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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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451/545

450話 甲蟲人:襲来5

 甲蟲人の接近に気付いたのは依頼を終えてサーズダルへと戻ろうとする4人組の傭兵団だった。

「おい。あの黒いのなんだ?」

「ん?なんだろな。地平線を埋め尽くす程の何か、だな。」

「おい!あれって噂の甲蟲人じゃねーのか?」

「マジかよ。ホントに来たのか。こりゃ急いで街に伝えに行かねぇと!」

 4人組は慌ててサーズダルへと戻っていく。


 その一報を聞いたサーズダルの傭兵ギルドでは大忙しで傭兵達へのアナウンスが行われた。

「街の西側から大勢の甲蟲人の侵攻を発見しました!迎撃に出られる傭兵の皆さんは街の西門に集まって下さい。街の西門に集まって下さい。」

 普段は窓口に座っている受付嬢もカウンターの外に出て声を張り上げる。

「街の西側から甲蟲人の侵攻がありました!迎撃に出られる傭兵の皆さんは西門に集まって下さい!敵の距離は10km程。すぐに開戦します!西門に集まって下さい!」

 もう傭兵ギルドではプチパニックだ。

「甲蟲人だってよ。」

「俺らも出るか?」

「出なきゃ街がやられるだろ。」

「どんだけ集まるかな。」

「この街の傭兵全員でも数千ってところだろ。」

「勝てるのか?」

「負けたら終わりだ。勝つしかねぇよ。」

 ギルド内にいた傭兵達が口々に甲蟲人について話し合い、西門へと向かって行った。

 紺馬も傭兵ギルドに出向きその一報を聞いた。すぐさま緑鳥へと通信用水晶で連絡を取る。

「聖王、サーズダルに甲蟲人の侵攻ありだ。今は傭兵達が集まって西門で待機している。」

『次はサーズダルですか。わかりました。皆様にご連絡してすぐに向かえるように致します。』

「頼む。ワタシは先に戦場に出る。」

『はい。ご武運を。』

「あぁ。」

 短い通信を終えて紺馬は西門へと急いだ。


 紺馬が西門へと辿り着いた時にはすでに数百の傭兵達が集まっていた。

 西門には一報を聞きつけて兵士達を伴った女領主、テトラ・マルセイユの姿もあった。

「集まってくれた傭兵達にまずは謝辞を。サーズダルの兵士五千と傭兵達で甲蟲人を押さえる必要があります。増援は必ず来ます。まずは1時間、1時間敵の街への侵攻を押さえて下さい。」

 テトラ・マルセイユが大声で西門に集まる傭兵達に言う。

 実際にテトラの方でも近隣のセカンダルへと増援の依頼を出していた。しかし街の間隔は数日かかる距離であり、1時間程度、侵攻を防いだところで増援が到着するとは思えない。

 しかし、テトラは神徒である紺馬からゲートの魔法について聞いていた。神徒がこの地にやって来てさえくれれば、セカンダルからの増援も呼び寄せてくれるはずと信じていた。

 そんなテトラの元へと紺馬が人波を掻き分けながら近付く。

「領主殿。ワタシの方でも増援を呼んだ。まずは1時間、侵攻を受け止めて貰えれば他の王達もやって来るだろう。」

「わかりました。私はこれからも西門に集まる傭兵達に声掛けを行います。まずは紺馬さん、貴方がここにいる兵達と傭兵達に指示を出して頂けますか?」

「分かった。請け負った。」

 短い会話を交わして紺馬が集団の先頭に立つ。

「これより甲蟲人を迎え撃つ。敵との距離は10kmだと言う。恐らく街から5km程の距離でぶつかる事になるだろう。皆、準備はいいか?」

「「「「「おー!」」」」」

 集まった傭兵達から怒号があがる。

「サーズダルの兵士達も紺馬さんの指示に従って動いて下さい!神徒である紺馬さんに従って下さい。」

 テトラも声を張り上げる。

「では行くぞ!」

「「「「「おー!」」」」」

 紺馬の掛け声を受けて街の兵士五千と集まった1500名程度の傭兵達が街の西へと向かっていく。


 サーズダルから西に5km程の距離に到着した時、すでに甲蟲人の群れは目と鼻の先に来ていた。

「先兵は蟻型の甲蟲人だ!外骨格は硬い為、関節部などを狙って攻撃してくれ!1対1で戦おうなどとするなよ!集団戦だ!3、4人で1体倒すように心がけてくれ!敵が来るぞ!受けて立とうじゃないか!!」

「「「「「「おー!」」」」」」

 兵士達と傭兵達の声が重なる。

 こうして戦端は開かれたのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「サーズダルの西に甲蟲人の侵攻を確認したとの事です。銀狼様もモーリス周辺の異常を確認した上でご連絡下さい。」

『分かった。ミジャーノにも確認してこちらの異常がない事を確認してから連絡する。』

「お願い致します。」

 その頃聖都では、緑鳥から銀狼へと連絡を終えたところだった。

 通信用水晶がしきりに鳴り響く。

『緑鳥よ、金獅子だ。獣王国周辺に甲蟲人の姿はない。藍鷲にゲートを開いて貰ってくれ。』

「わかりました。藍鷲様。お願い致します。」

「はい!」

 こうしてゲートを通り聖都に金獅子もやって来た。集まったのは金獅子、紫鬼、黒猫、蒼龍の4名。

「先に私達はサーズダルに向かいましょう。藍鷲さん、お願いします。」

「はい!」

 白狐の言葉に藍鷲が答え、サーズダルへとゲートを開く。

「では、先に行きます。緑鳥さん達も皆が集まり次第、サーズダルへ。」

「畏まりました。」

 白狐の言葉に緑鳥が頷く。

「行きましょう。」

「おうよ。」

「うぃ。」

「うむ。」

「行くか!」

 白狐が言うと紫鬼、黒猫、蒼龍、金獅子が答え、共にゲートを潜っていった。

 残りは銀狼、朱鮫、碧鰐、翠鷹、茶牛である。

 緑鳥は藍鷲と共に5人からの連絡を待つのだった。


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