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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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401話 オークション10

「炊飯器に4300万もかけよってからに。そんなに高性能なんかい?」

 横から朱鮫に言われた。

「これだから普段料理しない奴は。米を炊くのがどんなに面倒かを知らないんだな。」

「あ、私は大変さを知ってますよ。水に漬けたり火にかけたり蒸したりで1時間半はかかりますよね。しかも火にかけてる間は掛かりっきりになりますし。」

 白狐が言う。

「そうなんだよ!わかってくれるか。面倒なんだよな。それが水と一緒に米を入れるだけでたった60分で炊き上がるなんて夢のようじゃないか?」

「大袈裟やなぁ。黒猫殿は。でも時間短縮だけやのうて手間も減るっちゅうことやな。なかなかいい買い物したやんけ。」

「だろ?5000万リラまでは出せたな。」

「ほな、安う買えて良かったなぁ。」

 翠鷹にも言われた。

「あぁ。700万OFFって考えたらかなりお得だよな。」

 そんな事を話しているうちにオークションは進む。今は魔法の力で自動走行する自転車の落札が行われている。

 どうやらハンドル部分に握り込むすが付いているようで、左側にブレーキ、右側に前進スイッチらしい。そのスイッチを握り続ける事で自走するらしい。

 とは言え、その速度は馬と比べるまでも無い。遠地なら断然馬に乗るな。街中で乗る分には便利かもしれないが、街中に急な坂でも無い限り不要だな。

 自動走行する自転車は540万リラで落札されていた。


 その次はいよいよマジックバックの登場だ。

 ショルダーバック程度の大きさで容量は100個。これはバックの口に入る大きさの物ならなんでも100個まで入ると言う事だ。

 スタート価格は5億リラ。さすがに手持ちの半分程度である。落札にはそれ以上かかる事、間違いなしなので迷う。

「んー。やっぱり高いな。」

「黒猫殿には影収納があるやんか。マジックバックは不要やろ?」

 不思議そうに朱鮫に聞かれた。

「いや、俺が使うんじゃなくて紺馬にどうかなって。矢筒だけじゃ足りなくなった時に手持ちにマジックバックがあればすぐ補充出来るじゃん?」

「なるほどな。紺馬殿に、か。」

「お、でも紺馬さんなら王化した際には精霊の力で風の矢やら火の矢やらを作られてたので、普通の矢は不要だと思いますよ?」

 白狐に言われて驚いた。

「え?そうなの?あれって普通の矢を燃やしたりしてるんじゃなくて?」

「えぇ。弓矢の弦を弾くだけで矢が作られるそうです。」

「あ、そうなんだ。んじゃマジックバックいらないか。」

「ですね。競り落とす前に気付いて良かったですね。」

「だな。無駄な買い物するところだった。」

 なんだ。マジックバックなんて最初から要らなかったのか。危うく必要ないものに全財産の半分以上かけるところだったぜ。

「紺馬殿は魔法の矢を放っとったんやな。後でどうやってるんか聞いてみよ。」

「精霊の力を借りとる言うてましたえ?朱鮫はんには真似出来んやろなぁ。」

「そうやの?なんや、残念やな。」

 両サイドの朱鮫と翠鷹が話するには多少大声を出す必要がある。まぁそこまでデカイ声で喋ってないから大丈夫だろう。

 結局マジックバックは8億3500万リラで落札されていた。


 次はいよいよ秘匿商品の登場だ。

 バニーガールがタイヤの付いた台に一抱え以上はありそうな大きさを持つ品を運んできた。まだ布がかけられて中身は分からない。

「さぁーて、遂に秘匿商品の登場です。今年の秘匿商品は凄いですよぉ。さぁーではご覧頂きましょう。秘匿商品はこれだっ!」

 その司会者の声に合わせてバニーガールがかけられた布を捲った。

 出てきたのは1m程の船の模型だった。あれが秘匿商品?

「なんと、これは飛行船の模型!しかも手元のボタンで実際に飛ぶ!飛んでる飛行船の視点をこのゴーグルで確認可能!ただの模型じゃありません!実際に動かせるんですっ!!ここで実演してみましょう!」

 司会者が握り込める程の大きさのボタンの付いた板を手に取る。そして次の瞬間、飛行船は宙に浮いた。

「「「「おー!」」」」

 観客達にどよめきが起こる。

 そのまま飛行船の模型は俺達の頭上を走り、またステージへと戻っていった。

「ご覧頂いた通り、動きはスムーズ。誰でも簡単に操縦できます。さぁースタート価格は20億リラ。入札スタートですっ!!!」

 司会者の声にも熱が入る。ただ飛ぶとは言え模型に20億リラってどんだけだよ。と思っていたが。

「21億!」

「22億!」

「22億5000万!」

「23億!!」

 どんどん価格が上がっていく。

 俺はこっそり朱鮫に聞いた。

「なぁ、あれってそこまでの品なのか?」

「なに言うとんねん!あれは凄いで。なんと言っても飛行船や。模型とは言えきちんと飛行しよる飛行船や。あの技術が転用出来たら実際に人を乗せて飛ぶ飛行船が造れるかもしれへん。今まで机上の空論言われてた飛行船が実際に目の前にあるんやで。しかもゴーグルで視界を共有出来るときた。ただの模型ちゃう。上空からの視点がある言う事は偵察やらなんやらに使こうてもええ。実に素晴らしい。素晴らし過ぎる品やで!!」

 思ったよりも凄い熱量で力説された。人が乗れる飛行船?凄いじゃないか!

「あんなもん、魔術師達が欲しがるでぇ。落としてから金のある魔術師に貸し出して調査させてもええ。そうなれば落札額なんてすぐにペイ出来るくらいの金が手に入るやろしな。落札希望者は後を絶たんやろな。」

「へぇ。飛行船ですか。そんな構想があったんですね。」

「あぁ。空を飛ぶのは人類の昔っからの夢やからな。転用で言うたらもしかして人自身を浮かせる事まで出来るかもしらへん。そうなれば人は自在に空を飛べるようになる。夢の実現の第一歩や。」

 白狐の問いに朱鮫が答える。

 そうこうするうちに価格は30億リラを超えた。

 どこまで上がるのか。さすがに手持ちの額を遙かに超えている為、参加は出来ない。ってか俺が落としても宝の持ち腐れだ。

 俺達は静に落札価格が上がっていくのを眺めていた。


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