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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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403話 聖都セレスティア35

 祈りの間に向かう途中で緑鳥に会った。

「あら。おかえりなさいませ。何か良い品は見つけられまして?」

「あぁ。直接戦闘に関わる品は競り落としてきてないけど、料理の幅は広がったぜ。」

 それを聞いた緑鳥はおおらかに首を振る。

「そうですか。それはなにより。皆様祈りの間にて神器の特訓をされておりますよ。」

「神器?あぁそう言えばそんなのもあったな。」

「えぇ。邪神を討つのに必要なものになりますからあとで皆様にもお伝えしますね。」

「分かった。ひとまず祈りの間に行ってみるよ。」

「はい。わたしは昼までには政務を終わらせて合流いたします。」

 そう言って緑鳥とは別れた。


 祈りの間に到着するとちょうど金獅子達が部屋から出てきたところだった。

「お!黒猫達ではないか。戻ったのか。」

 金獅子に声をかけられた。

「あぁ。今さっき藍鷲にゲートを開いて貰ったんだ。」

「そうか。そうか。で、オークションとやらはどうであった?いや、ここで話すのもなんだから食堂に行くか。」

「だな。移動しよう。」

 と言うことで全員で食堂に移動する事にした。 


 食堂の机は2列20人まで座れるようになっているのだが、なんとなく全員の座る位置が固定されてきていた。

 反対側に金獅子、銀狼、蒼龍、茶牛、碧鰐、朱鉸が座り、こちら側は紫鬼、俺、白狐、紺馬、翠鷹、藍鷲が並ぶ。この場にはまだ緑鳥の姿はないが、いつも藍鷲の隣に座っている事が多いかな。

「で、どんな品を競り落としてきたんだ?」

 銀狼に尋ねられた。

 俺は影収納から2つの品を取り出してテーブルの上に置いた。

「この鉄鍋は火にかけなくてもお湯が沸く湯沸かし器だ。約5リットルまで入って300万リラで落札してきた。」

「湯沸かし器?」

「そう。湯沸かし器だ。」

「ふーん。湯沸かし器ねぇ。」

 銀狼は釈然としなさそうな顔である。

「湯沸かし器?これまた不思議な物を落札してきたな。」

 紫鬼も不思議そうに首を捻る。

 これだから料理しない人間にはこの湯沸かし器の素晴らしさがわからないのだ。

「火にかけなくてもお湯が沸くんどぜ?迷宮探索時なんか役に立つだろ?」

「なるほどなぁ。迷宮探索の時か。ふむふむ。」

 金獅子は訳知り顔だがホントに分かってるのかな?

「こっちの釜は?」

 銀狼がまた聞いてくる。

「こっちは水と米を入れて60分待つだけで米が炊ける釜、炊飯器だ。4300万リラで買ってきた。」

「炊飯器に4300万?!」

「そりゃぁ高い買い物だったなぁ。」

 銀狼が驚き、茶牛も高いと言う。

 これだから。この商品の素晴らしさが分かってない。

「いや、だって火にかける必要もなく一升が60分で炊けるんだぜ?凄いだろ?」

「うーむ。そもそも我等は普通に米を炊いた経験すらないからな。その凄さがわからん。」

 蒼龍が言う。

「だな。4300万も出して買ってきたのだ。黒猫にとっては素晴らしい商品なのであろうな。」

 金獅子が腕を組みながら言う。

「そうだな。料理しない人間にはわからないかもしれないが、これは凄い商品なんだ。」

「飯盒での炊飯ならワタシも経験がある。一升炊きともなればかなりの時間がかかるし、日の加減を見たりと結構大変だ。それが水を入れるだけで火にもかける必要がないなら簡単に米が炊けるな。」

「そう!そうなんだよ。紺馬は分かってくれるか。」

「まぁそれでも4300万リラ出すかと聞かれれば出さないけどな。」

「ぐっ。味方なしか。いいんだ。俺が使うんだから。」

「うむ。料理はいつも黒猫に任せっきりだからな。すまないと思うておるよ。で、戦闘に役立つような魔道具はなかったのか?」

「あぁ。特にめぼしい物はなかったよ。みんなもうすでに自前の武具があるし、王鎧があるから下手な鎧も不要だったしな。最後の方に『ペガサスの靴』が出品されてたんだけど、サイズが合わなくて諦めたんだ。」

「そうか。まぁ、確かに必要な武具はすでに揃っておるわな。」

 俺の説明に金獅子が頷いた。

「オレは片方が伸びる魔剣だからもう片方も魔剣が欲しいけどな。」

「ならオークションに来れば良かっただろうに。」

 銀狼が言うが俺はスパッと斬り捨てた。

「まぁその通りだな。事前に伝えておかなかったしな。」

「銀狼の魔剣は次の迷宮探索時に期待しようではないか。で、次はどっちに行くか決めようではないか。」

 金獅子が言う。ここで言うどっちってのはワンズの北に位置する嘆きの迷宮か、モーノ共和国とクロムウェル帝国の間に位置する覇者の迷宮かの2択だと言う事は皆の共通認識だ。

「位置関係で言ったら嘆きの迷宮の方がワンズとも近いですし、藍鷲さんのゲートがあれば2、3日で行けますよね。」

「ウチは迷宮の位置には詳しくないからなぁ。白狐はんの言う通りなら近い方からのがええんとちゃう?」

「次はワタシ達も一緒に行けるのだろう?なら近い方からにしたいな。」

 翠鷹も紺馬も白狐が言う近い方に1票。

「儂はどっちも知らないからなぁ。どっちでもいいぞぉ。」

「ワシもじゃ。大陸のことはまだよく分かってないからな。任せる。」

 茶牛と紫鬼はどっちでもいいと。

「ワイはきっと王化が3時間継続するまでは居残りやろし、任せるわ。」

「わたしも総魔力量を増やしたり王化継続時間を伸ばしたりとで居残りですね。」

 朱鮫と藍鷲は居残りだと。

「まぁ近い方が時間も取れるし、いいんじゃないか?」

「うむ。皆がそう言うのなら嘆きの迷宮を先に目指すか。」

 銀狼が賛同したところで金獅子が締めた。

 と言うことで次の甲蟲人侵攻が終わったら嘆きの迷宮に向かうことが決定したのだった。


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