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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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459話 甲蟲人:蠍4

 蠍型甲蟲人の猛攻は止まらない。

「そりゃそりゃ!」

 ハサミを使い銀狼の一撃を受けるとシミターで胴を薙ぎ払う。

 胴を斬られた事で蹈鞴を踏む銀狼。

 蠍型甲蟲人との距離は2mほど空いただろうか。しかし、銀狼はその場で右手の剣を振るった。

「伸びろ!」

 すると右手の剣の刃が伸びて蠍型甲蟲人を袈裟斬りにする。距離があった為、蠍型甲蟲人も油断したようだ。

 そう言えば銀狼が持つ片方の剣は魔剣だったな。確かその刃が伸びるだけの性能だったが、こう言う時には役に立つようだ。

「なんや?!刃が伸びた?」

 しかし、すぐさまこれに適応した蠍型甲蟲人。シミターで伸びた銀狼の剣を跳ね上げるとすぐさま近づきハサミによる打撃を腹部に撃ち込む。

 痛打を受けて吹き飛ばされる銀狼。

 その間にも白狐と茶牛が躍りかかる。

 白狐の白刃・白百合をハサミとシミターで受ける蠍型甲蟲人。背後の茶牛には尻尾で牽制する。

 と、鋭い尻尾の突きを胸部に受けてしまった茶牛。毒は大丈夫か?

 見ればきちんと胸部は王鎧に守られていた。毒を受けた様子も無い。

 その一撃を受けながらも前進して尻尾をバトルハンマーでかちあげる茶牛。背中が空いたところにバトルハンマーをフルスイング。前に突っ伏す蠍型甲蟲人。だがすぐさま尻尾を戻して茶牛を尻尾で強かに打ち付ける。

 吹き飛ばされた茶牛。なかなか起ち上がらない。負傷したのだろうか。

 だがそちらを気にしている余裕はない。

 白狐が斬りかかる中、俺と銀狼もその中に飛び込む。

 銀狼と俺とでシミターとハサミを跳ね上げた。今だ!


「はぁぁぁあ!抜刀術・飛光一閃!」

 高速で振り抜かれた刀により放たれた一閃を戻したシミターで受け止める蠍型甲蟲人。

「抜刀術・閃光二閃!」

 白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げ、振り下ろすと左手に持ったシミターを跳ね上げ、袈裟斬りに斬り裂く。

「抜刀術・発光三閃!」

 その剣閃が通った先では蠍型甲蟲人の胸部に3本の剣閃が走る。

「抜刀術・残光四閃!」

 一気に4度振るわれた刀により右腕のハサミが斬り飛ばされる。

「抜刀術・無光五閃!」

 5度振るわれた刀が蠍型甲蟲人の腹部に5本の切り傷を付ける。

 が、流石に外骨格は硬く、剣閃が走った後も切り傷を作る程度で切断には至らない。だが右腕のハサミが切り飛ばされたのは大きい。

 俺が作った傷跡が、切断に貢献したな。


 ハサミを失い、後方に跳んで距離を取った蠍型甲蟲人。

 これで相手の武器はシミターと尻尾の針だけになった。

 だがこちらも無傷とはいかない。跳ね飛ばされた茶牛は未だ起ち上がる事が出来ずにいる。

 茶牛の状態がここからだと見えないが負傷したのだろうか。

 ひとまずは3人で戦うほかない。

「よくもワテのハサミを!よくも!!」

 激昂する蠍型甲蟲人。

 見る見るうちに尻尾の長さが伸びていく。最初から3mほどはあった尻尾が5mほどに伸びた。

「ここからが本気やで!アサシンズスタブ!」

 伸びた尻尾が俺に向けて迫ってきた。


 迫ってくる蠍型甲蟲人の尻尾。スローモンションのように見える。よく見れば先端に向かって太くなっていき、針も先程までよりも長く30cmほどはありそうな凶悪な様相だ。

 そんな針が俺の胸元へと伸びてくる。

「危ない!」

 間に割り込んだのは銀狼。右腕を大きく伸ばし俺を横へと押し出す。

 ザシュッ

 と音がする。見やれば銀狼の右腕前腕に王鎧をも突き破り針が刺さり貫通していた。

「なにボケッとしていやがる。集中しろ!」

 左腕で尻尾を掴み右腕前腕に刺さった針を抜く銀狼。

「あぁ。すまない。唐突だったもんで。」

「なんや?!なしてワレにはワテの毒が効かんのん?確かに腕に刺さったやろがい?」

 やっぱり尻尾の針からは毒が出ていたらしい。

 銀狼は自らの右腕を掲げてみせる。

「残念だったな。オレの右腕は義手なんでな。毒も効かないさ。」

「きー!義手やとぉー?!そんなん狡いわ!」

「狡くなんてないさ。これもオレの身体の一部だからな。む?」

「どうした?」

 訝しげな銀狼に尋ねる。

「胴やら今の攻撃で薬指と小指の動きが悪くなったようだ。だが問題ない。残る三指で剣は握れる。」

「ごめんな。」

「謝るぐらいなら最初からシャキッとしろ。」

「あぁ。もう大丈夫だ。」

 銀狼と共に両手の武器を構える。


 俺達がそんなやり取りをしている間にも白狐は果敢に攻め込むが、なんと白狐の鋭い斬り込みにも負けず蠍型甲蟲人は白狐を袈裟斬りにして腹部に前蹴りを放ち、大きく後退させる。


 その頃には吹き飛ばされていた茶牛も戻ってきた。再び蠍型甲蟲人の背後からバトルハンマーで殴り掛かる。

「せいっ!」

 唐突に後方からの打撃を受けて蹈鞴を踏む蠍型甲蟲人。その隙に俺と銀狼が斬りかかる。

「てや!」

「おりゃ!」

 幾度となく斬りかかるが左手にしたシミターと尻尾に阻まれて有効打は与えられない。

 それどころか

「これでどうや!」

 その場で1回転して尻尾を振り回す蠍型甲蟲人に俺と銀狼は後退させられる。

 蠍型甲蟲人の正面には俺と銀狼。左手側には白狐。後方には茶牛が立つ。

 暫しの沈黙。

 やはりこう言う時に最初に動いたのは白狐だった。


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