362話 砂の迷宮15
地下99階層を行く俺達。
途中ナーガの大群に王化前に襲われ、敵の放つウォーターボールを金獅子がもろに受けて吹き飛び、それに気を取られた銀狼がウォーターアローで左足を貫かれるといった場面もあったが、緑鳥の聖術により今は万全だ。
襲ってきたナーガの大群も王化してからは問題なく対処出来た。
だが、やはり魔法使いが相手にいると一気に戦い辛くなるな。
こちらにも魔術師がいれば互角になるんだろうけど、残念ながら藍鷲も朱鮫もまだ聖都で特訓中である。
あいつらもそろそろ3時間の壁に到達するだろうから、次の迷宮に挑む時には一緒に行けるだろう。
そんなこんなありながらも俺達は下階への階段を見つけ出した。
辺りにいた魔物は全て倒しているので、少しはゆっくりと休憩出来るだろう。
次は100階層だ。ベヒーモスみたいなボスが出てくるんだろう。
ここは1つ願掛けじゃないけど、カツカレーでも作るか。
俺はささっと影収納から調理台を取り出すとオーク肉の塊をどさっと置いた。
「何か作るんですか?」
白狐が聞いてきたので影収納から色々と調理器具を出しながら答える。
「あぁ。カツカレーでも作ろうかなって。カレーは作り置きがあるからカツを揚げようと思うんだ。」
「お?カツカレーか?ボス戦を前に願掛けだな。」
紫鬼も言ってくる。
「じゃあ、わたしも手伝います。」
「オレ達は調理には役立たないからな。敵が来ないか警戒しておこうか。」
「うむ。カツカレーの為ならそのくらいせんとな。」
緑鳥が手伝いを申し出てくれて、銀狼と金獅子は辺りの警戒に回ってくれた。
「おぅ。ワシも警戒しておこう。」
「我もだな。」
遅れて紫鬼と蒼龍も金獅子達の後を追う。
白狐は当たり前と言わんばかりに俺の隣に陣取っている。
「私はなにしましょう?」
「んじゃ肉を切ってくれるか?だいたいでいいけど5cmくらいかな。」
「わたしは?」
「緑鳥はキャベツの千切りを頼むよ。カレーでもカツと言ったらキャベツの千切りだからな。」
2人に作業を依頼して俺は鍋に油を注いで魔道コンロで加熱し始める。
5cmくらいの肉を揚げるから3cmくらいの深さになるように油を注いだ。
そして卵、牛乳、小麦粉、サラダ油を良くかき混ぜてバッター液を作る。
「人数分お肉切りましたよ。」
「んじゃ筋切りして肉が柔らかくなるように叩いてくれ。」
「はい。」
バッター液が出来たらバットにパン粉を用意する。
「キャベツ切り終わりました」
「じゃあ白狐が叩いた肉を成形して塩コショウで下味つけてくれるか?」
「わかりました。」
俺はパン粉を2度付けする為にバッター液が入ったバットを2つ、パン粉の入ったバットを2つ用意した。
油の温度が上がった事を確認する為に衣を少量、油に入れると、途中まで沈んですぐに浮き上がってきた。これでだいたい170~180度だろう。
俺は白狐叩いてから緑鳥が形成した肉をバッター液に浸してパン粉を付けていく。
薄めに付けて、2度付けするのがポイントだ。
片面3分ずつ揚げてバットにあげて余熱で火を通す。
全部一通り揚げたら再度油に投入。
美味しそうな揚げ色になったら完成。
少しバットで冷ましてからカットしていく。
厚さが5cm程度なので、カットする幅は2~3cmくらいにしておく。
切った肉が薄い桜色になっている事を確認して盛り付けていく。
皿の上にご飯、キャベツの千切り、カツを乗せてカレーをかける。
この時カツには3分の1くらいカレーをかけるつもりでよそうと綺麗に見える。
って事でカツカレーの完成だ。
警戒にあたっていた4人も呼んで皆で食べる。
調理中2体のナーガが出たようだが4人で難なく倒したそうだ。
「おぉ。カツカレー!美味そうじゃのう!」
紫鬼が率先して皆に皿を配ってくれた。
「んじゃ頂きます。」
「「「「「「頂きます。」」」」」」
皆で実食だ。
「う!美味い!カツの厚みがなんとも言えんな。」
「あぁ。カレーとの相性も抜群だ。」
金獅子と銀狼こら絶賛頂きました。
「ちょっとキャベツの千切りが厚めでしたね。申し訳ありません。」
「いや、このくらいでちょうどいいですよ。カツの厚みにキャベツが負けてない感じで。」
緑鳥が自分の切ったキャベツの千切りに反省するのを白狐が宥めている。
「やっぱりクロのカレーは美味いのう!カツも厚くて食べ応えがある。」
「うむ。我も黒猫のカレーは好きだな。このカツとも相性がいい。」
紫鬼と蒼龍にも褒められた。
俺も自分で食べてみるがなかなかの出来ではないだろうか。
まさかこれが迷宮内で作られたものだとは誰も思わないだろう。
そんじょそこらのカレー屋を超えたなっと自画自賛してカレーを頬張る。
皆大満足の食事を終えて後片付けを始める。
金獅子達4人はまた警戒にあたっている。
食事中は魔物の襲撃もなかったのだからそこまで心配ないと思うのだが。
揚げ物をした時に困るのが油の処理だ。
水と違ってそのまま床に撒くわけにもいかない。
そこで使うのは片栗粉である。
完全に固まる訳ではないが、ドロッとした固形にはなる。
これで普通のゴミと一緒に纏めておけば可燃ゴミとして出せるという訳だ。
食後の休憩も挟んでいざ最終階層へと向かう。
さてさて、どんなボスが現れるか。
今回は宝箱もそんなに出なかったからな。倒した後にどんな迷宮遺物が手に入るかも楽しみだ。




