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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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399話 オークション8

「皆さん、終わりましたよ。もうすっかり従順です。」

 暫く頭目の悲鳴が続いたかと思えば白狐が廃墟の外まで俺達を呼びに来た。

 戻った先では頭目の周りには血の飛び散りが散見され、縛り上げた他の男達も恐怖の表情を浮かべて震えていた。

 ここで何が行われたのかは聞くまい。

「さて、さっき話した事をもう一度皆さんにお伝えして下さい。」

「は、はい!1週間前に我々はヌイカルド連邦国のベルベロッド男爵邸に忍び込み、あのベルを始めとしたお宝を盗みました!」

「で?」

「はい!魔道具らしい品があった為、近々開催されるオークションに出品するべく、そちらのハチヤスジさんに品をお渡ししてオークションに出品して頂きました。」

「で?」

「はい!取り分は8対2でオークションに出す手数料として売り上げの20%をハチヤスジさんに支払う予定でした。」

「うん。よく出来ました。」

 すっかり白狐に怯えて言われるがままに全てを告白した頭目。あんなにすぐ人が変わったように素直に話すなんて怖ぇ。何されたんだろ。

「これで証拠は揃いましたな。後は兵舎に運んで裁きを受けさせましょ。もちろんその前にハチヤスジはんにはオークションへの出品の取り下げを行って貰います。確かキャンセル料は落札価格の30%やったかね。まぁ盗品を扱った罰や思うて受け入れなさいな。」

 翠鷹が言って俺達は廃墟を後にする事にした。

 そして闇ギルドの男達を引きずって兵舎に受け渡し、ハチヤスジを伴ってオークション会場に戻った。


 落札した者が少しごねたが、無事に『呼鳥のベル』のオークション出品は取り消された。

 ハチヤスジにはキャンセル料として落札価格の30%の102万リラと、盗品を出品した罰則金として1億リラ、さらに今後オークションへの出品権の剥奪と言う事になった。

 自業自得だから仕方ない。

 オークションの支配人には実は盗まれたベルは俺達が確保した事を告げ、捜索を打ち切って貰った。

 そして翠鷹の屋敷に戻った俺達。

 待っていたカタリーナお嬢様には誰よりも早く朱鮫が顛末を話し始めた。

「カタリーナちゃん、お待たせ。もう大丈夫や。オークションへの出品は取り下げられてベルは持ち主に返す言う事で話は纏まった。もう逃げ回らんでええよ。」

「本当ですか?ありがとうございます。」

「構へん構へん。困っとる人を助けるんは当たり前や。」

「ありがとうございます。これで1週間後のイベントは無事に開催する事が出来ます。本当になんとお礼を言ったら良いのか。」

「ほんまに気にせんでええよ。困った時はお互い様や。知っとるか?世界は助け合いで出来とるんやで。」

「ふふっ。助け合い、ですね。わたくしに出来ることがあればいつでも屋敷を訪ねて下さい。出来る限りのお手伝いをさせて頂きますので。」

「せやな。そん時は頼むわ。ところで夕飯は食べた?ワイらはまだなんやけど、良かったら一緒にどうや?」

 朱鮫が勝手に食事に誘った。普通俺達にも相談するところじゃね?まぁいいけど。

「あ。わたくし今日は夜オークション会場に潜入する事が決まっていたので6時頃に夕食は済ませてしまおましたの。」

「あ、そうか。ならまた今度やね。ヌイカルド連邦国に行った時にでもまた誘うわ。」

「はい。お待ちしております。ではわたくしはこの辺りでお暇させて頂きます。本当にありがとうございました。」

 最後に一礼してカタリーナお嬢様は屋敷を出て行った。

 朱鮫は最後までその後ろ姿を見送っていた。


「もしかして、朱鮫さん、カタリーナ嬢に惚れました?」

 白狐がズバリ突っ込む。それは俺も感じてた。

「な、何言うとんねん。誰が惚れるかぁ。」

「そんな事言って、顔が真っ赤ですよ?」

「別に惚れてもええやん。カタリーナ嬢も朱鮫はんの事、気になっとるかもしれんよ。なんせ自分のピンチを救ってくれた人やし。」

 白狐と翠鷹が尚も詰め寄る。

「べ、別に惚れてないわ!ちょっと可愛いとは思うたけど、惚れるまではいっとらん。」

「可愛いとは思ったんだぁ。」

「若いなぁ。ええなぁ。青春やん。」

「うっさいわ。ええから夕飯食べに行こうや。まだ翠鷹殿のお薦めの店は開いとるんかいな?」

 朱鮫が話を逸らした。確かに腹減ったな。

「えぇ。夜遅くまでやってるのが人気の店やからまだ入れると思うわ。」

「ほなさっさと行こうや。ワイ、もう腹減って腹減って背中とお腹がくっつきそうや。」

「俺も流石に腹減った。問題は解決したんだし、さっさと行こうぜ。」

「そうですね。私もお腹空きました。」

「そうやね。行きましょか。」

 こうして俺達は翠鷹が薦める路地裏のハンバーグ屋に向かった。

 店はなんと深夜3時までやっているらしい。

 お薦めのハンバーグを頼むと俵型に形成された肉塊が熱々の鉄板に乗ってやってきた。店員さんが俵型のハンバーグを2つに割って鉄板に切り口を押さえつける。

「レアでも食べられる新鮮なお肉を使用しておりますので、お好みで焼き加減を調整してお食べ下さい。ステーキソースもおりますが、お薦めは塩になります。」

 ハンバーグは粗挽き肉で口に入れるとホロホロと崩れるほどに柔らかい。だがしっかりと肉を噛む弾力も感じてかなり美味かった。


 こうして色々とあったオークション2日目は過ぎていった。


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