389話 聖都セレスティア34
甲蟲人侵攻を防いだその日は珍しく宴会をする事になった。
ここまで4度の甲蟲人侵攻を終えてまだ欠員がでること無く防ぎきっていることを祝おうと朱鮫が言い出したのだ。
神殿に酒の貯蔵などない為、酒の準備は金獅子と茶牛が買い出しに行った。
俺は白狐と緑鳥に手伝って貰って唐揚げやポテトフライなどのパーティー料理を作る。
オードブルなんかは神殿の調理人達が腕によりをかけて作成してくれた。
聖都に戻ってからなんのかんのと準備を始め、夜8時過ぎに宴会が始まった。
「えーでは、4度の甲蟲人侵攻を防ぎきり、誰も死者を出さずに来れたことを祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
金獅子の音頭で乾杯して各々好きに飲み食いした。
「おぅ、この唐揚げはニンニクが効いてて美味いな。これはクロが作ったやつじゃろ?」
唐揚げを食べた紫鬼が聞いてくる。
「そうだ。よく分かったな。俺が作ったって。」
「ワシもなかなかに長くお前さんの料理を食べてきておるでな。なんとなくクロ作の料理は分かるようになってきておるわい。」
「どれどれ。」
それを聞いた銀狼も唐揚げにフォークを伸ばす。
「おぉ!確かにニンニクが良い味出してるな。美味いぞ黒猫。」
「そいつは良かった。今回は揚げる作業を緑鳥がやってくれたんだぜ。」
「なに?緑鳥が?順調に料理の腕を上げているようじゃな。」
「いえいえ。わたしなどまだまだです。」
紫鬼に言われて顔を赤くする緑鳥。
「いや、揚げ物が出来たら相当な料理の腕だろう。オラァの妻も揚げ物は難易度が高いと言ってなかなか出してくれないからな。」
唐揚げを頬張った碧鰐も緑鳥に向かって言う。
「私も鶏肉切ったりと手伝ったんですよ?私には何かありませんか?」
白狐も何か言って欲しそうだった。
「おぉ。やっぱり斬ると言ったら白狐だな。どれも食べやすいサイズじゃ。」
「そうだな。綺麗に斬られてると思うぞ。」
「なんか料理の事を賞められている気がしません!」
紫鬼と銀狼が必至にフォローしたが白狐は気に入らなかったようだ。
「いやほんまに綺麗に斬られとるよ。筋張ったところがない言うのは筋に隠し包丁入れたんやろ?料理上手な感じするやんか。」
翠鷹もフォローする。料理上手ってのが気に入ったらしい白狐は目を輝かせながら言う。
「分かりますか!そうなんです。隠し包丁をマスターしました。やっぱり女性の方が細かいところを分かってくれますね。」
と上機嫌になった。
金獅子と茶牛、朱鮫は料理より酒に夢中だ。
「うむ。この茶牛が選んだワインは芳醇な味わいで舌触りも良いな。」
「そうだろぉ。これはドワーフが作ってるやつでなぁ。よくドワーフ王国でも飲まれてるんだわぁ。ブドウ畑もドワーフ王国内にあって、収穫時期なんかは観光地としても結構有名なんだぁ。」
「やっぱ酒はいいなぁ。1日の疲れも吹っ飛ぶ言うもんや。」
「朱鮫もなかなか飲める口だな。」
「ワイもマジックヘブンでは毎日晩酌しとるからね。飲まないと寝付きが悪いくらいやわ。」
「そうかそうか。ならもっと飲め。」
金獅子が朱鮫のグラスにワインを注いでやっている。
「せや。明後日からララ法国首都ララ・ダウトで予定通り魔道具のオークションが開催されるって話やわ。黒猫はんに朱鮫はんは行くんやろ?」
翠鷹が言ってきた。
「あぁ前に言ってたやつか。誰でも参加出来るのか?」
「明日整理券が配られるからそれまでにはララ・ダウトに行っとく必要があるわなぁ。」
「そうか。前日に整理券が配られるのか。」
「黒猫殿が行くんやったらワイも行くで。久々のオークションや。どんな品が出品されとるか楽しみやな。」
ワイン片手に朱鮫が答える。
「オークションは明後日だけなのか?」
「いや3日間開催や。大体1日に30点、合計約100点ほどが毎年出品されるんよ。」
「へぇ。流石に翠鷹は詳しいな。」
「街を上げての祭りみたいなもんやからね。兵士も警備に駆り出されるんよ。」
「へぇ。結構大掛かりなんだな。」
「あ!クロさんが行くなら私も行きますからね。」
白狐が手を上げる。
「他の皆はどうする?」
俺は周りを見渡して話を振る。
「俺様はいい。」
「オレもパスだな。」
「わたしは聖都で政務がありますので不参加で。」
「オラァ魔道具に興味はないな。」
「儂も行かなくていいだぁ。」
「ワタシは行かない。」
「我も興味はないな。」
「あ、わたしも魔力の底上げがしたいので不参加でお願いします。」
みんな行かないらしい。
「せやったらウチも入れて4人やね。4人くらいなら整理券も簡単に手に入るやろから問題ないわ。」
って事で4人で行くことになった。
宴会は遅くまで続き、眠くなった者から自室に戻って行き、飲み足りない者は継続して飲み続ける事になった。
俺は1度部屋に戻ったんだが喉が渇いたので再び調理場に行くために食堂を通った。
「ガハハハハッ。そうかそうか。」
金獅子の愉快そうな声が聞こえる。
食堂では金獅子と碧鰐がまだ飲み続けていた。
「碧鰐とこんなに気が合うとは思わなかった。決めたぞ。俺様が死んだ時には俺様の王玉は貴様に預けよう。」
「ん?ならオラァが先に死んだらオラァの王玉は金獅子に預けるだ。」
「盛り上がっているな?何の話してるんだ?」
俺も話に加わる。
「なに。碧鰐が今の奥方を選んだ理由なんだがな。尻の大きさに惹かれたらしいのだ。」
「女子は尻の大きさが一番だべ。」
「そうだな。乳など所詮は尻の代用品だからな。女は尻のデカさに限るわ。ガハハハハッ。」
「アッハハハハッ。」
2人とも楽しそうである。
「まぁ、白狐を嫁さんにした黒猫には分からないべ。」
碧鰐が言ってくる。
「そうだな。白狐は乳のデカさはあっても尻はそうでもない。黒猫は乳派だろう?尻の良さを説いてもわからんだろうさ。」
「べ、別に乳のサイズで白狐と結婚したわけじゃねぇよ。」
「どうだかな。あのサイズはなかなかおらんからな。」
「黒猫は絶対乳派だべ。」
酔っ払いの戯言には付き合いきれない。
「あぁ俺はどうせ乳派だよ。」
俺はそう言い残し調理場に水を飲みに向かった。
食堂からはその後も楽しそうな笑い声が聞こえた。
尻派だ乳派だどっちでもいいや。俺は自室に戻って寝るのだった。




