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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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369話 砂の迷宮20

 最初は何が起きたのか分からなかった。

 唐突に下から突き上げられるような衝撃を受けて視界が砂で埋まった。

 気が付いた時には地面に突っ伏して倒れていた。

 起き上がり周りを見ると皆一様に倒れ込んでいる。

 1番最初に起ち上がったのは、スフィンクスから1番距離のあった銀狼であった。

 俺は三半規管をやられたのかなかなか起ち上がれずにいた。

「サンドストーム!」

 1番近くにいた俺と白狐が砂嵐に巻き込まれた。

 体をバラバラにされそうな程の豪風に王鎧を削り取ろうとする砂の粒子を叩き付けられて体が宙を舞う。

 目まぐるしく変化する視界の中で金獅子と蒼龍、紫鬼がスフィンクスへと迫っていった。

 3人が肉迫する寸前、またしてもスフィンクスが呪文を唱えた。

「サンドエクストリーム!」

 今度は空中に投げ出されていた為、その攻撃が見えた。

 それはスフィンクスを中心出した全方位攻撃。地面の砂が大きく突き上げられてウェーブを起こしていた。

 スフィンクスが中心となるため、離れた位置には被害が少ないが、この300m四方の部屋全体の地面が波打っていた。


 大規模魔法なだけあって消耗も激しいらしく、スフィンクスは肩で息をしていた。

 相手は取っておきまで出してきたのだ。決着は近いと感じた。

 砂嵐にもみくちゃにされながら壁に激突した俺と白狐。

 激突の拍子に白狐は左腕を折ったようだ。

 そこにすかさず緑鳥の回復の聖術が飛ぶ。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!」

 緑鳥もスフィンクスから離れた位置にいた為、サンドエクストリームの被害は少なかったようだ。

 逆に曲がっていた白狐の左腕がもとに戻る。

 白狐も砂嵐に飲まれながらも敵の魔法の正体に気が付いたのだろう。

 俺達は頷きあってスフィンクスのもとへと走りだした。

 銀狼もスフィンクスに肉迫していた。

「双狼刃!」

 その刃をひらりと避けてスフィンクスが左手を銀狼に向ける。

「サンドバースト!」

 咄嗟に両腕を交差させてこれをガードする銀狼であったが、威力に負けて吹き飛ぶ。

 その頃には金獅子達も立ち上がり、スフィンクスへと迫る。


「王化!爪王!」

 紫鬼が叫びながらスフィンクスへと迫る。すると左腕のバングルにはまった王玉から灰色の煙が立ちのぼり、左腕に吸い込まれるように晴れていった。

 そして左腕に灰虎が付けていたような灰色の鉤爪付きの籠手を身に着けた爪王形態となる。なにか思いついたか?

 同じく俺も叫ぶ。

「王化、呪王!」

 言った途端に左手小指にはめたリングの橙色の王玉から橙色の煙が立ちのぼり俺の体を覆い尽くす。

 そしてその煙は体に吸い込まれるように消えていくと、残ったのはいつもの全身黒の鎧ではなく、所々に橙色の線が入った王鎧に身を包んだ俺の姿がある。

 橙色の線は左手首から腕を巡り胸、腹に走り太股を通って両足首にまで至っている。

 俺も1つ思いついたのだ。


 肉迫する俺達を前にスフィンクスは三度魔法を唱える。

「サンドエクストリーム!」

 スフィンクスを中心に地面の砂が大きく波打つ。

「風刃・虎空斬!」

 駆けながらも鉤爪を振り下ろした紫鬼。その鉤爪からは風の刃が生み出されて跳ね上がる砂を掻き分ける。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。暴風の力へとその姿を変えよ。魔素よ猛れ、吹き荒べ魔素よ。我が目前の敵を暴風となりて打倒し給え!ウィンドボール!」

 俺が唱えたウィンドボールの魔術が突き上げる砂を掛け分けてスフィンクスへの道を作る。

 白狐はタイミングを見て大きく跳躍して砂の波を避けた。


 魔法を放った直後のスフィンクスに俺、紫鬼、白狐が迫る。

「鬼爪!」

 風の鉤爪に妖気を乗せた紫鬼の必殺技である。鉤爪は頭頂部から腹部迄を通り下に抜ける。

「抜刀術・飛光一閃!」

 光の速度に迫らんばかりの高速で振り抜かれた刀により放たれた一閃はスフィンクスの左腕を掬いあげるように切り飛ばす。

 最後は俺だ。

 スフィンクスの背後に回り込んだ俺は、首の後ろ、うなじ辺りに黒刃・右月を当てがい、前面の首元に黒刃・左月を滑り込ませて思いっきり掻き切った。

 俺は元殺し屋だからな。この動作は何百何千とやってきた。人型の相手ならどうすれば首を刎ねられるかは体が覚えているってやつだ。

 黒刃・右月と黒刃・左月に挟まれる形でスフィンクスの首が刎ねられた。

 そのまま首を失ったスフィンクスは物言わぬ砂の山と化した。

 あの雰囲気だと「よくぞ余を倒したな」的な事を言うかと思ったけど、それはなかったようだ。


「終わったのか?」

 砂の波に飲まれて壁まで運ばれていた銀狼が問いかけてくる。

「えぇ。この通り、スフィンクスは砂の山になりました。」

 白狐が答える。

「むう。この人数でもなかなかに厳しい相手であったな。」

 金獅子も言う。

「やはり魔法使いは面倒だな。多彩な魔法に翻弄されたわ。」

 蒼龍も疲れたように言う。

「皆様、お疲れ様でした。怪我はありませんか?聖術の準備ならあつでも大丈夫ですよ。」

「緑鳥も砂の波に飲まれたじゃろう?よく無事だったな?」

 紫鬼に問われると

「私は壁際にいましたのでそのまで被害はありませんでした。ご心配おかけ致しました。」

「むぅ。無事ならそれで良いな。」

 わっははと豪快に笑う紫鬼。


 俺は呪王形態、紫鬼は爪王形態になったせいか王化が解けてしまった。

 ギリギリだったんだな。だが呪王形態も爪王形態も実に的確なタイミングで使えた。

 実戦レベルと見ていいだろう。

 そんな事を思っていると白狐がそそくさと部屋の出口に向かって行った。

「ありましたよ!宝箱です。クロさん、早く開けて下さい!」

 急かされた。

 戦闘終了の一息つくまでもなく、俺は宝箱に向かったのである。


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