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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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376話 ケイル王国9

 兵士の数が12000名にもなると4人組のパーティーが3000組出来る計算である。

 1パーティーに5分程度の訓練時間を割くとして1時間に12組、1日10時間の訓練時間を設けても120組しか紫鬼との訓練は出来ない。

 甲蟲人が侵攻してくると思われる日にちまで10日では1200組しか紫鬼との訓練は出来ない計算になる。

 その為、紫鬼との組み手の訓練は中堅以上の兵士に限られた。

 おのずと中堅以下は紫鬼との訓練を待つ、もしくは訓練を終えた中堅以上のパーティーとの模擬戦を行う事となった。

 模擬戦は木製の剣や槍、斧を使って行われる。実際の装備でやり取りして無事なのは紫鬼くらいなものである。


 紫鬼との訓練を終えたビオデルテ達も新人相手の組み手稽古を行っていた。

 Bランクパーティーとしてお墨付きを貰ったビオデルテ達と良い勝負が出来ればおのずとそのパーティーもBランクに届くと言うものである。

 だが流石に中堅所のビオデルテ達に敵う新人達はおらず、ビオデルテ達の訓練というよりは新人教育に近い物となる。

 その為、組み手を終えてもビオデルテ達は軽く息があがる程度でまだ余裕がある。

 そんな訳で休憩時間はおのずと侵攻してくる甲蟲人に突いての話題で盛り上がる。


「なぁ、甲蟲人ってどんななんだろうな?」

 ガルドビジオが3人に問いかける。

「蟻が人型になった兵士達が一万とか二万とか向かってくるんでしょ?正直怖いわ。」

 ベールデールが両肩を自身で抱いて答える。

「まぁ、人型の蟻って事は要するにでかい蟻だろ?砂漠地帯に出るジャイアントアントを想像すればいいんじゃないか?」

 マジガラントが自信満々に答える。

「僕は砂漠地帯には行った事がないからジャイアントアントに遭遇した事はないな。」

「おれもだ。1m程度の大きさの蟻なんだろ?」

「私も砂漠には行った事無いから知らないけど、砂漠地帯には巨大化した昆虫が沢山出るらしいね。」

 ビオデルテ、ガルドビジオ、ベールデールはジャイアントアントに遭遇した事がないと言う。

「なんだよ。お前ら。ジャイアントアント知らねぇのかよ。」

「そう言うマジガラントはジャイアントアントに遭遇した事あんのかよ?」

「いや、俺も実際に出会った事はねぇけどさ。」

 ガルドビジオがマジガラントに聞くと小さい声で返答が返ってくる。

「なんだよ。お前もないのかよ。」

「よく私達を馬鹿に出来たもんだね。」

「いや、でも魔物図鑑で見た事はおるぞ。」

「図鑑かよ。」

「実物見た事ないんでしょ?私達と一緒だよ。」

 とワイワイと3人が話す中、ビオデルテだけは真剣な顔で思案する。

「どうした?ビオデルテ。何か考え方か?」

 それに気が付いたガルドビジオが問いかける。

「いやさ、マジガラントの言う通りジャイアントアントよりも大きい体した蟻が人型になってる訳だろ?…気持ち悪くないか?」

 真剣な表情でビオデルテが問いかける。

「だって蟻だよ?あの蟻がデカくなっただけじゃなくさらに人型してるんだよ?キモくないか?」

 力説してくるビオデルテ。

「確かに蟻が大きいだけでもキモいのにさらに人型だって考えたら、物凄くキモいわね。」

 ベールデールが同意する。

「そうだな。あの口元とか巨大化しただけでも気持ち悪いよな。」

「足とかどうなってるんだろうな?蟻って6本足だよな?手が4本あるのかな?」

 ガルドビジオも同意してマジガラントは疑問を口にする。

「足な。確かに人型って事は2本足で立ってるだろうから手が4本あるんじゃないかな?」

 ビオデルテは答えながら身震いする。

「気持ち悪いよな?」

「えぇ。キモいわ。」

「そう考えると気持ち悪いな。」

「確かに。」

 ビオデルテの問いかけに全員が身震いする。


「紫鬼さんの話だと長剣持ってるって話じゃん?手の構造とかは人のそれになってるのかね?」

「さぁ。でも昆虫の足のままだと剣なんて持てないだろ?そこは進化してるんじゃないか?」

 ベールデールの問いかけにビオデルテが答える。

「4本腕ともなると長剣も4本持ってるのかね?」

「紫鬼さんはそんな事言ってなかったから1本だけなんじゃねぇの?」

 ガルドビジオの問いかけにマジガラントが答える。

「って事は残り3本の足が空いてるって事か。」

「紫鬼さんは体の節とか、関節部を狙えって言ってたよな?」

「あぁ。外骨格は固くて刃が通らないって言ってたな。」

「槍で関節部狙うのって、結構難しいよ。そんなキモい奴相手に、なんて私自信無くなってきたわ。」

「そんな事言うなよ。おれだって槍で動き回る奴の関節部だけ狙うなんてやったら事無いよ。」

 ベールデールが肩を落とす中、ガルドビジオが微妙なフォローを入れる。

「僕達みんな甲蟲人なんて相手にするのは初めてなんだ。キモくてもよく観察して適切な行動が出来るように頑張ろう。」

「その為にはまず敵の攻撃をマジガラントが受け止めてくれないとだね。」

「頼りにしてるよ?マジガラント。」

 ビオデルテ、ベールデール、ガルドビジオから熱い視線を送られてマジガラントもヤル気を出す。

「おぅ。任せとけ。キモいって言っても相手は虫だろ?俺達ならやれるって。」

「そうだね。あまり気負いし過ぎるのも問題だね。僕達に出来ることを最大限発揮出来るように頑張ろう。」

「「「おー!」」」

 そんな会話をしているうちに訓練再会の時間になった。

 ビオデルテ達は自分達の連携をより強固なものにする為に、今日も訓練に励むのであった。


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