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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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393話 オークション2

 その後もオークションは続き、様々な効果を持つ武具、例えば無尽蔵に針の飛び出す盾や、重さの変わる大剣、鎖が伸びるモーニングスターや土塊で出来た鎧、光り輝く長剣や叩いたら爆発を起こすウォーハンマーなどなどが出品されていた。

 正直、武具に関して言えば俺達には王鎧があり、すでに各々が得意とする武器の最上級品を所持している。

 だから特に必要とするものは思い浮かべられずこれと言って欲しいものはなかった。

 だがパンフレットにもある通り武具以外の品々も多々出品されている。

 有名なところでは様々な物を収納出来るマジックバックや太陽光で動く時計、一定距離間での通話が可能な送受信機。

 他にも電球のない照明灯、片手で持てる位の大きさの温風・冷風の切り替えが可能な筒の送風機、熱を発する鋼の板が付いたシワ取り機、体重移動によって移動方向の変わる車輪付きの板などなど。

 中には何に使うのか分からないような微細動を繰り返す棒やら腕に巻くと反射光にて光る柔らかい板状の腕輪、歯に嵌めるとピカピカと光る入れ歯などがあった。


 あの一定距離間での通話が可能な送受信機を元に作られたのが俺達が使っている通信用水晶だろうか。

 マジックバックについては俺は影収納があるから不要だが他のメンバーには必要だろうかとも思ったのだが、影収納とは事なり入れている間にも時間経過が進むらしく食材などは入れっぱなしだと傷むそうだ。

 まぁその点を考慮したとしても沢山の矢を持ち歩く紺馬当たりには矢筒の代わりにいいのかもしれない。

 と、思ったのだが、なんと最低落札額は13億7千万リラから!

 流石に高いな。

「高ぇ。」

 思わず思った事が口に出ていたらしい。

「マジックバックはその容量によって値段が大きく変わりますよってからに。もう少し容量が少ない物なら1億リラくらいの物も出てくる事もあるんよ。」

 翠鷹が隣から教えてくれた。

 容量が小さくとも白金貨1枚とはやはり高級品だな。

 明日以降もマジックバックの出展はあるようなのでそちらに期待するかな。


 その後も様々な迷宮遺物の魔道具、新規開発された一点物の魔道具などが出展され、35点目をもって1日目のオークションは終了した。

 この日だけで約52億リラ、大白金貨にして52枚もの売上金額を叩き出したそうだ。

 あるところにはあるんだな。金って奴は。今まで悪人以外の処には盗みには入っていない。善人の貴族、大商人の中にも大金を持つ者がいるって話だな。

 真っ当な商いや統治で集めた金でもそこまでの高額になるってんなら相当やり手の商人や領主だったりするんだろう。俺達のこの世界を救う為の行動に対してもスポンサーになってくれればいいのにな。

 いや、無理か。甲蟲人についての話は一国の王や戦う兵士達だけに情報統制している。じゃなければ今頃各地で暴動が多発していることだろう。

 そんな中で何も知らない商人や貴族に打診したとて危機感のない者達には通じないだろうしな。


 俺達はオークション会場の歌劇場を後にした。

 時刻は21時。かれこれ6時間も会場に居たことになるが全くそこまで時間が経っていたとは思わなかった。結構オークションに引き込まれてたんだな。確かに見ているだけでもかなり楽しめた。観客席が満員で埋まるってのも納得した。

「結構見応えありましたね。あんなにポンポン価格が上がっていくのを見るのは初めてでした。」

 白狐も楽しんだらしい。

「あの温風冷風の切り替わる筒の送風機なら模倣して作ることも可能かもしれへんな。ヒートの魔術とアイスの魔術をボタンで切り替えて、ブロウの魔術で風を送る。あ、でもダメやな。そこまでの機能になると片手で持てるようなサイズ感にはならんか。それよりはシワ取り機の方が組み込む魔術も少なくて済むか。タワーの者もオークションに参加しとったかな。となるとどちらが先に作れるか競争になるな…。」

 朱鮫は1人でぶつぶつと呟いている。迷宮遺物を魔道具で再現する事を考えているようだ。

 でも相手は出所不明な迷宮遺物だ。そう簡単に模倣出来ないだろうに。

 腹は減っているが夕飯は屋敷でメイドさん達が用意してくれているというので、俺達は屋台に寄ることはせずに真っ直ぐ翠鷹の屋敷に戻った。


 屋敷に戻るとすでに夕食の準備がされており、メイドさん達に出迎えられた。

 今日のメニューは彩り鮮やかなパプリカのサラダに鯛のカルパッチョ。

 骨付きラム肉の香草焼きにカボチャのポタージュだった。

「どれも美味しいなぁ。流石メイドさんの料理やでぇ。」

 ワイン片手に朱鮫は急いで食べていく。

「そんな急いで食べんでもよろしいわ。ラムチョップはおかわりもあるんやて。好きなだけ食べてな。」

 翠鷹は慣れているのか綺麗に骨付きラム肉を食べていく。

 白狐も普通に食べているが俺はどうこの骨付きラム肉を食べればいいのか迷っていた。朱鮫のように素手で掴んで食べるのはありなのか?翠鷹や白狐のようにフォークとナイフで食べるのが正解か?こんなお洒落な料理は食べた事がない。

 食べ方のマナーとかも学ぶべきだったか。思わぬ所で俺の常識の足りなさが露呈した。

「黒猫はんはラム肉は嫌いでしたか?なんなら他のものを用意させますよって。言うてや。」

 翠鷹に言われたので俺は思いきって聞いてみる。

「これは骨を手で持って食べるのが正解か?フォークとナイフで食べるのが正解なのか?」

 それを聞いて朱鮫がポカンとする。

「ほぇ?そんなん好きに食べたらよろしいがな。」

「そうやで。好きに食べたらいいんよ。身内しかおらへんのやし。マナーなんて気にせぇへんよ。」

「クロさんはマナーを気にしていたんですね。後で教えてあげますよ。今日はお腹空いてるでしょ?早く食べましょうよ。」

 朱鮫、翠鷹、白狐が一斉に答えてくれる。好きに食べたらいいのか。

 ちょっと緊張してたのがほぐれた。

 俺は手掴みで骨付きラム肉を頬張る。

 美味い。香草の香りがフワッと広がり肉もホロホロですぐ噛みきれる。

 とにかく美味かった。腹減ってたのもあるがそれを差し引いてもかなり美味い。

 やっぱり後でメイドさん達に料理を教われるようにして貰おうかな。


 翌日のオークションも15時かららしい。明日もゆっくり寝てられるな。

 さて、明日は欲しい物に出会えるだろうか。楽しみである。

 そんな事を考えながら眠りにつくのであった。


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