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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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467話 ヌイカルド連邦国12

 その後も狼型のワイルドウルフや猪型のワイルドボアを中心に魔獣達に遭遇しては馬から降りて討伐するを繰り返し、4日が経った。

 野営にも慣れたものであっという間にテントを張り、俺が影収納からマットレスを取りだせば寝床の完成だ。

 テント横では紫鬼と白狐が焚き火の準備をしてくるているので、俺は夕飯の支度をする。

 野営中と言う事もあり大した料理は作れないが、この日はあの魔魚、ハンマーヘッドシイラの切り身で魚のフライを揚げた。

「お、今日は魚か。珍しいのぅ。」

 調理中に紫鬼が俺の手元を覗き込み言うと白狐も

「魚料理ですか。クロさんの魚料理は初めてじゃないですかね?」

 と言ってくる。

「この前ファイブラで倒した魔魚って奴だ。白身魚みたいな味がするらしいからな。フライにする。」

「白身魚のフライですか。」

「白身魚って言っても切り身は淡いピンク色だけどな。もう出来るからもうちょい待っててくれ。」

 切り身にしたシイラにショウユ、ミリン、酒、ショウガまぶして水気を切ったら小麦粉、卵、パン粉の順に衣を付けて揚げていく。

 この時揚げる油にごま油を使った一工夫も忘れない。


 こうして作った魚のフライに白米、簡単に作ったワカメのスープで夕飯にした。

 ハンマーヘッドシイラの肉は堅牢な鱗に覆われていた事が嘘みたいにフワフワで食べやすい味だった。2人からも好評だった為、聖都に戻ったら皆にも食わしてやろうと思う。

 就寝時間が近づき、また見張り番を立てて交代で眠ろうとしていた時のこと。

 北の森がザワザワと騒がしくなり始めた。

 地上からではなく木の上からの訪問者。グレートエイプだ。

 そう言えば以前この辺りを通った時にも襲われたのを思い出した。

 ただ数は少なく10匹程度。

 これなら王化せずとも倒せそうだ。


 グレートエイプは手に棍棒を持ち、キャッキャッと威嚇を繰り返す。

 木に縛り付けておいた馬達もその声を聞いて暴れ出す。動物に取っては危機感を覚える鳴き声なのだろう。

 グレートエイプは木の上から何かを投げてきた。咄嗟に避けたがどうやら木になっていた木の実を剥いで投げ付けてきているようだ。

 こちらは木の上にいられたら手が出ない。

「飛剣!飛剣!!」

 白狐が飛ぶ斬撃を放ち、木の上のグレートエイプを落としていく。

 地に降りたらこっちのものだ。

 俺と紫鬼は降り立ったグレートエイプ目掛けて走り出す。

 グレートエイプも手にした棍棒を振り上げて迎撃態勢だ。


 振り下ろされる棍棒を左手に持ったナイフで受け流すと首筋を一閃。少し浅かったようで軽く血を流させるに留まる。

 傷を受けて逆上したグレートエイプが棍棒を振り回す。

 これを左右のナイフで去なしながら反撃のチャンスを窺う。

 大振りの一撃を放ってくるグレートエイプ。それをヒラリと躱して2度目の首筋への一撃を放つ。

 今度はナイフの中程まで首に入り込み、鮮血を散らせる。

 あとは放っておいても出血死するだろう。次のグレートエイプに狙いを定めて躍りかかる。


 ちらりと見やれば紫鬼の方も棍棒の一撃を腕で弾き返しながら心臓部に向かって正拳突きを繰り出す。心臓部に急激な打撃を受けたグレートエイプがその動きを止める。その隙にハイキックをこめかみに当てて昏倒させていく。

 普段は拳で戦う事の多い紫鬼だが蹴りもいけるようだ。打撃全般いけるようで、次のグレートエイプには肘打ちと跳び膝蹴りで倒していく。

 大方木の上から落とし終えた白狐も加わりグレートエイプの殲滅戦が始まる。

 白狐は相変わらずの刀捌きで一刀の元にグレートエイプを斬り伏せる。

 あっという間に10匹のグレートエイプは屍と化した。

 猿の脳みそは高級食材として売れるので、首を切り落として影収納に収めるのも忘れない。

 それにしても一部の人種しか、食べない猿の脳みそはどんな味がするのだろう。ゲテモノの類いなので食べたことはないが気にはなる。ヌベラの街で出す料理屋にでも行ったら1度くらいは挑戦してみてもいいかもしれないな。


 グレートエイプを退治してからは魔物の襲撃もなく、交代して眠りについた。

 やはり野営中でもマットレスがあれば随分と快適に過ごせる。

 デントの外で炊かれる焚き火の淡い光の中、眠りにつくのであった。


 翌日からは猿祭りだった。

 グレートエイプ、その上位種で一回り身体の大きいエノーマスエイプなどがひっきりなしに襲いかかってきた。

 中でも辟易したのは、木の上から投げられる糞である。手近に木の実などが無い場合、糞を投げて寄越すのだ。当たったらたまったもんじゃない。白狐が飛剣で次々と地上へと落下させて俺と紫鬼で倒していくのを繰り返した。

 エノーマスエイプは身体が大きいだけでなく、傭兵から奪ったとみられる鎧まで装備し、手にはグレートアックスを握っていた。

 群れのボス的存在だったのは間違いなく、白狐と数合の斬り合いの末、胸元を鎧事斬られて息絶えた。

 ボスザルを失った事で他のグレートエイプ達に混乱が起きて数匹は森の中へと逃げ帰っていった。

 この辺りは猿型の魔獣が多いとは言えさすがに多すぎた。

 だが南北に広がる森を抜けた事でもう猿の襲撃はないと見て良いだろう。


 ヌベラの街まではあと1日程度の距離である。最後まで気を引き締めて移動しようと思う。


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