420話 聖都セレスティア40
「で、神器ってやつはどうなんだ?使えてるのか?使えそうなのか?」
必殺技のお披露目を終えた俺は気になっていた事を隣に立つ銀狼に尋ねた。
「神器か。使えてはいる。が、使えそうなのかは正直わからん。」
難しそうな顔をして銀狼が答える。
「わからんってなんでだよ?」
「んー。とんでもない何かしらのエネルギーを感じはするんだが、その威力を試せていないからな。今はまだ神器化を安定させる段階だ。」
「安定?やっぱり特訓か?一朝一夕で強くはなれないって事かね。」
「だな。神器化させる事が出来てもすぐには安定しないらしい。すぐに神器化が解けてしまってな。」
「そうか。なら俺も次は神器化の特訓が必要だな。」
「おぅ。最初は1分保てば良い方だ。」
「1分か。銀狼は今はどのくらい神器化させられるんだ?」
「オレか?聞いて驚け。オレはすでに15分に到達したよ。」
どこか得意そうな顔で言う銀狼。
「神器化の最大時間はどんなもんだったっけ?」
「30分だと緑鳥が神交の際に聞いている。」
「そうか。なら後半分はあるのか。追いついてやるよ。」
「ははっ。やれるもんならやってみな。」
そう言って俺の肩を叩く。
そんな俺に茶牛が声をかけてきた。
「黒猫よぉ。お前も新しい技を開発したんだなぁ。しかも自力でぇ。凄ぇなぁ。」
ん?お前もって言ったか?
「お前保って事は茶牛も何か新技出来たのか?」
「あぁ。黒猫にこの前言われた地面の声を聴いて地面を割るってやつさぁ。試してみたんよぉ。」
胸を張って言う茶牛。
「おぉ!まぢか。で、どうだった?」
「見事に地面を割ることが出来たんよぉ。って言っても5秒ほどだがなぁ。大体3mくらいの長さで幅1mくらいの亀裂を入れられたんよぉ。」
ブイっとパースしてみせる茶牛。俺は素直に驚いた。
「1mの亀裂が3m続くのか。大抵の敵なら落とせるな。5秒経ったらどうなるんだ?」
「亀裂が元に戻るんさぁ。地面の声を聴いて弱ってる所にしか使えないんだけどなぁ。アースフィッシャーって名付けたんよぉ。」
「亀裂が元に戻るのか。落とした奴らを潰す感じだな?狩りには向かないけど、甲蟲人相手なら重宝しそうじゃないか。アースフィッシャーってどう言う意味だ?」
「儂も翠鷹に名付けて貰ったんだけどなぁ。地割れって意味らしいぞぉ。」
「地割れ。そのままだな。翠鷹にって事は一緒に行ったのか?」
「あぁ。このハンマー手に入れた時と同様に西の森に一緒に行ってなぁ。今のところ、翠鷹にしか見せてないんだぁ。後で一緒に西の森行くかぁ?見せてやるぞぉ?」
「そうだな。神器化の特訓の合間にでも行くか。俺もそのアースフィッシャーってのが気になるしな。」
「んじゃ決まりだなぁ。午後一緒に森に入るべさぁ。」
「あぁ。楽しみにしてるよ。他のメンツにも声掛けておくよ。」
「だなぁ。儂も皆にお披露目するだぁよぉ。」
って事で午後は茶牛と一緒に西の森に入る事になった。
まだ俺の影針について話をしていた白狐と紫鬼にも声をかけてみる。
「午後は茶牛の新技を見に西の森に行かないか?」
「新技?茶牛もか?気になるな。ワシは行くぞ。」
「私は神器化の特訓を続けたいですかね。」
紫鬼は行くと言うが白狐はパスするようだ。
「今は神器化の安定化が必要なんだって?」
「えぇ。聞きました?」
「あぁ。さっき銀狼に聞いたよ。白狐は今はどのくらい神器化出来るようになった?」
「私はまだまだ始めたばかりですからね。5分程度が限界です。」
言いながらも肩を落とす白狐。
「わっはっはっは。仕方ないさ。お前さん達はオークションに行ったりと大忙しじゃったからな。その点ワシはじっくり神器化の特訓が出来た。」
ふんぞり返って言う紫鬼。
「そう言うお前はどのくらい神器化出来るんだ?」
「ワシか?ワシは13分じゃ。」
「なんだ。銀狼より短いじゃないか。」
俺が冷たく言い放つと紫鬼が凄い剣幕で反論する。
「何を?!いいか。神器化ってのは武器を神器に変えるんじゃぞ?銀狼は双剣を神器化しとる。その点ワシは手甲じゃぞ?武器じゃない。防具じゃ。それを神器化出来とる時点で凄かろうが。」
「確かに。紫鬼さんは武器は持ってないですもんね。」
「そう言われてみればそうだな。紫鬼、凄いじゃないか。」
「そうだろう。そうだろう。分かればいいのじゃ。分かればな。」
またふんぞり返って言う。
「で、クロさんは今日から神器化の特訓を?それとも暗黒針の再現ですか?」
「いや。暗黒針はまだ俺には使えそうにないよ。今は影針で満足するさ。だから俺も今日から神器化の特訓に入るよ。」
首を横に振って答える。
「なら私が神器化の特訓の講師になってあげますよ。」
「講師?」
「えぇ。いきなり自分で試すよりも先駆者の意見を聞いた方が習得も早いでしょう?」
「あぁ。確かにな。んじゃ頼もうかな。」
「わっはっはっは。それなら白狐よりもワシに教えを請うが良いさ。白狐よりも何歩もリードしとるワシからの方が得るものもあるじゃろうが。」
「む?ならどちらがクロさんに教えるか勝負しましょう!」
「なぬ?勝負だと?乗った!」
「むむむむっ!」
「くぬぬぬっ!」
と白狐と紫鬼の間で熱い視線が交差するのであった。




