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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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461話 甲蟲人:蟻17

 法王の魔術と魔王の魔法によりその数を大きく減らした甲蟲人:蟻達。

 その後の精霊王の指揮も的確で集まった兵士達や傭兵達の間を抜けて街まで届かせること無く、押さえ込んでいた。

 若干防御ラインを押し込まれていた南北も獣王達が向かった事で今は盛り返し、防御ラインは横一直線になっていた。

「火炎矢!火炎矢!!」

 炎の矢を射続ける精霊王。その矢に射られた甲蟲人:蟻達は一気に身体を燃え上がらせてその場に崩れゆく。

 近付いてきた甲蟲人:蟻は龍王の振るう三叉の槍に首や胴体部分の関節を狙われて切断されていく。

「出来の数は随分減ったぞ!あと一息だ!皆頑張ってくれ!」

 精霊王が声を張り上げて周りの兵士や傭兵達を鼓舞する。


 一方、敵後方でも敵将を破った破王達が甲蟲人:蟻の殲滅戦へと移りその数を減らしていく。

 だが何よりも負傷して後方に下がった兵士や傭兵達がすぐさま回復して戦線に復帰してきたのが大きい。

 そこは見えないところで聖王が聖術を駆使して負傷者達を回復させていたのが戦況を大きく左右させていた。


 破王達が敵将を討ってから1時間余りで敵の残存兵は氷付けにされた甲蟲人:蟻達だけとなった。

 これも法王の魔術のおかげである。

 足元を凍らされて身動き出来ない者、中には全身を凍らされている者もいた。

 精霊王は的確に指示を飛ばして残存兵達を次々と屠っていく。

 先端が開かれてから3時間余りで敵の姿は完全に無くなった。

 こうして第5回目となる甲蟲人侵攻は幕を閉じたのであった。


 王化を解いた王たちは前線となっていた位置に集まっていた。

 皆の視線の先には真っ二つとなった碧鰐の死骸があった。

「これは、奥さんや娘さんには見せられたものではないな。」

 金獅子が呟く。

「せやな。遺体はこちらで処分して、遺灰だけ返してやるのがええな。」

 翠鷹が続ける。

「なら碧鰐の形見として左手薬指の結婚指輪は外しておこう。遺灰と一緒に奥さんに渡そう。」

 銀狼が遺体の指から指輪を外す。

「これもだな。」

 右手人差し指から王玉のはまった指輪も外していく。

「王玉のはまった指輪は俺様が預かる。生前2人で話し合っていたのだ。どちらかが死んだ際には残った方が王玉を預かると。」

「そんな事を話していたのか。」

 黒猫が尋ねる。

「あぁ。2人して尻派だと言うことで意気投合してな。」

「あぁ。あの時か。」

「奥さんや娘さんにも俺様から話そう。碧鰐を仲間に引き入れたのは俺様だからな。俺様が説明するべきだろう。」

「ほら。金獅子の兄貴。受け取ってくれ。」

 金獅子が言って銀狼から2つの指輪を受け取った。


「ほな、遺体を燃やすで。」

 皆に距離を取らせてから朱鮫が魔術を発動させる。

「魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え。ファイアボール。」

 遺体へと点火された炎は段々とその勢いを増して碧鰐の遺体を焼き尽くした。

 残ったのは僅かな骨。頭蓋の骨は見事なまでに真っ二つに裂かれていた。

 黒猫が影収納から骨壺を取りだす。

「こう言う事もあるかと思ってな。前に買っておいたんだ。」

 黒猫達は前の魔族領侵攻の際にも数々の仲間との別れを経験していた。その為、甲蟲人侵攻が起こる前から骨壺は人数分用意されていた。

「骨は儂が砕こうかぁ。」

 茶牛が前に出て残った骨を砕いていく。

 黒猫と白狐、翠鷹に緑鳥らが砕かれた骨を拾い骨壺へと収めていく。

 こうして碧鰐の弔いを済ませた一行はサーズダルへと戻っていく。

 その足取りは敵の軍勢を打ち負かした事よりも仲間を1人失った事の方が大きく、重いものとなった。


 サーズダルの西門前にはセカンダルからの支援兵達の姿が集まっていた。

「皆さん、この度はここサーズダルの危機を救って頂きありがとうございました。セカンダルの危機には必ずサーズダルも駆けつけましょう。約束します。傭兵の皆様には僅かながらの褒賞金も用意してございます。こちらはセカンダルの傭兵ギルドを通して受け取りをお願いします。」

 西門前ではサーズダルの領主テトラ・マルセイユが声を張り上げて集まったセカンダルの兵士や傭兵に向けて言葉をかけていた。

「サーズダルの兵士、傭兵の皆さんもよく、街を守って下さいました。領主として改めてお礼を申し上げます。傭兵の皆さんには褒賞金を傭兵ギルドから支給致します。必ず傭兵ギルドで受け取りをお願いします。」

 遅れて合流した紺馬達へも声をかけてくる。

「神徒の皆さんもこの度は我が街を守って頂きありがとうございました。僅かではありますが褒賞金を用意させて頂いております。」

「褒賞金?それは不要だ。他の兵士や傭兵達にでもくれてやれ。ワタシ達は世界の危機に対して対応しているだけだ。他の街からもお礼などは受け取っていないのでな。」

 紺馬が返すとテトラは腰を90度曲げて頭を下げる。

「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません。」

「気にするな。それよりも甲蟲人侵攻はあと7回も残っている。またサーズダルが狙われないとも限らない。兵士や傭兵達にもその事を通達して次の侵攻に備えておいてくれ。」

 それだけ言うと紺馬達は街へと入っていく。

 残されたのは藍鷲のみ。

「ではセカンダルからお越しの皆さんをセカンダルまでお返しします。今ゲートを開くので速やかに移動をお願いします。」


 こうして第5回目となる甲蟲人侵攻は碧鰐の死という大きな損失を出しながらも街への被害はなく、完了したのであった。


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