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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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433話 エルフの里6

 紺馬に連れられて村長宅から4件隣の木の根元へと移動した。

「流石に全員で入れるほど我が家は広くないからな。今両親を連れてくる。ちょっと待っててくれ。」

 紺馬はそう言うと1人木の扉を開けて室内に入っていく。

 久々の子供の帰省に積もる話もあったのだろう。10分ほど待たされてから紺馬が容姿端麗な2人を伴って家から出てきた。

 長髪を下ろし、紺馬によく似た女性の方が母親、長髪を後ろで結んだ方が父親だろう。

「父よ、母よ。紹介する。こちらがワタシの仲間の王達だ。」

 父親の方が一歩前に出て話し出す。

「初めまして。僕は紺馬の父親の蒼馬(そうま)と申します。皆さんの話は今ほど紺馬から聞きました。いつも紺馬の面倒を見て頂いているようで、ありがとうございます。」

 続けて母親が話し出す。

「初めまして皆様。母親の青馬(あおば)と申します。お転婆な紺馬の事、いつもご迷惑おかけしておりませんか?」

 こういう時は色々と経験豊富な白狐が前に出て代表して話し出す。

「これはこれはご丁寧に。いつも紺馬さんにはお世話になっております。私は白狐と申します。」

 と初めて全員の紹介を一通りしてくれた。


「すいませんね。狭い家で皆さんを中にお呼び出来なくて。」

 申し訳なさそうに頭を搔く父親、蒼馬。

「いえいえ。こちらこそ大所帯で訪問してしまって申し訳ございません。」

「それで紺馬はきちんと皆さんのお力になれていますでしょうか?生来お転婆な性格で皆さんにご迷惑をおかけしてやいないかと心配しておったのです。」

「とんでもない。いつもしっかりとお力を借りてますよ。時たまお転婆な一面を見せる場面もありましたが、普段は真面目に過ごされますよ。」

「おい。破王。余計な事を言うな。」

 白狐の言葉に慌てる紺馬。

「ワタシはしっかりやっている。心配ないぞ。」

「この子ったらこんな調子でして。お転婆が過ぎて女ながらに里にいる時も狩人などしておりましてな。まぁ、僕に似て弓の腕は確かだったんですがね。」

「紺馬さんの弓の師匠はお父様でしたか。1度に数本の矢を射る様は見ていて感動すら覚えました。」

 これには再び頭を搔きながら答える蒼馬。

「あははっ。あれは僕の得意技なんですよ。紺馬にも徹底的に仕込みましてね。そうか。今でもちゃんと使いこなしているのか。あの技は里でも10人も使える者が居なくてね。」

「貴方。貴方の自慢話はどうでも宜しいですわ。」

 頭を搔く父親を嗜める母親、青馬。

「そうだな。申し訳ない。ところでいきなり紺馬が帰省してきて驚いていたところなのですが、何かこのエルフの里にご用でも?」

 蒼馬の一言に蒼龍が前に出る。

「紺馬のお父上。単刀直入に申し上げます。この度紺馬と婚儀を結ばせて頂こうと思います。娘さんを我に下さい。」


 直球を投げかけた蒼龍。

 これには蒼馬も青馬も驚いている。

「娘を?!そんな紺馬はまだ80ちょっとですし、話が早いのでは。」

「貴方。紺馬ちゃんはもう82歳ですよ。結婚してもおかしくはない年齢です。ところで、蒼龍さんでしたよね?貴方は王として活動する前はどう言ったご職業を?」

 蒼馬よりも青馬の方が冷静だった。娘の相手を吟味する顔つきだ。

「はい。我は見ての通り龍人族でして、王として活動する前は龍人族の族長として民を纏めておりました。」

「まぁ。族長さん?それはしっかりなさっていますわね。それなら紺馬ちゃんを任せるにしても安心ですわ。ね、貴方。」

「む、むぅ。そうですな。ところで蒼龍さんはおいくつで?」

「はい。519歳になります。」

「500?それは紺馬とは随分と歳が離れていますね。」

「父よ。年の差など関係ないぞ。ワタシは今の蒼龍に惹かれたのだ。」

「む、むぅ。そうか。紺馬から惹かれたか。それなら父親としては子供を預けるしかありませんね。紺馬の事、よろしくお願いします。」

「わたしからもよろしくお願い致します。」

 蒼馬と青馬が2人して頭を下げる。

「こちらこそ。今後ともよろしくお願いします。」

 蒼龍も頭を下げる。


 一通り結婚の挨拶も済んだところで蒼馬が頭を搔きながら言う。

「紺馬は1000歳に近い時期に授かった子供でしてね。こんな時が来ることは昔から想像していたのです。折角ですからお断りする流れも体験させて貰えませんかね?」

「貴方!何を言っているのですか。」

 嗜める青馬。しかし、これには蒼龍が快諾した。

「お母上。我は構いませんよ。お父上。どこからやりますか?」

「いいかい?では娘さんを下さいからお願い出来るかな?」

「わかりました。では、お父上。娘さんを我に下さい。」

 すると蒼馬は厳しい顔付きで一言。

「ならん。ドコの馬の骨ともしれん奴に大切な娘をやるなどと。話にならん。出直してこい!」

「お父上。そこを何とか。お認め頂けませんか。」

「ならんと言ったらならん。貴様などに大切な娘をやる事は出来ん!」

 そこまで言ってにへらと笑う蒼馬。

「これこれ。1度言ってみたかったんですよね。厳格な父親って感じしました?」

「はい。それはもう厳格なお父上でした。」

 蒼龍もしっかり受け答えする。

「あははっ。気が済みました。ありがとう。」

 なんだったんだろう。今のやりとりは。ノリノリな蒼龍も珍しい。折角だから断るパターンもやりたいとか言う事あるんだな。

 俺は白狐にも両親はいないし、相手の親に挨拶するなんて事も無かったが、普通はこんな感じなんだろうか。


 そこからはこのエルフの里で婚約の儀を執り行う事や本日の寄宿先について話があった。

 一応里にも宿場のようなものはあるらしく、今日はそこに泊まらせて貰う事になった。

 この日は里を上げての盛大な歓迎の食事会が開かれた。

 蒼龍と蒼馬もすっかり打ち解けたようだ。

 酒を呑むペースが早いと蒼馬は青馬に嗜められていた。この家庭も女の尻に敷かれているタイプなのかもしれないな。

 まぁ、夫婦なんてもんはそのくらい妻が優勢の方が上手くいくのだろう。

 飲めや歌えやの大騒ぎの後、俺達は寄宿先で休ませて貰う事にした。

 明日はいよいよ婚約の儀だ。

 結婚式とか俺も初めてだからな。ワクワクが止まらないな。

 明日は朝早くから儀式を執り行う話になっている。

 サッサと寝よう。

 俺は布団に入り目を閉じるのだった。


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