361話 砂の迷宮14
7日目、地下91階層。
サンドゴーレムにも飽きてきた。
すでに合体する奴らも倒し方が固まりつつあって俺達の敵では無くなっている。
時たまデザートバイソンやデザートタイガーといった獣型の魔物が出る階層もあるが、ほとんどがサンドゴーレムかマッドゴーレムになっていた。
90階を越えて何か出てくる魔物に変化はあるだろうか。
すると現れたのは下半身が蛇、上半身が人間のラミアに似た魔物だった。ただ、ラミアの体長は4m程度に対してこちらは3mほどと少し小さい。
しかしその頭部には頭髪ではなく、無数の蛇が生えていた。
「なんだ?エキドナか?」
「いや、あれはナーガですね。砂漠地帯に住まう半人半蛇の魔物です。確か水を操るとか。」
俺の疑問に白狐が答えてくれる。
「うむ。ナーガと言えばAランクの魔物よな。一応王化して挑むか。」
金獅子は言うと王化する。
「王化!獣王!」
金獅子が声を上げると、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏う。
次の瞬間、その煙が吸い込まれるように体の中に消えていき、煙が晴れると獅子を想起させるフルフェイスの兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王の姿となる。
「では私も。王化!破王!!」
白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。
次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ破王の姿となった。
「王化!龍王!」
蒼龍が言うと胸に下げたネックレスにはまる蒼色の王玉から蒼色の煙が吐き出される。
その煙は体に吸い込まれるように消えていき、残ったのは龍をモチーフにしたような兜に蒼色の全身鎧を纏った龍王の姿となった。
「王化!牙王!」
銀狼が声を上げると、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏う。
その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると狼を象ったフルフェイスの兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王の姿となる。
「王化!鬼王!剛鬼!」
紫鬼が王化し、右腕にしたバングルにはまる王玉から赤紫色の煙を吐き出しその身に纏う。
その煙刃体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると額に2本の角を持つ鬼を象った赤紫色のフルフェイスの兜に赤紫色の王鎧を身に着けた鬼王の姿となる。
「王化。聖王!」
緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏う。
その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると緑色の鳥をイメージさせるフルフェイスの兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王の姿となる。
「王化!夜王!!」
最後に俺も王化する。左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏い、その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となる。
俺は影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。
ナーガの数は10体ほど。その手にはカットラスが握られている。
カットラスは湾曲した刃を持つ刀身が短めの刀である。
狭い迷宮内の通路では活躍しそうな武器である。
逆に長もの武器の槍などは扱いにくそうな通路であった為、緑鳥の護衛は蒼竜に任せた。
横幅3m程度の通路にナーガがひしめく。
先陣を切ったのはやはり白狐と金獅子。
白狐は抜刀術でナーガの首元を狙い刀を振るう。
金獅子は上段からの振り下ろしだ。
しかし、どちらもナーガの持つカットラスに止められた。
金獅子の渾身の振り下ろしを片手で止めるとかナーガの膂力の高さを感じられた。
ナーガは集団戦に慣れているようでガードした個体の横をすり抜けて別の個体が攻撃を仕掛けてきた。
だが集団戦ならこちらも慣れたものである。
金獅子に向けられたカットラスは銀狼が、白狐に向けられたカットラスは俺が止めた。
するとカットラスでガードしていた個体が頭を振って頭部に生えた蛇をこちらに向けて伸ばしてきた。
ぱっと見でも10体以上の蛇が口を開けて迫ってくる。
「甘いわ!」
金獅子が大剣を振るって蛇の胴体を真っ二つにする。
「ギャッ!」
痛覚は共有しているのか蛇を斬られた個体が悲鳴を上げる。
「ヨクモッ!」
お、言葉を解するらしい。って事は魔人化しているって事だな。より注意する必要がある。
その後も狭い通路で4対4の攻防は続いた。
1体ナーガを倒すとその穴を埋めるように別のナーガが前進してくる。
通路が狭いため、紫鬼の出番はなく、蒼龍と共に緑鳥の護衛兼後方の警戒を頼んだ。
ナーガの剣技はなかなかで王鎧が無かったら傷を負っていただろうタイミングもあったが、王鎧に守られた。
結局10体のナーガは俺達4人で相手取り、無事に全滅させた。
パーピー肉を食べてたくらいだからナーガの肉もドランは食べるだろうか?思い立ったので、一応死骸を上半身の人型と、下半身の蛇型に切り分けて、蛇型の方だけを影収納に収めていった。
その後もナーガに遭遇するケースは増え、しばらくの間はナーガと戦い続ける事となった。




