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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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438話 旧王国領ファイブラ1

 蒼龍と紺馬の挙式をエルフの里で執り行った次の日から皆、それぞれの守護エリアへと散った。

 もちろん俺はワンズへとやって来た。

 このところ、戻ってきてもツリーハウスに籠もりっぱなしで妖術の特訓をしていたからな。たまには街の酒場にでも出向いて情報収集しようと考えた。


 ワンズは結構自由な街で昼間から酒場が開き、それなりに酔客がいるものだ。

 だから俺も酒場に出向き、酔客から面白い話でも聞けないかと酒を飲み交わす。

「だからファイブラの領主が怪しいんだって。」

 お、早速良さそうな話を始めたぞ。

 2人の酔客の話に加わる。

「怪しいって何が?」

「んあ?最近ファイブラの領主が変わった事は知ってるだろ?その領主になるまでが怪しさ満点なのさ。他の貴族が領主候補だったのに、いきなり行方不明になって、その代わりに領主になったような男だぞ?行方不明になった貴族に関して絶対関連してるだろ?そう思わない?」

 1人の酔客が相当な熱量で話している。だがもう1人は冷めた様子だ。

「でも警官隊が調べても関連の証拠は見つからなかったんだろ?」

「そりゃ簡単に関連がわかるようなやり方はしねぇーだろ?今だって黒い噂が絶えない領主だぜ?なんかあるに決まってらぁ。」

「今でも黒い噂?どんな話よ?」

 俺は1人の酔客に尋ねる。

「なんでも観光用ホテルを作るって商会があって、あくどい地上げに参画してるって話だぜ。裏稼業の人間達と繋がってて、領主命令だ、とか言ってそのエリアの人達から家を取り上げてるってな。」

「あぁ、それはおれも聞いたことあるな。リゾートホテルを作るだかで領主がその話に乗っかってるってな。二束三文で家を取られた人の中には生活出来ずに死んじまった奴もいたとか。」

「まぢかよ?そりゃ酷いな。」

 俺は酒を傾けつつ話を聞く。

「闇ギルドが関わってるって話だぜ。怖ぇよなぁ。」

「闇ギルドってったら犯罪者集団だろ?そんなんと繋がってる領主じゃファイブラも荒んでくだろうなぁ。」

 闇ギルドねぇ。

「その闇ギルドの名前は知ってるか?」

「確かかとくの…いや、がどくの…蛇だ!そうだ、『我獨(がどく)の蛇』って名前じゃなかったか?」

「あぁ、そんな名前だったな。元Aランクの傭兵だかが首魁なんだろ?」

「そうそう。元Aランクって話だな。怖ぇよなぁ。」

「へぇ。元Aランクの首魁ねぇ。」

 こいつは面白そうな話が聞けた。元Aランクの傭兵崩れが興した闇ギルドに、それに繋がる領主か。

「ありがと。いい話が聞けたよ。」

 俺は2人の酔客に礼を言って酒場を後にした。


 ファイブラまでは早馬で2日も行けば到着する。俺は早速馬で東へと駆け出した。もちろんヨルジュニアは留守番である。水と食事を準備してツリーハウスに置いてきた。そんなに日数はかけないつもりだが、一応1週間分、1匹でも暮らせるようにしてきたつもりだ。

 そしてファイブラに着いて早々に俺は馬を馬留に預け、酒場にやって来た。また悪徳領主と闇ギルドについての話を聞くためである。


 俺はカウンターでビール注文するとジョッキを片手に店内を見回す。するとちょうどよく酔っていそうな3人組を発見。見た目からして武芸事で生計を立てていそうな3人、つまりは傭兵だろうと見た。

「兄さん達は傭兵かい?」

 フランクに話しかける。

 すると1番年嵩の髭面が答える。

「おぅ。オレ達は傭兵だぁ。おめぇさんは見ない顔だなぁ。でもナイフを装備してるってこたぁおめぇさんも傭兵だなぁ?」

「わかるか?つい先程ファイブラに到着したんだ。この街について教えてくれないか?もちろんタダでとは言わないよ。皆に大ジョッキを奢らせて貰うからさ。」

 俺は大銅貨3枚を出してテーブルに置いて3人に見せる。

「お?!奢ってくれるってよ。いいんでないの?少しくらい付き合ってやろうや。」

 肥満気味の男がニヤつきながら食いついた。

「せやな。大ジョッキ1杯分くらいなら付き合うたるわな。な?」

 ヒョロッとした長身の男が続ける。それを聞いた年嵩の髭面も。

「そうだな。いいぜ。まずは奢って貰ってからだな。おぃ!姉ちゃん!ビール大ジョッキ3つ。」

 髭面はテーブルに置いた大銅貨3枚をひったくるように掴むと店員の女性に声をかけた。


 大ジョッキが3つ運ばれてきたところで、髭面が言う。

「まずは乾杯といこうや。傭兵稼業に!乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 グビグビのビールを呑む髭面。ジョッキを下ろした後には口周りの髭に泡をつけていた。

「で、なにが知りたいんよ?」

「そうだな。ここの領主がどんな人か、とか係わっちゃいけない闇ギルドの話とか?」

 それとなく話を振ってみる。すると。

「領主様な!最悪だよ!増税はするし、傭兵達を下に見てやがる。傭兵だけに課税するような話も出てやがる。傭兵税だとよ。この街で傭兵稼業をさせてやる代わりに税を払えってよ。ふざけんなよなぁ。」

 肥満気味の男が一気に喋り出す。

「おいおぃ。どこに耳があるかわからんやろ。あんまり大きい声で言うなや。」

 長身の男がたしなめる。

「でも実際傭兵税なんてのが導入されたらオレ達もこの街を出て行く事になるかもな。おめぇさんも微妙な時期に来ちまったな。」

 髭面も続く。

「そもそも領主様ってったって最有力候補が行方不明になったから繰り上げで領主になったような奴だぜ。怪しさ満点じゃねーか。」

 肥満気味の男はよほど領主が気に入らないらしい。

 俺の聞きたい話も出てきた。

 最初に声をかけた相手にしては当たりだったかもな。

 もっと口を滑らせるように追加の大ジョッキを頼んでやる。

 するとスラスラと男達は語り出した。


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