430話 聖都セレスティア47
聖都セレスティアへと帰り、神殿へと戻ると俺達は祈りの間にて王化の特訓中の朱鮫と藍鷲に事の顛末を伝えた。
「ほう。オークキングにはぐれヒュドラでっか。また大層な相手が住み着いたもんやな。せやけど、もう倒したんやったら心配はないな。」
朱鮫が言う。
「うむ。西の森はこれで元通りだと思う。で、それよりも大切な話があるのだ。」
金獅子が朱鮫と藍鷲に言う。
「なんですか?大切な話って?」
「なんかあったんか?」
「うむ。蒼龍、紺馬。自分達の口で説明せい。」
金獅子は蒼龍達をぐいっと前面に押し出す。
「うむ。この度我と紺馬は婚儀を結ぶ事となったのだ。」
「結婚すると言うことだ。」
一瞬の沈黙。
「こんぎ?」
「けっこんってあの結婚ですよね?おめでとうございます!」
素直に喜びを表現する藍鷲。朱鮫はまだ話について来れていないようだ。
「結婚っていつから2人はそう言う関係やったん?全然知らんかったわぁ。言うてくれたらよろしいのに。」
「いや、先程お互いの気持を交換してな。それで婚儀へとなったのだ。」
「っちゅう事は交際0日婚かいな?そら思い切った判断やね。まぁお互いが納得しとるんやったら言うことないわ。おめでとさん。」
やっと朱鮫も納得したようだ。
「でさ、折角だから今夜はパーティーでも開こうと思うんだが2人は何か食べたい物あるか?俺が作れるものならなんでも作るぞ?」
俺が言うなり
「カレーが良いな。」
「カレーが良いぞ。」
と2人の声ががハモった。
「カレー?カレーなんかでいいのか?」
「うむ。黒猫のカレーは絶品だからな。」
「ワタシも夜王のカレーは好きだ。」
2人に真っ直ぐ見つめられる。これへ心からカレーをご所望のようだ。
「わかった。とっておきのカレーを作ってやるから待っとけ。そうと決まればまずは買い出しだな。」
「うむ。酒は俺様と茶牛で選んでこよう。黒猫は食材を頼む。」
「はいはぁーい!私もクロさんと一緒に買い出しに行きます!」
白狐が手を上げて言う。
「わかった。んじゃ、白狐、行こうか。」
「はい♪」
こうして俺と白狐の2人でカレーの食材の買い出しに向かったのだった。
街に買い出しに出た俺達。
聖都セレスティアには様々な地域から食材が集まってきており、そうそう、ないものが内状態だ。ありがたい。
「で、どんなカレーにするんです?」
「ふふふっ。ハンバーグカレーだ。」
「なっ!?ハンバーグカレー?なんですそれは?」
「知らないのか。ご飯にハンバーグを乗せて、その上からカレーをかけるのさ。」
「まぁ、なんてボリューミーな。」
「肉はまだドラゴン肉やらオーク肉やらが残ってるから良いとして、カレーの具材だな。タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、茸類。」
「なら八百屋さんですね。あっちです。行きましょう。」
と、自然な形で手を握られた。手を繋ぐなんて今までなかったからな。少しドキッとしたぞ。表情には出てなかったと思うが。
そんな感じで手を引かれて連れてこられたのは街で1番大きな八百屋。ここにないものはナイトまで言われる大手の八百屋だ。
白狐は何度か尋ねた事があるのか親しい感じで店の親父に声をかける。
「親父さん、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマトに茸類、マイタケとシメジとエリンギ、それにエノキタケを下さいな。」
「はいよ。量はどのくらいで?」
1つから売っているようで、購入したい量を伝えると親父さんが良さげな物を見繕ってくれるようだ。
「タマネギは大玉で12玉。ニンジンは中サイズ10本、ジャガイモは中玉10玉。トマトは大きめのを7つ。茸類は適当に合わせて1kgくらいで見繕ってくれれば有り難い。あ、あとレタス一玉とキュウリ10本、トマトは追加で5つ。それと大玉のリンゴを3つ追加で頼む。」
「はいよっ。全部で4600リラね。」
俺は大銅貨4枚と銅貨6枚で支払う。
「はいよっ。まいどあり。」
俺が買った物を影収納に仕舞っていると白狐が言う。
「レタスとキュウリはカレーには入れませんよね?」
「カレーだけじゃなんだから簡単なサラダも作ろうと思ってな。」
「買い物は終わりですか?」
「いや、折角だからスパイス類も買いたそうと思う。」
「スパイスのお店ですか。私知ってますよ。こっちです。」
とまた手を引かれる。さすがに慣れたな。まだ気恥ずかしさはあるが顔には出てないだろう。
スパイス屋に到着した。
俺はクミン、コリアンダー、ターメリック、レッドペッパー、チリペッパー、ガラムマサラ、カルダモン、オールスパイス、グローブ、ナツメグ、シナモンを注文。影収納に仕舞えば良いので全てキロ単位で注文した。よほどキロ単位で買っていく客は少ないのだろう。店主からは熱心に次回もヨロシクと何度も言われた。
あとはハンバーグ用に牛乳と卵を買っていく。こちらも白狐のお薦めの店があると言うので手を引かれながら向かう。
「聖都に随分詳しくなったな?」
「クロさん達が各地に散っている間も私は聖都にいますからね。自然と詳しくもなりますよ。」
「それもそうか。」
「そうですよ。あ、ここです。牛乳屋さんです。ここのコーヒー牛乳は美味しいですよ。」
「んじゃ味見に1つ買っていくか。白狐も飲むだろ?」
「えぇ。頂きます。」
俺は牛乳1リットルとコーヒー牛乳2瓶を購入。コーヒー牛乳はその場で飲む。
「うん。確かに美味いな。」
「でしょう?美味しいんですよ。」
牛乳の甘味とコーヒーの苦みのバランスがちょうどいい。牛乳を飲んでいる気にもなるし、コーヒーを飲んでいる気にもなる一品だった。
「最後は卵屋さんですね。こっちです。」
手を引かれてやって来たのは卵専門店。様々な鳥の種類別の卵が置かれている。
俺は一般的な白い殻の卵を12個購入した。
さて、買い物は終了かな。戻って早速カレーを作ろう。




