表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

398/552

397話 オークション6

 シルクハットを被った恰幅の良い紳士風の男がこちらに気付いた。

「おぉ。これは軍師様。まさか盗人風情の件で軍師様自らがおいでになるとは。」

「ふむ。こちらの用件は分かっているようですなぁ。それやったらまずはあのベルの出品者を教えて頂けますか?」

 翠鷹が単刀直入に問う。

「出品者…ですか?はて?何故に今出品者が関係してくるので?」

「支配人には先に伝えておきますよって、他の者にはまだ内密に。実はあのベルは盗品であった可能性が出てきましてなぁ。」

「な?!盗品ですと?オークションへの盗品の持ち込みは重罪ですよ。そんな馬鹿な真似をする者がおりますかな?」

「そうやな。もしかしたら出品者も盗品と知らずに仕入れたんかもしれへん。そうやけど盗品であった場合には速やかに持ち主に返却する義務があります。そうでなくとも高価な魔道具やからね。万が一どこぞの貴族から盗まれた物だったなんて事になったら大事やしねぇ。」

 その翠鷹の言葉に支配人は身震いする。

「それは考えたくもありませんね。ましてやオークション事務局が不正入手に関わっていたなんて事になったら大変です。わかりました。すぐに出品者を調べさせます。」

 支配人は重そうな体を弾ませるように事務局事務所になっている楽屋の1つへと向かった。


 楽屋の前で暫し待つと支配人が帳簿を片手に戻ってきた。

 帳簿を捲りながら支配人が言う。

「出品者はヌイカルド連邦国の商人、ハチヤスジ様となっております。オークション期間はララ・ダウトに赴いていらっしゃるそうで、ここから500cmほどの距離にある『微睡み亭』に宿泊なさっているそうです。」

「『微睡み亭』ですか。知っとりますわ。結構高級な旅館やったと記憶してます。」

「ですな。ララ・ダウトでは1、2を争う高級宿でございます。」

「ほなそこに行ってみようや。そのハチヤスジって商人を探さにゃ話が進まへん。」

 朱鮫が急かす。

「そうやね。じゃあ支配人、くれぐれも内密に。宜しゅう頼んますね。」

 翠鷹は支配人に一声かけてオークション会場の歌劇場を後にした。


 暫く進むと見事な旅館があった。

 これが『微睡み亭』で間違いないだろう。

 翠鷹も迷いなく中に入っていく。

「支配人はおる?」

「あ、これはこれは軍師様。支配人なら奥におります。すぐ呼んで参ります。」

 こう言う時に法国の軍師ってのは便利な肩書きだな。すぐに話が進む。

「おぉ。これは軍師様ではございませんか。今日はどの様なご用で?」

「今日こちらに泊まっていると言うハチヤスジって商人はんに用があってな。部屋まで案内頼めますかぇ?」

「はい。ハチヤスジ様ですね。確かにお泊まりになられております。ささ、こちらにどうぞ。」

 宿屋の支配人について廊下を歩く。

 流石に高級旅館って感じの内装だ。壁にはもう達筆過ぎてなんて書いてあるのかわからない書道が額縁に入れて飾られている。

 廊下にはお決まりの壺。花瓶が並ぶ。城とか貴族の屋敷でもよく目にするけど、1種のステータスなんだろうな。


 一番奥の部屋まで到着すると支配人が言う。

「こちらがハチヤスジ様のお泊まりになられているお部屋になります。では、わたくしはここでお暇させて頂きます。」

 それだけ言うと支配人は元来た道を戻って行った。あとの事は旅館はノータッチって事だろう。

 翠鷹が静かに扉をノックする。

 コンコンコン。

「はぁーい。こんな時間に誰だ?」

 くぐもった声が聞こえ、扉が開かれると、そこには肥満ここに極まれりと言った風貌の禿げ上がった中年男が出てきた。

「法国軍部の者です。オークションに出品されとる品について少しお話を。」

 強引に肥満男を押しのけて翠鷹が部屋に入っていくので、俺達も後に続く。

「おいおい!軍部の人間がなんの用だ?」

「アンタの出した野鳥を呼ぶベルが盗まれたんは聞いてはるやろ?」

 部屋の中央まで移動した翠鷹が尋ねる。

「んあ?あぁ。聞いた。全く警備はどうなっとるんだ。軍部も警備に付いていたんじゃなかったのか?見つからなかった場合の補償はどうしてくれる?」

「ほな、話が早いわ。その盗まれた品が元々とある貴族の屋敷から盗まれた物だと言う証言があるんよ。その辺り詳しゅう聞かせて貰おうかしら?」

「な、なに?わしが盗品を出品したと言いたいのか?」

「まぁ噛み砕いて言えばその通りや。あの出品されたベルが貴族の屋敷から盗まれた物だと言う証拠はある。問題は誰が盗んだのか、それと盗品と知ってオークションに出品したんかどうかや。」

「わしは知らんぞ。あの品は別の人間から持ち込まれた物だ。代わりに商人たるわしにオークションに出品して欲しいと頼まれただけだ。」

「ほな、誰に頼まれたんや?」

 朱鮫がメンチ切ってハチヤスジに迫る。

「『虎竜会』と名乗る奴らだ。わしはそいつらに頼まれただけで盗品だったなんて知らなかった。」

「『虎竜会』だと?」

 俺はその名前に聞き覚えがあった。

「知ってるんですか?」

 白狐に聞かれたので答えてやる。

「あぁ。ケイル王国に本拠地を置く闇ギルドにそう言う名前があったはずだ。結構大手らしくララ法国やヌイカルド連邦国にまで手を広げているって聞いたな。」

 どうやらきな臭い話になってきたようだな。

 夜はまだ続きそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ