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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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451話 甲蟲人:蟻15

 俺達がサーズダルの西門へとやってくると、見た目はまだ20代と思しきドレス姿の女が声を掛けてきた。

「神徒の皆さんですね。私はここサーズダルの領主、テトラ・マルセイユと申します。皆さんの事は紺馬さんから聞いています。今紺馬さんは兵士と傭兵達を引き連れて西に向かわれました。皆さんも西に向かって頂けますか?」

 とのことである。

「分かりました。」

 白狐が代表して返答して街を出た。


 街を出て30分もした頃、兵士達と傭兵達の後ろ姿を発見した。

 横一列に並び甲蟲人と戦っているようだ。

 さらに近付くと中央付近で戦う紺馬の姿も見えた。

 そちらに近付いていく。

「紺馬、大丈夫か?」

 率先して蒼龍が声をかける。

「お、蒼龍。みんなも来たか。ん?まだ聖王は来ないか?すでに負傷者も出ているようだが。」

「緑鳥さんはまだ他のメンツの連絡を待ってます。先に集まった私達だけこちらに来ました。」

「そうか。助かる。敵の数は一万程と見た。今はサーズダルの兵士達と傭兵達で先頭の蟻共と対峙している状態だ。敵将の姿はまだ見えない。」

「まずは蟻退治じゃな!」

「俺様達が来たからにはそう簡単に突破させんよ。」

 紺馬の一言に紫鬼と金獅子が答え、早速戦線に加わる。

 紺馬もまだ王化はしていない。

 出来る限り時間を稼ぎ、皆が集まってから王化して一気に攻める事にしていた。

 俺も戦線に加わる。

 蟻達は相変わらず外骨格が硬い。振り下ろされる長剣を左のナイフで受けて、肘関節を狙って右手のナイフを振るった。

「Gyishaaaa!」

 傷付けられた事に驚いたのか蟻が一歩下がる。

 空かさず近付き首元を狙って左のナイフを一閃。ちっ、避けられたか。

 長剣が振り下ろされる。俺は半身になってこれを避ける。そしてすぐさま反撃に出る。

 右のナイフで首元を突く。

「Gyaaaa!」

 あ、くそ。ナイフを噛まれた。三度振り下ろされる長剣。俺はカウンター気味に手首を狙って左のナイフを振るった。

 ゴギンッ

 長剣を持つ手首から先が吹き飛んだ。

「GyaGiiiii!」

 蟻が口を開けたことで右のナイフが自由になった。サッと首筋を一閃。今度は見事にはまり首を落とすことが出来た。

 ふぅ。王化してなくても蟻程度ならなんとかなるな。

 俺は次のターゲットを求めて前進する。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 黒猫達が前線に辿り着いた頃、サーズダルに残りのメンバー達も降り立っていた。

 紺馬の言った通り西側を目指して駆ける一同。西門に辿り着くとテトラ・マルセイユが一同を止める。

「貴方達は紺馬さんのお仲間ですよね?私はサーズダルの領主テトラ・マルセイユと申します。紺馬さんの話では皆さんの中にゲートなる魔術を使える方がいるとか?セカンダルへ増援の依頼をしているのです。どうか、そのゲートをセカンダルと繋いで頂けませんか?」

 これには困った藍鷲。セカンダルには1度行った事があるだけで目印となる旗を立ててはいなかったのだ。

「すみません。ゲートはドコにでも開ける訳ではないのです。我々も紺馬さんの借家に目印を立てて、そちらに向けてゲートを開いているので。残念ながらセカンダルには目印がありません。」

「そんな!どうにかなりませんか?すでにセカンダルでも兵士五千名と傭兵達を集めているはずなのです。」

「困りましたね。」

 思案顔の緑鳥が藍鷲に言う。

「藍鷲様。どうにかセカンダルへのゲート展開をここで試して頂けませんか?私達は先に前線に向かいます。敵の数も不明ですし、兵力はあるに超したことはありません。」

「どうにか、ですか。」

 そこに翠鷹が口を挟む。

「それならウチは藍鷲はんと一緒に残りますよって。前線に藍鷲はんだけで向かわせるのは危険です。ウチが責任持って送り届けますわ。」

「そうですね。翠鷹様。よろしくお願い致します。」

「わかりました。なんとかゲートを開いてみます。」

 藍鷲も頷く。


 こうして後続の7名は銀狼、朱鮫、碧鰐、茶牛、緑鳥と、翠鷹、藍鷲の二組に別れて行動する事になった。


 前線へと辿り着いた銀狼達が目にしたのは一万程の甲蟲人:蟻とそれに対抗するそろいの鎧を身に着けた兵士達と不揃いな思い思いの格好と装備を身に着けた傭兵達であった。

 今のところ前線の維持は出来ているように見える。しかしながら負傷者も出ているようで後方に送られてくる兵士や傭兵達の姿も見える。

「わたしは後方で負傷者の手当を行います。皆様は紺馬様達との合流を。」

「緑鳥殿1人にする訳にもいかんやろ。ワイが一緒に後方から魔術で支援するわ。」

「あぁ。朱鮫、頼んだ。オレ達は紺馬や白狐達を探そう。」

 緑鳥の提案に朱鮫が続け、銀狼の掛け声で残りメンバーは前線に駆けていく。

 緑鳥と朱鮫は後方に下がってきた負傷者の元へと急ぐ。


 負傷者の中には腕を千切られた者や足を食い千切られた者などの重傷者が多数いた。

「まずは軽症者の回復を。親愛なる聖神様、その庇護により目の前の傷つきし者達に癒しの奇跡を起こし給え。エリアヒーリング!」

 緑鳥の聖術が辺り一帯を包み込み、負傷者達を癒す。

「これは?聖術?」

「おぉ!聖女様が来て下さったぞ!」

「これでまだ戦える!」

 軽症者達は再び武器を持ち前線へと駆けていく。

「残りは重傷者ですね。」

 緑鳥はエリアヒーリングでも癒せなかった重傷者の元へと向かう。

「ほな、ワイはワイの仕事しまっせ!弾けろ!ファイアショット!」

 朱鮫は手にした様々な魔石の付いた杖を掲げると魔術を発動させる。

 杖の先から無数の火の玉が発生し、前線より若干奥の甲蟲人に降り注ぐ。

「まだまだ行くでぇ!」

 次々と放たれる魔術。それを見た黒猫達は朱鮫の到着を知ったのであった。


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