで一気に制圧しましょう。頭を潰せばあとは烏合の衆です。なんとでもなるでしょう。」

 マリアベイルはかなりこの地下の情報に詳しい。前回の潜入時に相当時間をかけて調べたのだろう。


 俺達は階段から1番遠い祭壇へと向かう。そのうち民家からも人が出始めて皆一様に祭壇に向かって歩き出した。

 俺達もその一団に混ざる形で祭壇へと向かう。

 到着した祭壇には邪神を模して作られたと見える木造の像が置かれていた。その周りには動物の骨と見られる頭蓋骨が飾り付けられている。見た限り人骨はなさそうだった。

 やがて人が集まり祭壇前を埋め尽くす。俺達は祭壇の1番手前、左側に陣取る事が出来た。

 暫しの静寂を崩したのは3人の男女が現れてからだ。

 1人の男は真っ白な髭を蓄え、法衣を身に纏い、長柄のメイスを携えている老人だ。

「教祖様ぁー!」

「コーモウン様ぁー!」

 その声援に手を挙げて応える。

 教祖の名前はコーモウンか。

 髪型は所謂坊ちゃん刈りで年の頃は60代くらいだろうか。

「スケサルン様ぁー!」

 その声に応えるのは大太刀を腰に差した1人の男。大柄で額には刀傷が見られる。髪は後ろで束ねる程の長さだ。年は40代くらいに見える。

「カクサエン様ぁー!」

 その声援に手を振るのはごつい籠手を嵌めた小柄な女。髪は短く刈り込まれており、胸当てが膨らんでいる点を除けば女性だとは気付けないだろう。こちらはまだ20代と思われた。


 一段上がった祭壇の上でコーモウンが声を張り上げる。

「皆の者!よくぞ集まった!昨日までで総勢300名の勇士が集まった。」

「「「「おー!」」」」

「これでひとまずは聖都セレスティアに攻め込む準備は整っただろう。皆の者、武器を手に取れ!間違いだらけの世の中を正すのだ!」

「「「「「おー!」」」」」

 コーモウンの一声ひと声に集まった信者達が声を上げる。

「我々はこれより聖都セレスティアへと侵攻する!狙うのはあくまで主神教徒共だ!一般人には手を出すな!主神教の聖者、聖女を撃ち倒すのだ!そして邪教に与する多神の信徒達を血祭りに上げろ!」

「「「「おー!」」」」

 会場のボルテージが一段と高くなる。皆、教祖であるコーモウンに心酔しているかのようにコーモウンの一声ひと声に反応する。

「聖都には二手に分かれて侵攻する。まずは東門にはスケサルン率いる男性諸君!そして南門にはカクサエン率いる女性諸君!」

「「「「「おー!」」」」」

「聖都セレスティアまでは各々で向かって貰う。あまりにも大勢で向かえば目につく。集合は10日後。各自侵入する門の手前1km地点で合流だ!」

「「「「おー!」」」」

 そろそろいいかな?俺達は4人で頷きあって壇上へと駆け上がる。

「そこまでですよ。邪神教徒。聖都に攻め込む事は我々が許しません。」

 白狐が声高に宣言すると会場にざわめきが起こる。

「何者だ!」

 スケサルンが大太刀の鯉口を切りながら問い掛けてくる。

「貴方たちが敵視している他神の神徒ですよ。」

 白狐の台詞に会場のどよめきが大きくなる。

「そちらからやって来るとは好都合。スケサルン、カクサエン!やってしまいなさい!」

 コーモウンが声を上げる。

 こうして地下での邪神教徒達との戦いが始まった。


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