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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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388話 甲蟲人:蟻14

 白狐が特攻してから暫くして氷漬けにされていない蟻の甲蟲人の姿はなくなった。

 あとは足止めされた、もしくは全身が凍りついた蟻を屠るだけの簡単な仕事である。

 だがまだ上半身は自由な奴も多いからな。兵士達には充分注意して欲しいところだ。


 それから暫くして北側に生きている蟻の姿はなくなった。

「北側はこれで終わりですね。中央付近も終わりそうです。」

 合流した白狐が言う。

 確かに見やれば中央付近で戦っている者達も圧倒的に兵士達の数が勝っており、蟻の姿は少ない。

「でも黙って見てる訳にはいかないだろう。俺達も中央に向かおう。」

 俺と白狐は中央部へと駆けていった。


 途中合流した銀狼から中央部は大丈夫だから南側に行くようにと言われたので白狐と共に南側へと走った。

 だが南側も兵士達の頑張りもあって残る蟻の姿は少ない。

 俺達は茶牛と翠鷹の姿を探して戦場を駆けた。

 茶牛達の姿は最前線にあった。

 どうやら茶牛が地震を起こして蟻の足止めをしている間に翠鷹と兵士達による攻撃を仕掛けているようだ。

 あまり前に出て茶牛の邪魔をするのもなんだから俺達は残った蟻の駆除に回った。


「お?黒猫達でねぇかぁ。北側は片付いたのかぁ?」

 茶牛がこちらに気付き声をかけてきた。

「あぁ。北側は朱鮫の魔術もあって順調に殲滅出来た。中央付近も銀狼達が駆除中でそろそろ片がつきそうだ。」

「んじゃ残りは南側だけだなぁ。儂ももう一踏ん張りだなぁ。」

「茶牛はん、手が止まってはるよ。もうちょっとやし気張りや。」

 翠鷹が声をかける。

「おうよぉ。アースクエイクぅ!」

 局所的な地震が起こり蟻の脚を止める。

 俺と白狐も最前線に躍り出た。

 バランスを崩して脚が止まった蟻の対処は簡単だった。

 白狐も一刀のもとに蟻の首を落としていく。俺も負けじと黒刃・右月と黒刃・左月を振るう。

 そして暫く経った頃、戦場に立っている蟻の姿は一掃されたのであった。


 その後は後方に下がって緑鳥達とも合流した。

 やっぱり藍鷲は魔力切れを起こしていたようだ。

 休めば回復行くようだが、まだララ法国の兵士達を送れるほど長時間ゲートを開くことは出来なそうだと言う。

「せやったらウチはうちの兵士達の被害状況を確認してきますわ。」

 翠鷹が一纏まりになっているララ法国兵士達のもとへと駆けていった。

「うむ。ならワシもケイル王国の被害状況を聞いてくるかな。自ら鍛え上げた奴らだからな。気になる。」

 そう言って紫鬼もケイル王国の将軍の姿を求めて離れて行った。

 代わりに近づいては来たのは茶色い髪を坊ちゃん刈りにした、装備品からしてケイル王国軍の兵士だと思われる青年であった。

「あ!白き淑女!やはり神徒の方でしたか。僕の名前はビオデルテと言います。先程は危ないところを助けて頂きありがとうございました。」

 …白き淑女?その青年の目は明らかに白狐を見つめている。戦場で白狐に助けられたんだろう。

 白き、は見た目が白髪だし分かるんだが、戦場での白狐の姿を見て淑女ってなるかな?白き剣鬼とか白き死神とかならわかるけど。

 そんな事を考えていたらその青年、ビオデルテは驚くような事を言い出した。

「白き淑女、お名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」

「その白き淑女と言うのは私の事ですか?私は白狐と言います。」

「白狐様。なんと美しい響き。このビオデルテ、戦場での貴女様の姿に一目惚れしました。どうか僕とお付き合い頂けませんでしょうか?」

 お付き合いとな?!戦場での白狐を見て一目惚れとかどんだけMっ気があるんだろうか。

「お付き合いですか?すいません。私はすでにこの方の妻なのです。ですから貴方とお付き合いは出来ません。」

 そう言って俺の腕を抱く白狐。

 それを見たビオデルテ青年は目を剥く。

「妻?!僕は人妻に惚れてしまったと言うのか…。こんな背の低い男にすでに奪われていたなんて。」

 あ?誰の背が低いって?

「でも僕は諦めませんよ!いつか貴女を振り向かせる立派な兵士になって見せます!ですからその時には改めて僕の告白を聞いて下さい!」

「まぁ、聞くだけならいいですけど?」

「ホントですか?言質は頂きましたからね。待っていて下さい。僕も神徒の一員に負けないくらい強くなって見せます!」

「えぇ。それは素晴らしい目標ですね。頑張って下さい。」

「おぉ!貴女から頑張れと言って頂けるなんて、感激です!僕頑張ります!」

「はい。影ながら応援しておきますね。」

「ありがとうございます!ではまた!」

 そう言い残しビオデルテ青年は去って行った。

「えへへへ。私モテちゃいました。妬きました?」

 ニヤけながら言ってくる白狐。

「いや。世の中には物好きもいるもんだな。」

「あ!それどう言う意味ですか!?」

 そんな会話をして戯れていると紫鬼と翠鷹が戻ってきた。


「ララ法国兵士には2000強の死傷者が出てしまいましたわ。約1割の戦死者ですわな。」

 翠鷹が言う。

「ケイル王国も1割近い死者が出たそうじゃ。まぁ敵の数から考えれば少ない方だったと将軍は言っておったがな。」

 紫鬼もケイル王国の被害状況を聞いてきた。

「1割か。あれだけの数を相手にと考えれば多いのか少ないのか。」

 金獅子が呟く。

 どうやら敵将との戦いで負傷したらしく緑鳥の聖術を受けて休んでいたようだ。

「まぁなんにせよ甲蟲人の撃退は出来たんだ。街に被害が出なかっただけマシだろうさ。」

 銀狼が続く。

「せやな。兵士達も決死の覚悟で戦場に出とる。嘆いたらあきませんな。」

 翠鷹も明るく言う。


 そんな多くの死傷者を出した戦場であったが、俺達の中に死者が出なかっただけ良かったと思う。

 その後、魔力が回復した藍鷲によってララ法国兵士達が帰され、俺達も聖都へと戻るのだった。


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