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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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466話 ドワーフ王国19

 傭兵ギルドからの依頼を消化しつつ3日が経過した為、銀狼と翠鷹は『鋼の四肢』を尋ねた。

 店先には背の低い髭面のドワーフが立っており2人を迎えた。

「おぉ。そろそろ来る頃だと思ったんだぁ。出来とるよぉ。義手もぉ。」

「そうか。茶牛は?」

 奥を振り返ると店主が言う。

「ほぼ3徹だったみたいでなぁ。今は奥の工房で寝とるんよぉ。起こすのも可哀想だから暫くは寝かしてやってくれろぉ。」

「そうか。3日間も徹夜して作ってくれたのか。悪かったな。」

「なぁにぃ。あれはアイツの癖みたいなもんだぁ。集中すると寝ることすら忘れちまうんだぁ。」

 確かに耳を澄ませば奥の工房の方からイビキが聞こえてくる。相当疲れているのだろう。

「そう言う事ならオレ達はまたギルドの依頼でもこなしながら時間を潰そう。起きたらオレ達の泊まっている宿に伝言を残すように茶牛には言っておいてくれるか?」

 店主は頷きながら言う。

「分かっただぁよぉ。新しい義手の性能確認も忘れずになぁ。おっとぉ、忘れる前に先に会計してもいいかぁ?」

「あぁ。いくらだ?」

「工賃は茶牛の持ち込みだから抜くとして、材料費だけで、4億5070万リラになるな。端数は切り捨てとるからなぁ。」

「4億?!」

 度肝を抜かれる翠鷹に対して銀狼は平然と貨幣を取り出す。

「じゃあ、白金貨4枚に大金貨5枚、それと金貨1枚で頼む。」

「はいよぉ。大銀貨3枚のお返しなぁ。」

 会計を終えて『鋼の四肢』を後にした2人。


「工賃抜きで4億とかオリハルコン言うのはごっつお高いんやねぇ。それでもパッと会計出来るとかアンタどんだけ金持ちなん?」

「ん?いや、オレの金じゃないぞ?黒猫に持たされた分だ。10億リラほど渡されてたから半分で済んで良かったな。」

「な?!10億リラ?前々から思っとったんやけど、黒猫はんて何者なん?ワンズではツリーハウスに住んどったようやし、そこまでお金持ちの家の者とは思えんのやけど?」

 銀狼は黒猫が盗賊をやっている事を新たに加わった面々には伝えていなかった事を思いだした。

 だが、ここで実は黒猫は盗賊で悪徳領主やら悪徳商家から金を盗んで活動資金に充てている、と素直に答えて良いものか悩んだ。

「それにあの料理の腕を考えたらどこぞのお貴族様って感じでもないしなぁ。あれは貴族の趣味レベルちゃう。店が開けるレベルや。ようわからん金の出所と言い、料理の腕と言い、只者やないやろ?」

 矢継ぎ早に問われて暫し黙り込む銀狼。

 それを見た翠鷹は不思議そうに問う。

「なんや、言いにくい事情でもあるんかいな?」

「そー、そうだな。アイツの家庭の事情は複雑でな。あまり言い触らすようなものでもないかな。どうしても気になるようなら直接アイツに聞いてくれ。」

「複雑なんや。ほな、そっとしとくのが吉やな。」

 釈然とはしないものの、触らぬ神に祟りなしと余計なことに口を挟むのをやめた翠鷹であった。


 その後2人は傭兵ギルドでギガントワームの討伐依頼を受けた。

 最近掘り出した新たな鉱山に出没したらしく、そいつのせいで作業が止まっており、一刻も早く解決して欲しい徒の依頼であった。

 2人は早速件の鉱山へと向かった。


 到着した鉱山はまだ掘り出して間もなく100mほど掘られた洞窟があるばかり。

 高さは20mもあろうかと言う洞窟だが、特に入り組んだつくりでもない為、案内もつけずに洞窟を進む2人。

 ちょうど中程の50mほどの地点に来ると地面に揺れを感じ始めた。揺れは段々と大きくなっていき、立っているのもやっとと言った状況になった時、地中からその巨体が現れた。

 その巨大な胴回りは7mほどもあり、天井に触れる程体を地中から出していても尚も地中に体が埋まっていた。

 少なくても20m以上の個体である。

 銀狼は双剣を、翠鷹は細剣を構える。

 そんな2人に対して数え切れないほどの牙の生えた口を大きくて開き、突進してくるギガントワーム。

 2人は大きく跳躍してこれを避けるが、ギガントワームは地面に頭を突っ込み地中へと潜ろうとする。

「逃がすかいな!喰らえ!コンティニュアス・スラスティング!」

 翠鷹が細剣で高速連続突きを繰り出す。

 細剣でありながら高速で突き出される突きは見る見るうちにギガントワームの肉を削り取り、緑色の体液を撒き散らす。

「ギャオギャオ!」

 ギガントワームは体をうねらせ、緑色の体液を飛び散らせる。

 さらに続く翠鷹の高速突きがギガントワームの肉を削る。

 これを嫌がったギガントワームは体をくねらせながら地中へと逃げていく。

「双狼刃!」

 銀狼も双剣を振るいギガントワームの肉を削ぎ緑色の体液を飛び散らせる。

 ギガントワームはそのまま地中へ潜って行くが残された体はまだ地上にあり、尻尾部分に至ってはまど地中にある状態である。

 目算では体長20mにはなろうか。体が長いということはその分、的が広いと言うことであり

「コンティニュアス・スラスティング!」

 翠鷹の細剣が肉を削り取り体液を飛び散らさせる。

「双狼刃!」

 銀狼の双剣が肉を断血、緑色の体液を飛び散らす。

 ただ直径7mにもなる巨体は一刀のもとに切断には至らない為、あちらこちらに切り傷を作るばかりである。


 ギガントワームが再び地中から姿を現す。今度は銀狼の立つ真下からだ。

 銀狼は咄嗟に跳び下がり巨大な口から逃れる。

「コンティニュアス・スラスティング!」

「双狼刃!」

 2人の技がギガントワームを傷付ける度にギガントワームが悶え鳴き声を上げ、緑色の体液を飛び散らせる。

「ギョワギョワ!」

「ギャオギャオ!」

「ギョエギョエ!」

 戦闘開始から2時間余り、ギガントワームはその動きを止めることとなった。

「どうです?新しい義手の具合は?」

「うん。悪くない。より繊細な力の入れ具合も出来て最高傑作だな。」

「ほな、次は壊さんようにせんとね。」

「だな。」

 2人は巨大なギガントワームの死骸はそのままにギルドへの討伐達成を報告しに行った。

 宿に戻っても茶牛からの伝言はない。

 結局丸2日間、茶牛は寝込んでいたらしい。


 ドワーフ王国に来てから6日目にして一行は聖都へと戻る事になったのであった。


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