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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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410話 迷いの森6

 ちびちびと火酒を呑みながら茶牛と何気ない話をする。そんなひとときもたまにはいいもんだ。

「だから儂はやっぱり職人なんだなぁ。戦闘後は銀狼達の義手や義足に曲が無いかとか変に捻ってないかとかに目がいっちまうでなぁ。魔導義肢は繊細だからなぁ。ちょっとでも歪むと動きに制限がかかっちまうでぇ。」

 茶牛が火酒をグビッと一口呑んで言う。

「そもそも魔導義肢ってのは何を動力に動いてるんだっけ?」

「魔石だぁよぉ。各関節部に魔石が入っとるんよぉ。それを肉体に埋め込んだ魔石が神経伝達物質を拾って各関節の魔石に動きを伝えるんだぁ。下手な魔道具よりもよっぽど繊細なんよぉ。」

「あぁ。そう言えば身体に魔石を埋め込んでたな。かなり痛そうだったけど?」

 おつまみのタンドリーチキンが少なくなってきた。何か作るかな。

「直接神経を繋ぐからなぁ。酷い奴だとその痛みで失神してまうくらいには痛いぞぉ。儂も体験した事はないけどなぁ。」

「直接神経触るのか。想像出来ないな。何か食べる物いるか?酒の肴がなくなってきただろ?」

「んにゃ儂は酒があればいいでなぁ。酒呑みながらはあんまり食わんのよなぁ。」

「空腹に酒が1番効くだろ?ドワーフは酒に強いって聞くけど、ホントに強いんだな?」

「なぁに、儂はそこまで強くはない方だぞぉ?店の店主なんかは火酒を樽で呑むくらいだ。儂は精々一瓶程度だぁ。」

「火酒一瓶って結構だけどな。そう言えば茶牛の地王ってどんな権能があるんだ?聞いたことなかったよな?」

「うん?儂の権能は鉱石の声を聴く事が出来るんだぁよぉ。義肢作る時には重宝するんだぁ。もうちょっと熱してくれだの、ここを叩けだのと鉱石が言ってくるんだぁ。ただ戦闘には全く意味が無い権能だでなぁ。」

「鉱石の声を聴く、か。地面の声も聞こえるのか?」

「んあ?地面の声かぁ。意識した事無かったなぁ。」

「地面の声が聴けたらあのバトルハンマーと合わせて色々と出来そうじゃないか?それこそ地面を割ったりさ。」

「そうだなぁ。今度意識してみるかなぁ。」

「あぁ。楽しみにしてるよ。さて、酒も呑み終えたし、俺はそろそろ寝るよ。」

「そうかぁ。儂もあと1杯だけ呑んで寝るだぁ。おやすみぃ。」

「あぁ。おやすみ。」

 そう言って俺は食器を片付けてから自室に戻ったのだった。


 明けて翌日。

 少し頭が痛い。慣れない火酒に軽い二日酔い状態になってしまったようだ。二日酔いには味噌汁が良いって聞いたことがあったので、朝からワカメの味噌汁を作って飲んだ。

 心なしか頭痛が和らいだ気がする。食欲はなかったので朝食は味噌汁のみ。今日も出掛けるつもりなので弁当を作った。って言っても簡単なサンドイッチだけだけどな。


 この日もドランとヨルジュニアを連れて迷いの森までやって来た。

 ドランに乗って空を行くこと3時間あまり。ちょっとした空中散歩には最適だ。

 今日の目的はオーク肉収集ではなく、俺の影針のコソ練だ。

 この森なら低ランクの魔物が多く生息している為、練習相手には事欠かないだろう。

 皆にはオーク肉以外の肉の採取目的だと伝えてある。まだ影針の事は内緒である。きちんとものにしてから皆にお披露目しよう。


 と言うことで早速俺は王化して昨日の感覚を思い出しながら影針を発動しようとした。

 が、針は浮かび上がって来ない。やっぱりまだ特訓が足りないようだ。

 俺は影収納に仕舞っていた針岩の欠片を取り出して適当な位置に立てる。そこに自らの影を当てて針と化した影をイメージする。

「影針!」

 針岩の隣に影の針が出現する。やはり針岩を持ってきて正解だったな。イメージがつけやすくなる。

 だが毎回戦闘時に針岩を取り出してセットする余裕はない。今日中には針岩なしでも影針が繰り出せるようになっておきたい。


 その後も王化の限界である3時間、みっちりと特訓した。おかげで針岩がなくても自在に影針を出せるようになった。

 あとは伸ばした影から出せるようになれば完璧だ。

 だが、王化が解けた次の瞬間、お客さんが現れた。ジャイアントボアだ。これにはドランが先に反応した。近付いてくるジャイアントボアに向けてくるっと背中を見せると、しならせたドラゴンテイルで横っ面に痛打を与える。

 ジャイアントボアは吹っ飛び木に激突、直径1m程はありそうな大木を折りその体は止まったが、ほぼ即死だろう。よく見れば首の骨が折れているのがわかる。ドランにしてもついこの前までは体長1mにも満たなかったのに成長したものである。

「おーし、よしよし。よくやったな、ドラン。」

「グキャ。」

 俺はドランの頭を撫でてやると甘えたような声を上げる。図体はデカくなったがまだこのあたりは子竜だな。

 俺は早速ジャイアントボアの毛皮を剥いで血抜きする。血抜きのスピードがその後の肉の味を左右するからな。首の大動脈を切り裂いて逆さに吊った状態で、血が垂れなくなったら解体する。臓物は簡単に穴を掘って埋めた。

 その後もジャイアントボア、ホーンラビット、ブレードラビットなどの低ランクの魔物が続々と出てきた。

 どうせなら俺が王化している時に出てきてくれれば良かったのにな。

 どうやら魔物達は北東方面から向かってきているように思える。北東に行けばなにかあるかもしれない。

 俺はドランとヨルジュニアを連れて北東方向に足を運ぶのだった。


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