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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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405話 迷いの森2

 俺は2匹がゴブリンアーチャーに向かって行くのを横目に見ながら影を伸ばす。

 もう体のどの部位からでも影を伸ばす事は出来るようになっており、その長さも4、5m程と伸びている。

 だがやはり陰から針を突き出すイメージが固まらず陰は三次元的な動きは見せない。なにが足りないのだろうか。俺は必至でヨルが使っていた暗黒針舞を思い出す。

 なんつーかあれは針がズババババッと飛びだして暗黒牢に閉じ込めた相手を串刺しにしていた。

 そうか。影を実体化する必要があるのか。

 俺は1本の太い針を想像する。まずは影を伸ばさず俺自身の陰から飛びだすようにイメージする。

 すでに辺りは暗くなりつつある。俺の影も木々の陰に隠れ始める。

 だが今までの特訓のおかげか、自分自身の陰はハッキリと認識する事が出来る。

 針をイメージ。いやヨルの奴が使っていた妖術では針と言うより杭に近かったか。太く鋭い杭。よし。いけそうだ。出ろ!杭!!


 結論としては2匹が複数のゴブリンアーチャーを殲滅するまでには俺の陰から針が飛びだす事はなかった。そしてちょうど王化も切れた。

 まだイメージが足りないのかもしれない。

 そんな事を考えながら2匹と共にさらに森の奥へと進む。

 辺りはすっかり暗くなっていたが、夜目が利く俺に、魔物である2匹ももちろん暗闇でも見通せる目を持っている為に視覚的に問題は無い。

 迷う心配がないわけではないがいざとなったらドランに乗って空を飛べば済む話である。だから気にせず奥へ奥へと移動する。

 すると小高くなった丘に横穴を見つけた。その前にはオークが2体、見張りのように立っている。

 これはオークの巣を見つけたか?となれば肉の大量確保が見込める。

 魔物は基本的に夜行性の者が多く、夜の方が危険性は増すと言われている。

 だが、2匹なら問題ないだろう。いざとなれば俺も動く。

 と言うことで俺達は早速見張りのオーク達に近づいて行くのであった。


 見張りのオークも夜目が利くのか俺達には早い段階で気付き臨戦態勢を取った。

 だが、そこは1体は巣穴に入って仲間達を呼ぶべきだったな。

 無謀にも子供とは言えドラゴンであるドランに向けて手斧を振りかざして躍りかかって来た。

 そのうち1体はドランの左前脚によるドラゴンクローで胴体を切り裂かれ、もう1体はヨルジュニアが刃にした尻尾で心臓部を一刺しして絶命させた。

 もうオーク如きにはドラゴンブレスも黒炎も必要ないと判断したようだ。

 確かに炭化するほどの威力だからオーバーキルにもほどがあるか。

 横穴は幸いにもドランの巨体が入っても余裕があるほどに広く高い。

 だから俺達は見張りのオークを影収納に仕舞うと横穴に侵入した。


 案の定そこはオークの巣になっており、中には30体程のオークが数体ずつのグループを作って座り込んでいた。

 鍾乳洞のように尖った岩がゴロゴロ転がっており、各グループを隔てている。

 見張りを立たせている事の安心感からか手に得物を持つ者もいない。

 そこでドランが思いっきりドラゴンブレスを吐き出した。

 口内に溜まった火球は超高温。それをドラゴンの肺活量で一気に吹き出す。

 それだけで半数近くのオークが丸焦げになった。

 そこでようやく侵入者に気付いたオーク達が手斧や棍棒を手にして起ち上がる。

 だがその頃にはすでに尻尾を剣にしたヨルジュニアが近付いており、1度に数体のオークを切り刻む。

 すると奥から全身鎧を着込んだ3m程の巨体が近付いてきた。オークジェネラルだ。

 ジェネラルがいるって事は、やっぱりいた。一番奥にはオークキングの姿もある。こちらは4m程の巨体である。

 オークジェネラルは大剣を片手で持ち、ドランに向かって駆けてくる。

 そして振り下ろされる大剣。だがドランは器用にその場で回転し、尻尾で大剣を持つ腕をはたき落とす。ドラゴンテイルと言われるその技は成竜ともなれば木々を薙ぎ倒すほどの威力になる。

 そんな尻尾の一撃を受けたオークジェネラルの腕は関節が逆に曲がり骨が覗いている。

「ブ、ブヒー!」

 オークジェネラルは一気に戦意を喪失して後ろに下がる。

 そんなオークジェネラルを押しのけるように巨大なバトルアックスを振り上げながらオークキングが前に出てきた。


 真っ直ぐにドランを見つめて迫り来るオークキングだが、その足元にはヨルジュニアが迫っていた。

 ドランに気を取られていたオークキングは足元のヨルジュニアに気付いていない。そこでヨルジュニアは刃と化した尻尾を器用に伸ばしてオークキングの右足をめった刺しにする。オークキングはいきなりの激痛に呻くとその場に蹲る。

 蹲った先ではちょうどドランの前脚の高さに顔がやって来た。そこできらめくドランの右前脚によるドラゴンクロー。

 爪に引っ掛けられてオークキングの左顔面の肉が大きく削がれる。だが、さすがはキング。これでは絶命には至らず、蹲りながらもバトルアックスを振り上げてドランに向けて振り下ろした。

 しかし、その斬撃はヨルジュニアよ尻尾の剣に弾かれてドランの体を避けて地面に突き刺さる。

 そこに今度は左前脚によるドラゴンクローが炸裂。これは見事にオークキングの首を折り絶命させた。

 残ったのはキングをやられて戦意喪失したジェネラルとオーク達。ドランとヨルジュニアによる殲滅戦が始まった。

 そんな様子をただただ眺めていた俺はこの横穴は野営するのにちょうど良いななどと呑気なことを考えながら2匹の動きを目で追うのであった。


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