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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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468話 ヌイカルド連邦国13

 聖都を出発してちょうど6日目、俺達はヌイカルド連邦国のヌベラの街に到着した。

 街に到着した俺達はまずは手頃な宿屋を探してチェックインした。

 選んだ宿屋は老舗らしく、1階部分が食堂になっており、2階から上が部屋があり、4階建てとなかなかに大きな宿だった。

 俺達の部屋は3階の奥。部屋の中は簡素なベッドに文机、荷物置き場と思われる台がある程度でさっぱりした印象だ。部屋数を設ける為かそこまで広さはないが、各部屋にトイレとシャワールームが備え付けられており、その点だけでも高級宿屋である証だった。


 宿屋を取った俺達は一路、主神教の支部へと向かった。

 主神教は大陸全土に広がっている世界を構築したとされる唯一神、主神を崇め奉る宗教で、聖都はその総本山になる。

 大陸全土に渡ると言うだけあって、各地の街規模には必ず神殿や教会を設けられていた。

 ヌベラの街にも大きくは無いが古ぼけた教会があった。

 今回はここヌベラの教会に緑鳥に報告を上げたヌヌスの聖女が赴いているとの事で、緑鳥から教会を訪ねるように言われていたのだ。


 教会の中に入るとが主神を模した銅像が壁際に置かれ、30人は入れそうな礼拝堂が設けられていた。

 そんな教会の奥に聖女らしき僧侶が1人、設えられたベンチに座り主神への祈りを捧げていた。

「すいませーん。貴方が聖王から言われたヌヌスの聖女ですか?」

 白狐が声をかけた。

 すると祈りの姿勢を取っていた僧侶が起ち上がる。格好は如何にも僧侶らしく、法衣を身に纏い、頭にはミトラと呼ばれる帽子を被っていた。

「はじめまして。遠いところをはるばるお越し頂きありがとうございます。わたくし、ヌヌスの聖女、マリアベイル申します。今はヌベラの僧侶は外出しておりますので、わたくしだけになります。」

「マリアベイルさんですね。私は白狐と言います。こちらが黒猫さんと紫鬼さんです。」

 白狐に紹介されて俺と紫鬼は軽く会釈をする。

「つかぬ事をお聞きしますが僧侶と言われると聖者や聖女とは異なるのですか?」

「はい。僧侶は聖術を使うことは出来ませんが神に仕える者を指します。このような小さな街では聖者や聖女は派遣されておらず、聖術の使えない僧侶が教会を御守りしている次第でございます。」

「なるほど。聖術が使えるか否かで呼び名が変わるんですね。」

 納得顔の白狐。

「はい。では僧侶も不在な事ですし、早速邪神教についてお話させて頂きます。」


 マリアベイルの話では緑鳥から聞いた通り、世界各地からここヌベラの街に邪神教徒達が集まっており、何やら企んでいる様子である事、さらにはその邪神教の集まる集合場所までの情報があった。

「よく集合場所まで特定出来たな?」

 俺は驚きつつも尋ねる。

「えぇ。最初はヌベラの僧侶が発見した邪神教徒特有の紋様の入ったバッチを付けた人々がとある家屋に続々と入っていく事から不信感を覚えたようです。その後、そちらの建物を観察しているととても数人では食べきれない程の食料を買い集めていたそうで、これは何かあると言うことで近場のヌヌスの神殿に一報が入りました。」

「とある家屋って事は民家なんですよね?そんなに大勢の人が入れるほどの大きさなんです?」

 白狐がもっともな質問をする。

「いえ、見た目はただの民家に過ぎません。しかし、調べていくうちに地下への階段を発見致しました。」

「潜入したんですか?!なんでそんな危ない事を?」

「聖王様へ報告する上で誤った情報をお伝えする訳には参りませんので。それにわたくし、昔取った杵柄で潜入には慣れておりますので。それで地下に降りるととても人の手で切り開いたとは思えないほどの広さの空洞があったのでございます。あれは天然の洞窟などを利用したものかと思われます。」

 一見ドコにでも居そうな聖女にしか見えないが昔は何か他の仕事をしていたらしい。しかも潜入に慣れてるって事は盗賊や暗殺者の可能性が高い。が、ここは大人の対応でスルーした。

「なるほど。地下に巨大な空洞ですか。でその邪神教徒達が集まって何を企んでいるのかも分かってたりするんです?」

「えぇ。潜入した際にハッキリと聴きました。邪神が復活した今、まさに世界は1度邪神によって壊されるべきだと。その先兵たる甲蟲人と対峙している主神教、及びそれに与する他の神徒を名乗る者達に天の裁きを、とかなんとか。」

「なるほど。狙いは俺達神徒の方か。聖都を狙うのはあくまで俺達がいるからってことなんだな?」

 俺の質問にマリアベイルは頷いて言う。

「はい。主神教をどうこうしようって言うよりは他の神の神徒を狙っているのかと。そのついでに主神教徒達の数を減らしたいと考えているようでございました。」

「それなら話は早いな。ワシらが直接赴き、相手をしてやったらよいではないか。」

 紫鬼が平然と言い放つ。

「しかし、敵の数も未確認でございます。地下にはどうやって運んだのか沢山の家屋もありました。正面から突破と言うのも中々に難しいのでは無いかと愚考致します。」

「なぁに。ワシらはそこいらの傭兵とは違うからのぅ。敵が何人居ようが普通の人間相手ならどんと来いじゃ。な?白狐。」

「そうですね。烏合の衆ならなんとでもなるかと。ただ我々王についての情報も持っている上で、我々を狙おうと言うのは何かしら策があるのかもしれませんね。」

「どんな策があろうと甲蟲人ほど手強くはなかろうよ。なぁ、クロよ。」

 紫鬼が俺に話を振ってきた。

「まぁ、そうだな。ただの人が甲蟲人の将ほどの脅威にはならないだろうな。」

 マリアベイルが言う。

「そうでございますか。であれば本日はもう遅くなりますゆえ、明日の朝にでも件の家屋にご案内致します。本日は旅のお疲れを癒して下さいませ。」

 と言うことで俺達は一端宿屋に戻ることとなった。


 決戦は明日だな。と言うことで今日は早く寝る事にしたのだった。


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