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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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378話 甲蟲人:蟻11

「でりゃー!」

 ビオデルテの渾身の一撃が甲蟲人:蟻の長剣を持つ腕を斬り飛ばした。

「よしっ!これで武器は無くなった!一気に攻めるぜ!」

 盾を構えていたマジガラントが意気揚々と片手斧を振り上げる。

 相手は片腕を無くし、武器も無い。もう反撃される恐れもないと思っての事だ。

 しかし

「Gyishaaaa!」

 甲蟲人:蟻は武器と片腕を失った途端に凶暴化し、その顎でマジガラントに噛みつこうと迫ってきた。

「うぉ!?」

「危ない!」

 ベールデールが咄嗟に槍を甲蟲人:蟻の顎に向けて突いた。

「Gyishaaaa!」

 ベールデールの突き出した槍の穂先を噛む甲蟲人:蟻。

 そのまま一噛み、二噛みされるうちに穂先が曲がっていく。鋼で出来た槍の刃を噛み曲げる程の咬合力。

 噛まれた槍を持つベールデールの膂力では口元から槍を抜くことすら出来ない。


「こいつめ!」

 ガルドビジオが甲蟲人:蟻の首元を突いた勢いでベールデールの穂先を口元から槍が外れた。

「武器が無くても要注意だ!噛まれたらひとたまりもないぞ!!」

 ビオデルテが警告を発しつつ、甲蟲人蟻の胸部と腹部の節を狙って剣を振るう。

 マジガラントも首筋を狙って斧を振り下ろす。

 穂先の曲がってしまった槍を持つベールデールは噛みつこうとしてくる度にその頭を突いて噛みつきを防止する。

 ガルドビジオも首を落とす為に顎のの下を狙って槍で突く。


 暫く続いた攻防であったが、最後はビオデルテが見事に首を刎ねて一体の甲蟲人:蟻を倒すことに成功。

「やっと1匹か。あと何体いるんだ?」

「考えたくもないね。」

 マジガラントが問いかけるがガルドビジオが吐き出すように答える。

 そうこうするうちに次の甲蟲人:蟻が迫ってきて振り下ろされた長剣をマジガラントが大盾で防いだ。

「私の槍は曲がっちまったから殴打武器としてしか意味を成さないよ!」

「それでもいい!腕の付け根や胸部を狙って突いてくれ!」

 ベールデールが叫ぶように言うがビオデルテは冷静だった。

 そんなビオデルテ達が2体目の甲蟲人:蟻を屠った頃、ようやく後方に軍隊が整列し始めた。ララ法国の増援だ。

「負傷者がいる組は後方に下がれ!ララ法国の援軍だ!前衛が厳しい組は一旦下がれ!!」

 ケイル王国の将軍の叫ぶ声が聞こえた。

「どうする?1度下がってベールデールの装備を調えるかぃ?」

 ガルドビジオがビオデルテに問う。

「いや、まだ致命的なダメージもないし、まだ僕達だけでもやれる。ベールデールは敵の攻撃を押さえる役を続けてくれ。近付きすぎた敵を遠ざけてくれるだけでもありがたい。」

「あいよ!任せて!」

「マジガラントもまだいけるな?」

「俺を誰だと思っていやがる。同期一のタフガイ、マジガラント様だぞ?まだまだ余裕だ!」

「よし!前線での戦闘を継続!」


 ベールデールの槍は曲がってしまったままだが、2体目も無事に倒し、マジガラントの大盾のお陰で受けたダメージも少ない。

 まだやれる。そう判断した。

 3体目の甲蟲人:蟻に対しても終始自分達のペースで戦えている。

 どこか慢心もあったかもしれない。

「てりゃー!」

 1体目同様に長剣を持つ腕をビオデルテが斬り飛ばした。

 が、次の瞬間、甲蟲人:蟻は斬り飛ばされた右腕を左腕で掴み、そのままビオデルテの頭部に向けて振り下ろしてきた。

 とてもマジガラントも大盾による防御が間に合わない。

 ベールデールはビオデルテが前進するに合わせて後ろに下がっていたし、ガルドビジオの槍も届かない。

 やられる!

 と、思った矢先。

 白い影がビオデルテの前に飛び出ると振り下ろされる甲蟲人:蟻の長剣を持つ腕を弾き飛ばした。

 さらにその白い影は手にした刀を一閃。甲蟲人:蟻の首を刎ねた。


 白い影が振り返って言う。

「大丈夫でしたか?」

 その人物は女性であり、真っ白な長髪をポニーテールにし、前髪は左右に垂らしており、その目は細く吊り上がりまるで狐のようだった。そして耳が横に長い。

 女は胸元がざっくり開いた和風の着物を着用しており、そこには自己主張も甚だしい胸の谷間が強調されていた。男なら決して視線を向けずにはいられない。魔性の胸元だ。

 女性は一振りの刀を携えて凜とした出で立ちで戦場に立っている。緑鳥達と共に戦場にやって来た白狐である。

 突然の乱入者に見蕩れながら立ち尽くすビオデルテ。

「あ…あ!た、助けて頂きありがとうございます。」

 遅れて状況を飲み込んで、どもりながらも礼を口にする。

「はい。無事なら良かった。敵はまだ多いですから気を引き締めていきましょう。」

「は、はい!」

「では私はあちらの方に加勢に向かいますので。」

 白狐はそう言い残し、押され気味な兵士達の加勢に向かっていった。

「…白き…淑女。」

 去って行く白狐の後ろ姿を呆けたように眺めるビオデルテ。

「なにをボーッとしていやがる。ビオデルテ!まだ次が来るぞ!」

「白き淑女…。あ、あぁ。今の方はララ法国の兵士だろうか?」

 マジガラントにせっつかれて正気に戻ったビオデルテ。だがまだ白狐の事が気になっていた。

「知らねぇよ。ララ法国の兵士か、紫鬼さんと同じ神徒じゃねーの?いいから集中しやがれ!」

「あぁ。すまない。まずは目の前の敵を倒してからだな。」

 ビオデルテは4体目の甲蟲人:蟻と向かい合う。

 戦いに勝ってあの白き淑女の事を聞いて回ろう。ビオデルテは1人、心の内でそう誓ったのだった。


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