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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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440話 旧王国領ファイブラ3

 2階で出会った1人でいた偉そうな奴に聞いた通り、3階の1番奥の部屋に財宝は隠されていた。隠すと言っても木箱に詰められていただけだが。

 部屋の中は雑多な物に溢れていた。木彫りの何かの神仏でも象ったような像が数体、大小様々なサイズで飾られていたり、何が良いのか分からない色とりどりな目がチカチカするような抽象画。ジャイアントベアの剥製に金銀で作られた儀式用の剣などなど。

 だが、俺はいつも通り金にしか用はない。

 木箱の中には見た限り大銀貨、銀貨、それに1番多いのは大銅貨が詰まっていた。それでも別の小さな装飾の施されたハコに金貨も数十枚はあり、全部で大金貨数枚分はありそうだ。

 俺は箱ごと影収納に収めると部屋を後にした。


 2階の廊下には先程、意識を刈り取った相手が転がっている。ここの奴らは皆、不思議な刃が付いた鞭のような武器を使ってきた。

 初めて見る武器だったので最初は戸惑ったが、全員が同じ武器を使ってくるので段々慣れてきた。

 鞭だから懐に入り込んだ後は中々に先端を戻し辛い事もあり、ほぼ無防備になっていた。直剣なら手首を捻ればすぐさま刃が反転するが、鞭ともなるとしなりを意識して立ち回らないといけないだろう。

 むしろ普通の鞭なら手首のスナップで自在に中距離、近距離に対応出来るのだろうが、刃の重さ分咄嗟の動きには弱いようで、少し速く動いてやったらすんなり懐に入り込めた。

 俺も鞭など使ったことがないからよくわからないが、つまりは研鑽不足だな。

 頭目ならひとまず殺しておくところだが、違うと言うので気絶させるだけにした。

 もう殺し屋じゃないからな。むやみに人を殺すのは辞めた。もちろん殺さなきゃ殺られるような状況なら躊躇わないが、実力が離れている相手なら手加減のしようもある。


 1階に降りると気を失っている者や呻く者達で溢れていた。

「うぅ…。」

「痛ぇよぉ。」

「ぐうぅぅぅ。」

 ひとまずは誰も殺してはいないはずである。腕や足を斬り飛ばした奴はいるが命に別状はないはずだ。

 俺が近付くと、

「ひっ!?殺さないで!」

「や、やめてくれ!」

 と騒ぎ立てるので、顔面を蹴って気絶させていく。

 この程度の奴らならまた悪さしてもその辺の傭兵に潰されるだろう。

 その程度の奴らだ。わざわざ殺すほどの価値もない。

 さて、闇ギルドのアジトは片付いた。後は商会と領主邸か。今夜は忙しいな。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次は月夜野商会の方を先に攻める事にしたんだが、ここにもあの刃付きの鞭を持った無頼漢が数人待機していた。

 きっとあの闇ギルドから派遣されてきた奴らだろう。

 だがあのアジトの2階にいたやつよりも洗練されていない動きで鞭をただただ振るってくるだけだったので、こちらもすぐさま意識を刈り取った。

 でも戦闘音に気付いた商会の会長が騒ぎ立て始めた。


 2階建ての屋敷の2階廊下部分に忍び込んだ俺は押し寄せる無頼漢を倒しつつ階段付近まで来ていた。

「何者だ!ここを誰の屋敷だと思っておる!すぐに憲兵がやって来るぞ!えぇい!金で雇った用心棒は何をしているんだ!」

 1階と2階の階段の踊り場に来て大声を出す家主。

「用心棒なら全員転がしたよ。」

 俺は2階からささっと踊り場に降り立つと家主に近付く。

「な、何をするつもりだ!?ワタシが誰かわかっているのか?!ワタシに手を出したら領主様が黙っていないぞ!薄汚い獣人めが!とっとと去れ!」

 後ろに下がりながらも喚く家主。それでも他の家人が出てくる事はなかった。独り身なのかもしれない。


 先程から喚き続ける家主の身体はぶくぶくと膨れ上がりまるで豚のような顔面、オークかよっとツッコミたくなる様相である。

 見てくれ的には腕力も相当ありそうだが、騒ぐだけで手を出そうのはしてこない。

 耳障りなわめき声を聞くにどうやら猫耳フードのおかげで獣人族かもと思わせる事には成功しているようだ。これなら正体がバレる心配もないし、息の根を止めて口封じとかは必要なさそうだ。

「あんたは悪徳商会の会長さん、だろ?」

「な!?誰が悪徳商会か!わたしはこの街にリゾートホテルを建設するような地元愛に溢れる良民だぞ!」

「そのリゾートホテルの計画のせいで人も死んでるって聞いたぜ?」

 後ずさりしながらもがなり立てる家主。

「誰がそんな事を!あれは勝手に死んだだけでウチの商会が関係している話じゃない!」

「でもあくどい地上げやってんだろ?」

「いや、それは頼んだ奴らが勝手にやってるだけで!」

「もういいよ。お前は有罪だ。」

「ひ、ひぃ!」

 後ずさり過ぎて階段を踏み外した家主。1人で階段を転げ落ちていく。

 ガラゴロガラゴロ。

「ぐぇ。」

 踊り場から下階を見るに首の角度が怪しい感じになってるな。大丈夫かな。まぁ悪徳商会会長なんてのはどうなろうが構わないか。


 大切なものは上階に置くってのは貴族も商会会長も一緒だな。

 2階の階段から1番近い部屋に執務室的な机がドデンと置かれていた。

 両サイドに設えられた本棚にも様々な本と共にファイリングされた書類が多々見られる。

 だが大切な書類は机の下の引き出しに仕舞ってあんだろ。

 って事で引き出しを開けるとやっぱり土地の権利証類が束になって入っていた。これは地上げにあった人達に返してやろう。

 俺は初めて現金以外を盗み出した。

 あ、もちろん奥の部屋にあった現金も頂きました。リゾートホテルを建てようとしている商会だけあって白金貨もあった。これで数億リラを手に入れた訳だ。

 さて、最後は領主邸だな。全く忙しい1日だぜ。


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