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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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404話 迷いの森1

 午後は聖都から見て北西に位置する森、迷いの森へとドラン、ヨルジュニアと共にオーク狩りに出掛ける事にした。

 迷いの森は35k㎡もある広大な森で特殊な磁場になっているらしく方位磁石が狂う事で有名だ。

 だから1度中に入り込むと出口が分からなくなり迷う人が続出し、今では迷いの森とまで呼ばれている。

 なぜそんな場所に向かうかと言えば人があまり入り込まない為に魔物の巣が点在しており、魔物とのエンカウントも多発するエリアだからだ。

 ゴブリン種やオーク種が大半を占めると言うのでドランの餌となるオーク肉の大量仕入れを主目的にドランのたまにの運動を、と思っての事である。


 そんなドランは体長5m程で、両翼を広げればなんと12m程にも成長している。

 これなら俺とヨルジュニアを乗せて迷いの森までひとっ飛びだ。

 俺はヨルジュニアを抱えてドランの背に跨がり大体の方角をドランに伝える。

 ドランはきちんとこちらの言葉を理解し、神殿の中庭を飛び立つと北西に向けて飛んだ。

 迷いの森までは馬でも3日程の距離だがドラゴンの背に乗って飛んで移動すれば3時間ちょっとで到着する見込みだ。やはり地上を駆けるよりも大空を飛ぶ方が圧倒的に早い。

 それになりよりドランの飛行速度は圧倒的で、振り落とされないように噛ませた手綱を握り締めて背にしがみつく。

 もうちょっと体が大きくなったら安全に騎乗する為にも体に合った鞍を着けてやる必要がありそうだ。

 そんな事を考えている間にも眼下では景色が飛ぶように流れあっという間に聖都も見えなくなった。

 それにしても良い景色だ。遠くに見える山々も不思議と近くに感じる。

 いつもより視点が高くなるだけでこうも見た目が変わるものか。

 ドランも久々に自由に空を飛び回れてどこか嬉しそうである。うん。連れ出して正解だったな。


 そんなこんなで空の旅を満喫した俺達は午後5時前には迷いの森へと到着した。

 先に抱えていたヨルジュニアを地上へと降ろしてから俺もドランの背から降りた。

 皆には明日の夜までには帰ると伝えているので、大体24時間、これから森を探索する。

 もちろん事前に弁当を準備してきているので食事に関しては問題ない。

 ドランの餌は狩ったオークでもその場で焼いてやればいいだろう。

 ここに来たのはもう一つの理由がある。俺の妖術のコソ練の為である。

 だから俺は早速王化して王鎧を纏い、2匹が付いてきている事を確認しながら森の奥へと進んで行った。

 すると早速オーク2体に遭遇した。今回はドランの運動不足解消も目的としている為、俺は直接手を出さない。

「ドラン、ヨルジュニア。行けるか?」

「グギャッ!」

「にゃー!」

 俺の背後に付いてきていた2匹が俺を追い越してオークへと向かう。

「にゃー!」

 ヨルジュニアの黒炎が口から放たれる。

 ちょっと距離が遠かったのかオークは全身を焼かれることなく、体表を炙られるだけで済んでいる。こちらを敵として認めたようだ。

 古ぼけた手斧を振り上げて2匹に向かって駆けてくる。

 そこでドランが大きく口を開いた。開いた口の中ではみるみるうちに巨大な火球が練り上がる。

「グギャッ!」

 練り上げた火球を一気に放出するドラン。所謂ドラゴンブレスだ。

 火炎のブレスは周りの木々共々オークを焼く。オークは火に搦まれ全身を燃え上がらせながら地面に転がった。

 そこにヨルジュニアが黒炎の追撃を放つ。通常の赤い炎よりも消えにくい黒炎はオーク達をさらなる炎熱で焼き、腕やら足やらは炭化するほどの威力である。

 やがて動かなくなった2体のオーク。それを見やったドランは振り返って俺を見つめる。

 食べていいか?と問いかけられているように感じたので、

「いいぞ。喰いな。」

 と言ってやると

「グギャッ!」

 と嬉しそうに一鳴きすると炭化した手足ごとガツガツと食べ始める。

 ヨルジュニアは興味がないのか、奥の森をジッと見やる。

 するとドランが2体のオークを食べ終わるのと同時にさらに3体のオークが姿を現した。

 ヨルジュニアはこいつらの気配を感じ取っていたのかもしれないな。

「にゃー!」

「グギャッ!グギャッ!」

 2匹は同時に現れた3体のオークに向かって駆けだした。

 戦闘は2匹に任せておけばいいだろう。俺は俺で影の三次元的な動きの特訓を始めた。


 結果的に3体のオークはドランのブレスに焼かれ、ヨルジュニアが尻尾を鋭い剣のように刃に変えて切り刻んで倒した。

 今度はその場で食べ始める事も無かった為、俺はオーク達の死骸を影収納に収めた。

 まぁ流石に子供とは言え最強種たるドラゴンのドランにかかればオークごときでは相手にならないようだ。

 俺が影を伸ばして針を突出させるイメージを強く描いたところで戦闘は終了していた。

 これじゃあまり俺の特訓にはならないな。

 そんな事を考えていると森の陰から矢が飛来してきた。

 俺は飛んできた矢を掴み取ると射出された方角を見る。そこに居たのはゴブリンアーチャーだ。

 ゴブリン種にはゴブリン、ボブゴブリン、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングと様々な種類があり、ゴブリンアーチャーは弓矢の扱いに長けた通常のゴブリンだ。だが普通棍棒を振り回すだけのゴブリンとは異なり、的確に弓矢を取り扱う為に魔物のランク的にはボブゴブリンとどうとうとされている。

 その後も次々と矢が放たれるがドランの竜鱗を貫通するほどの威力はなく、ヨルジュニアも器用に右へ左へと跳びまわり矢を避ける。

 うん。コイツらも2匹で充分そうだな。

 俺は2匹に向かって声をかける。

「行け!」

「グギャッ!」

「にゃー!」

 森に潜むゴブリンアーチャー達に向けて2匹は飛び出して行ったのであった。


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