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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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441話 旧王国領ファイブラ4

月明かりの照らす街中を駆ける俺が次にやって来たのはファイブラの領主邸。

 3mはあろうかと言う高い壁も助走を付けて壁を蹴り登り、あっという間に敷地内に侵入。

 次は屋敷に1番近い太めの木に登って一気に3階建ての2階部分の屋根に登る。

 なんで金持ちって皆一様に屋敷の傍に木を生やしたがるのだろうか?これではこの木を登って侵入して下さいと言わんばかりではないか?まぁ、実際に侵入する立場の俺には有り難い事だが。もし屋敷の傍に木がなかったら、雨樋などを伝って1階ずつ登らねばならない為、時間がかかってたところだ。

 そんなこんなで2階の屋根に登った俺は3階部分の入りやすく逃げ出しやすい窓を探した。

 窓の外から室内を見るに、角部屋の衣装部屋っぽい部屋の窓が1番適してそうだ。

 俺はいつもの手順でチョチョイと窓の鍵を外して室内に侵入。ここまでは順調だ。


 今回領主邸に侵入した理由は2つ。悪徳領主と言われるほどの人物だ。現金も相当貯め込んでるに違いないので、そいつを頂く事。もう1つは闇ギルド『我獨の蛇』の首領ヨルムガルドが領主邸にいると思われるので討ち取る事。ついでに領主の首も獲るかはその時の状況次第だな。


 衣装部屋には金糸銀糸で作られたキラキラの衣装が所狭しと並べられている。これを着るような人物となれば程度も知れるというものだ。なんと言ってもセンスがない。

 壁に掛けられた帽子類にも金糸銀糸で模様が描かれ、成金な感じがプンプンしてくるな。

 俺はまずは財宝を狙う事にした。衣装部屋の3つ隣の部屋が窓もない一室となっており、1番怪しい。

 だから廊下に出てすぐに3つ隣の部屋の扉に移動する。

 案の定、扉には鍵がかかっていたが、こんなもの俺にかかればイチコロだ。

 ガチャリと音を立てて扉が開く。

 俺は静に室内に侵入、すると目の前にはこれまた金銀色とりどりのお宝がこれでもかと並べられていた。

 金をあしらった儀式用の剣。防御力の程は不明だが、金銀で装飾された甲冑一式に大盾。複雑な文様が描かれた2m以上もある壺に、黄金で出来た杯。

 右手の壁際にはソファが置かれ、室内を一望出来るようになっている。恐らくは領主が自らのコレクションを眺める為に設えられたソファだと思われる。

 その反対、左側の壁には大きな棚が置かれ、様々な魔道具らしき物が並べられていた。

 炎を模したような複雑な刃を持つ剣、腕に付けられるようにバンドの付いた時計らしき物、何に使うのかサッパリわからないような四角い箱。俺も初めて見る物ばかりだ。

 奥の壁には大きな宝箱が設えられており、中には銀貨、金貨、大金貨が詰まっていた。ぱっと見3億リラはありそうだな。

 俺は宝箱ごと影収納に収めると、部屋を抜け出した。


 部屋を抜け出した途端、巡回の警備兵に見つかってしまった。失敗したな。

「何者だ!賊が出たぞー!3階に賊が出たぞー!」

 叫ぶ警備兵。俺はすぐさま近付いて腹に一撃を加えて、蹲ったところを首筋に一撃、意識を刈り取った。

 だがもう叫ばれた後だったので、続々と警備兵が集まってくる。やっちまったな。

 雇い主が悪徳領主だからと言って警備兵も悪と決めつける訳には行かない。出来る限り命は奪わないようにしよう。


 室内だと言うのに直剣を抜き放ち、続々と襲いかかる警備兵。あれじゃ壁や天井に刃が届きそうだ。

 5人、いやもう1人上がってきたから6人だな。俺は冷静に数を数えつつ、直剣の斬撃を躱す。

「きぇー!」

 奇声を上げながら斬りかかってくる警備兵の斬撃を躱しながら腰に付けた鞘から二振りのナイフを抜刀、いつも通り右手は順手、左手は逆手にナイフを握り、続いて振り下ろされた直剣を左手のナイフで受け止める。

 命までは取らないつもりだが、多少傷付けるのは躊躇わない。右手に握ったナイフで直剣を持つ拳を切り裂き、直剣から手が離れたところを一気に距離を詰める。

「ぐふっ!」

 鳩尾への強烈な左ジャブをねじ込むと、くの字に曲がった身体をスルリと避けて背後に回り、首筋に右手のナイフの柄をぶち当てる。

「がっはっ!」

 意識を失った警備兵は床に突っ伏す。


 まずは1人。廊下は2人も横に並べばいっぱいになる幅のため、1人ずつしか迫ってこない。こりゃ楽でいい。

 続く警備兵は天井に剣が当たり上手く振り下ろせない模様。

「ていっ!あっ!」

 その頭部にハイキックをお見舞いすると意識を手放した警備兵は壁にもたれかかるように倒れる。

 次の警備兵は室内って辺りを考慮出来る奴のようで、突きを放ってくる。

「しっ!」

 が、これも左手のナイフで跳ね上げるとがら空きになったボディに強打を与え、顎を的確に狙ってフックを打ち噛ます。意識を失った警備兵はその場に崩れ落ちる。

 その崩れ落ちた警備兵のおかけで続く警備兵は俺に近付けずにいる。


 俺はゆっくりと警備兵を跨ぎ越えて4人目の警備兵へと近付く。

「ひー!」

 警備兵は悲鳴をあげながらも斬りかかってくる。だが逃げ腰なため、ヘロヘロな斬撃だ。

 俺は右手のナイフで弾くとこめかみに左フックを放ち、その意識を刈り取った。

 5人目と6人目は同時に斬りかかってきた。振り下ろされる2本の直剣を左右のナイフで弾き上げると、右側の警備兵に跳び膝蹴りを敢行。

「ぐはっ!」

 鳩尾に突き刺さった膝により、警備兵の肺から空気が漏れ出す。

 身体をくの字に折り曲げたところに顎に向けて右アッパー。警備兵は吹き飛んでいった。

 残るは1人。かち上げた直剣をどうにか戻した警備兵は突きを放ってくる。だが、遅い。俺は直剣を避けると背後に回り込み、首筋に左手に握るナイフの柄で強打を与え、意識を失わせた。


 階段近くまで前進していた俺。そんな俺に階下から声がかかる。

「ほぅ。6人の警備兵を軽くあしらうとは中々にやるな。だが運が悪い。おれがここにいるタイミングで盗みに入るとは。その命、貰い受ける。」

 見やれば1階から階段を登って1人の男がこちらに向かってきていた。

 身長2m強、ガッチリとした体型で手にはあの刃付きの鞭を持つ。

 こいつがヨルムガルドだろう。


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