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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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412話 迷いの森8

 迷いの森を北東方面に向かって歩く俺達の前に不思議な光景が広がっていた。

 周囲の木々が横倒しになり、大きく空が見える空間に出たのだ。

 倒れた木々はよほど強い衝撃を受けたのか根元から折れており、見渡すだけでも数十本の木々が倒れていた。

「よっぽどの衝撃を受けているな。気を付けろ。敵は近いぞ。」

「グギャ!」

「にゃー!」

 2匹は分かったと言わんばかりに応える。

 次の瞬間、木々に隠れて見えなかった奥の方から何かが上空へと飛び立った。

 よく見ればワイバーンである。ワイバーンはドラゴンと違って腕はなく、両腕のあるべき位置から翼が生えている。その為、両翼を広げた際の横幅は同体型のドラゴンよりも大きい。にしてもそのワイバーンは異質だった。

 普通のワイバーンは体長3m程度で、翼を広げた横幅は10m弱ってのが相場であるのに対して、そのワイバーンは体長6mほどで横幅は20m弱と2倍近い体躯をしていた。

 これではドラゴンと大差が無い。

 こいつがいたから他の魔物が逃げてきたのか。


 そんな事を考えていると、上空のワイバーンが獲物を見つけたように俺達の方へと滑空してきた。

 ワイバーンの脅威はその鋭い爪にある。巨大のワイバーンともなれば人の身体を一掴みに出来るほどの足のサイズである。

 それに近付いてくるワイバーンの大きさがやはりデカい。まるで影が迫ってくるかのような感覚におちいる。


 ワイバーンの接近まであと数m程になった時、ヨルジュニアが動いた。

 俺の前に出て上空に向けて黒炎を吐き出したのだ。

 炎に突っ込む形となったワイバーンは、慌てた様子で再び上空へと上昇していく。

 それを追うのは翼を広げたドランだ。空を飛ぶ速さはワイバーンの方に分があるようで、ドランはなかなか追いつけない。

 しかし、ワイバーンが空中に制止した為、ドランがその前へと飛びこむ形になった。

 まずはドランの先制攻撃。必殺のドラゴンクローがワイバーンの胸を切り裂く。

 しかし、ワイバーンもやられてばかりではない。空中で体勢を変えて鋭い足の爪でドランを掴み捕ろうとする。

 爪を上下二振るってワイバーンの足を弾くドラン。

 ワイバーンは一つ羽ばたき空中を移動すると次の瞬間には高速でドランに向けて足の爪を押し込んでくる。

 ドランも爪で弾こうとするがワイバーンの降下の力も加わった足の爪に腕が弾かれてしまう。

 ザシュッ

 ワイバーンの足の爪がドランの左肩に突き刺さる。

「ギュフッ!」

 ドランがバランスを崩して落下してくる。ワイバーンがその後を追って急降下する。

「キエッ!」

 ワイバーンの足の爪が落下するドランの腹部に突き刺さる。

「グギュゥゥ!」

 落下の速度を増したドランが木々の倒れた地上へと墜落する。

 その衝撃により倒れていた木々もさらに砕ける。


「大丈夫か?」

 俺は慌ててドランに近付く。ドランは左肩と腹部から血を流しているが、竜鱗のおかげか傷は深くはない。

「グギャ!」

 元気そうに起ち上がるドラン。その目はまだ闘志が燃えているように見える。

「大丈夫か?」

「グギャ!」

「まだいけるか?」

「グギャ!!」

 そう鳴くとドランは再び上空のワイバーンへと向かって飛び立った。

「キエッ!キエッ!キエッ!!」

 ワイバーンが小馬鹿にするように鳴く。笑っているのかもしれない。


 次の瞬間、巨大ワイバーンは翼を大きく広げ身体の前で翼を交差させる。その羽ばたきにより、猛烈な突風が発生し、ドランへと迫る。

 ドランは最小の動きでこれを回避。すると風の刃は地上にいる俺達へと迫り来る。

 木々を薙ぎ倒したのはこの攻撃か。

 猛烈な突風は刃のような鋭さを持ってこちらに向かってくるのが目視出来るほどだ。

 俺は腰からアダマンタイト製のナイフを2本取り出す。そしていつも通り右手は順手、左手は逆手にナイフを握ると、迫り来る突風に向けて跳躍。その風の刃を2本のナイフで受けた。

「ぐっ!でぇりゃぁぁぁあ!!」

 大きく上下にナイフを弾く。これにより風の刃は2つに割れて地上へと降り注ぐ。倒れた木々へとぶつかった風の刃はさらに木々を細かく分断する。

 ふぅ。喰らっていてら危なかったかもしれないな。


「キエッ!キエッ!キエッ!!」

 巨大ワイバーンは耳障りな声で鳴く。上空にいる為、ここからでは攻撃のしようが無い。ここはドランに任せるしか無さそうだ。

 上空の2匹はもつれ合うようにお互いの攻撃を爪で弾き、お返しとばかりに爪で攻撃する。

 巨大ワイバーンは足による爪の攻撃を繰り出している為、常にドランの上に位置していた。

 その為ドランは攻撃の度に上昇し、巨大ワイバーンも攻撃の際には上昇する。

 どんどんと地上から離れていく2匹。そんな2匹をヨルジュニアはジッと見つめている。


 ドランが巨大ワイバーンの上に出た。次の瞬間身体を縦回転させてドラゴンテイルを頭上から浴びせる。

 これは見事に巨大ワイバーンの頭部に当たり、高度を下げさせた。

 そのままの勢いで頭上からドラゴンクローを振り抜くドラン。

 しかし、巨大ワイバーンは機敏な動きでこれを避けた。さらに上昇して足の爪をドランに向ける。爪で弾くドラン。

 壮絶な空中戦が続く。


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