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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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454話 甲蟲人:蠍1

「喰らえ!飛剣!」

 先制攻撃は白狐。まだ敵将の蠍型甲蟲人まで距離がある中、飛ぶ斬撃を放つ。

 対する蠍型甲蟲人は体調2m超えの巨大に3m程はありそうな尻尾を持ち、右腕は大きなハサミとなっており、左手にはシミターと呼ばれる刀身が湾曲した片刃剣を所持している。

 飛ぶ斬撃が目の前に来た時に初めて蠍型甲蟲人が動いた。シミターを振り上げ無造作に振り下ろす。たったそれだけで白狐の放った飛ぶ斬撃は霧散してしまった。

 膂力もかなりありそうだ。


 斬撃に遅れて白狐が蠍型甲蟲人のそばまでやって来た。

 といきなり

「抜刀術・飛光一閃!」

 白狐の手により高速で振り抜かれた刀により放たれた一閃が蠍型甲蟲人を襲う。蠍型甲蟲人はシミターを掲げてこれを受けた。

「まだまだ!抜刀術・閃光二閃!」

 抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げ、振り下ろす白狐。蠍型甲蟲人はシミターでこれを弾く。

「もう一つオマケに!抜刀術・発光三閃!」

 その剣閃が通った先では対象を3度斬りつける。しかしこれも蠍型甲蟲人には見えているようで、シミターを振り回して全ての斬撃を弾いた。

「なかなかやりますね。でも今日の私は絶好調です。抜刀術・残光四閃!」

 一気に4度振るわれた刀が蠍型甲蟲人を襲う。

 蠍型甲蟲人はシミターで3度ほど斬撃を防ぐと右腕のハサミでもって最後の斬撃を挟み受け止める。

「唐突にとんだご挨拶やな。あんさんらが邪神様に楯突く神々の使者かいな。」

 蠍型甲蟲人はまるで朱鮫のような方言で話す。

「会話できるんですね。そうです。私達が神々から選ばれた王ですよ!」

 白狐は蠍型甲蟲人の右腕を蹴り上げ、ハサミが緩んだところを白刃・白百合を引き抜く。


「お見せしましょう。神々の力を!王化!破王!!」

 白狐が叫ぶと右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ破王の姿となった。

 遅れて蠍型甲蟲人の前に集まった俺と銀狼、茶牛も王化する。

「白狐。先走り過ぎだ。もっとこちらに合わせろ。王化!牙王!」

 銀狼が声を上げると、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると狼を象ったフルフェイスの兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王の姿となる。

「王化。地王。」

 茶牛が言うなり右手小指にしたリングにはまった茶色の石から、茶色の煙が立ち上り茶牛の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は茶牛の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく牛を思わせる茶色のフルフェイスの兜と、同じく茶色の全身鎧に身を包んだ地王の姿となる。

「王化!夜王!!」

 最後に俺も叫ぶと左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となり、影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。

 いつも通り左手に持つ黒刃・左月は逆手、右手に持つ黒刃・右月は順手で握り込む。


 俺達の姿を見て蠍型甲蟲人が言う。

「ほぅ。それが神々の力でっか。随分と大層な鎧を身に着けましたなぁ。せやけど、そんな鎧、ワテのハサミでさっくり切り裂いてやりますわ。」

 蠍型甲蟲人が構えをとった。右腕のハサミを前に、やや斜めに身体の向きを変え、左手のシミターを身体で隠すように構える。

 尻尾は上部に上がり、針をこちらに向けている。

「行くぞ!」

 銀狼の掛け声で4人が動き出す。

 双剣を振るい蠍型甲蟲人の右腕のハサミを牽制する銀狼。

 そこに横から茶牛がバトルハンマーを振り抜き、蠍型甲蟲人の右腕を強かに打ち付ける。

 軽く背中を見せる形になった蠍型甲蟲人の右腕の付け根を狙って俺は黒刃・右月を突き入れる。しかし、横にずれた尻尾によりこれは防がれる。

 蠍型甲蟲人が向いた方面からは白狐が白刃・白百合を振り抜く。

 しかしこれもシミターにより防がれる。

 次の瞬間。蠍型甲蟲人はシミターを片手に1回転。俺達は素早く後方に下がりこれを避けた。


「4対1言うんはちょっち分が悪いで。せやけどここは気張らんとな!」

 右手のハサミで茶牛を狙い、左手のシミターでは銀狼を狙って突きを放つ蠍型甲蟲人。

 茶牛はハサミをバトルハンマーで打っ叩きかちあげる。

 銀狼も双剣を交差させて突きを受けた。

 そんな銀狼へと尻尾の針が迫る。

「銀狼、上だ!」

 俺は咄嗟に蠍型甲蟲人と銀狼の間に入り、尻尾の針を弾く。

「ちっ!今のは邪魔されんかったら入っとったで。」

 茶牛にかち上げられた右腕のハサミで俺を狙ってくる蠍型甲蟲人。

 しかし、その側面へ再び茶牛がバトルハンマーを振り抜き、強打を与える。

 バランスを崩した蠍型甲蟲人のハサミは俺の顔面ギリギリを通過する。

 そんなハサミの手首を狙って白狐が白刃・白百合を振り下ろす。

「危ないで!」

 シミターでもってこれを受けた蠍型甲蟲人。大きく後退して、距離を取る。

「数の利、言うんはほんまに困ったもんやで。」

 蠍型甲蟲人が呟くように言う。

 距離にして4mほどは離れただろうか。1度仕切り直しだ。


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