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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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414話 迷いの森10

 翌日、太陽が昇ると同時に起き出した俺達は朝食を食べてから野営のテントなどを片付けてホーンラビットなんかがよく出たポイントまで引き返す事にした。

 たが、その前に特訓だな。

「王化!夜王!!」

 俺が叫ぶと左耳につけたピアスにはまる王玉から真っ黒な煙が吐き出されてこの身を纏う。

 その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となった。

 特訓の成果もあり影を伸ばすのには随分と慣れて今や腕や頭以外の場所からでも影を伸ばす事が出来るようになっている。その長さは5m強ってところか。

 俺は影収納から針岩を取り出すと手頃な位置に立てる。そして自身の影が届かない距離まで下がると、針岩に向けて影を伸ばした。

 俺の伸ばした影が針岩に映る。俺はその隣に影針を突き立てるイメージを強めて叫ぶ。

「影針!」

 なにも起きない。

 影はピクリとも動かなかった。

 まぁそう簡単にはいかないだろうと思っていたさ。

 俺は針山をイメージする。

「影針!」

 すると伸ばした影が縮み俺の影に戻ったところで影針が出現した。イメージした通り直径30cmほど、高さ2m程度の立派な影の針だ。

 その後も影を伸ばしては影針と叫んだ。

 結果は影が伸びたまま針は出ないか、影が縮んだ上で針が出るか。

 まさにどっちかしか出来ない。そもそも影を伸ばすのも集中力が必要で、さらに影針を出すとなれば更なる集中力が必要になる。

 まるで右手で丸を書きながら左手で三角形を書くような、いやもっと複雑だ。足元でタップを踏みながら手元でチャーハンを作るくらいにややこしい事をしようとしているのだ。

 そりゃ簡単には実現出来ないな。

 その後も王化が解ける3時間みっちり特訓したが伸ばした影から影針が飛び出る事はなかった。

 まぁ、こればっかりは回数こなして慣れるしかない。

 気持を切り替えて森を進む事にした。

 ちなみに俺が特訓している間、ドランとヨルジュニアの2匹は追いかけっこをしたり、日なたぼっこをしたりと気楽に過ごしていた。勝手にどっか行ったりしない辺りは教育の賜物だな。


 昼休憩を挟んで移動する事にした。

 木々が倒れた拓けた場所には北東方面を目指してやってきたので、南西方向に進めば元々いた辺りに戻れるはずであった。

 森の中は木々に太陽が遮られてしまい、太陽の位置で方角を確認する事も出来ない。だから感覚だけで南西方向を目指して歩いた。

 道は獣道だ。生い茂る草木に足を取られながらも進む。

 どうやら道に迷ったらしい。もう何度目かになる木々の倒れた拓けた場所には見覚えがある。解体された巨大なワイバーンの骨もあるので間違いない。元いた場所に戻ってきている。

 だが慌てない。こんな時こそドランにお任せだ。

「ドラン、ちょっと飛んでくれるか?」

「グギャ!」

 良い返事だ。俺はヨルジュニアを抱いてドランの背に跨がる。

 一気に上昇するドラン。太陽の位置から南西方向を目指す。

 下は木々に覆われて様子は見えないが、適当なところで降りて貰った。

 そこは下草が生えて獣道すらない草っ原だった。木々の根も地面から出ていて歩きづらそうだ。

 取り敢えず西に向かって歩くことにした。


 獣道すらないような森林地帯だからか魔物にも出会さない。そんな道なき道を進む俺達。

 暫く進むとやっと草を踏みしめた跡を発見した。

 一歩一歩が広い。これはオーガの足跡だろうか。ひとまずその足跡を追ってみる。

 するとやはりオーガがいた。3体だ。俺達は草陰に隠れて様子を伺う。まだこちらには気付いていなそうだ。

「王化!夜王!!」

 俺は小さく叫び左耳につけたピアスにはまる王玉から真っ黒な煙が吐き出されてこの身を纏い、その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となる。

 俺ってば結構本番に強いタイプなのよ。オーガまでの距離は5m程度とちょうどいい。

 俺は影を伸ばし1番手前のオーガの足元にまで影を伸ばした。

「影針!」

 伸ばした影から直径30cm、高さ2mの影の針が出現し、オーガの左足から肩口までを突き刺す。

「グゴォォォォオ!」

「ガゴッ?!」

「ガァァァア!」

 一気にオーガ達が色めき立つ。

 出来た。影針の完成である。俺は草陰から飛び出し立て続けに影を伸ばして残りのオーガに向ける。

 草陰から飛び出した俺を見て残りの2体が棍棒を振り上げて向かってくる。

 そのうち手前にいたオーガの足元にまで影が伸びた。

「影針!」

 振り上げた棍棒を持つ右腕に向けて影の針が飛び出す。

 影の針は見事に肘関節を突き破り右腕前腕を吹き飛ばす。

「グゴォォォォオ!」

「ガゴッ?!」

 残り1体も何事かと足を止める。チャンスだ。

 俺は近付きつつ影を伸ばし残りのオーガの真下に影が伸びたところで影針を発動させる。

「影針!」

「ゴフッ!」

 突き出た影の針は肛門付近から進入し、オーガの口から先端を覗かせる。一撃で仕留めたな。

 影針は出現から5秒程度で消え去った。その為、左肩に影針が突き刺さった最初のオーガが左腕をダラリと下げたまま右手に持った棍棒を振り上げて近付いてきた。

「グゴォォォォオ!」

「グギャ!」

 これにはドランが反応してドラゴンクローを一閃。オーガの首をへし折った。

 残りは右腕前腕を弾き飛ばしたオーガだが、こちらは棍棒を持っていた腕を失い素手で向かってきた。

「ガァァァア!」

「にゃー!」

 ヨルジュニアが前に出てこれを迎え撃つ。

 尻尾を刃と化して前方に伸ばすとオーガの身体を滅多刺しにする。

 身体をくの字に曲げたオーガ、その頭部がある位置に影を伸ばした俺は影針を発動。

「影針!」

「ガッ!」

 影の針はオーガの頭部を穿ち後頭部からその先端を突き出す。

 影針が消えて前倒しに倒れるオーガの死骸を見て思う。接敵から3分あまり、俺も随分と強くなったものだ。ヨルと出会った頃は3体のオーガ相手に殺されそうになっていた事を思い出す。


 こうして俺は見事に影針を再現させたのであった。

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