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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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359話 砂の迷宮12

 5日目、地下66階層までやってきた。

 そこで新手に遭遇。

 敵はカンガルーのような見た目だが手がグローブをはめているかのように大きく発達していた。

 ボクサーカンガルーだ。

 これには紫鬼が嬉々として参戦した。

 ボクサーカンガルーのジャブは早い。人の頭程もある大きな拳を突き出して紫鬼を牽制する。

 対する紫鬼もジャブで応戦。

 お互いに相手のジャブを掻い潜りジャブを打つ玄人好みの対戦展開。

 とここでボクサーカンガルーがジャブ、ジャブ、フックの変速攻撃。紫鬼はしっかりとガードを固めてこれを防ぐ。

 お返しとばかりにジャブ、ジャブ、ストレート。

 ジャブは避けたものの、ストレートを顔面に受けたボクサーカンガルーは少しよろめき後退する。

 そこを見逃す紫鬼ではない。距離を詰めてジャブ、ジャブ、ジャブ。左フックからの右ストレートを放つ。

 もはや大きなグローブと化した両手でガードを固めてこれを受けるボクサーカンガルー。

 右ストレートに合わせる形で高速のジャブを放つ。

 見事に顔面にクリーンヒットしたジャブ。仰け反る紫鬼だったが、堪えた。

 体を引き戻す勢いそのままに再び右ストレート。

 顎先にヒットしてボクサーカンガルーがよろめく。

 そこにラッシュをかける紫鬼。

 ジャブ、ジャブ、左フック、右ストレート、左アッパー。

 全てを顔面に受けたボクサーカンガルーはグロッキー状態に。

「これで仕舞いじゃ!鬼拳!」

 妖気を乗せた渾身の右ストレート。

 顔面に突き刺さったボクサーカンガルーは壁にまで吹き飛んだ。

 首の骨が折れたらしく、ピクリともしなくなった。

 ボクシング対決は紫鬼に軍配が上がった。


 地下60階層を超えてから出てくる魔物も量より質になってきた。

 その後もボクサーカンガルーが出ては紫鬼を好敵手と認めたのか、皆一様に紫鬼に向けて駆けていく。

 ボクサーカンガルーのテクニックは並のボクサーを超えており、紫鬼ですらいいのを2、3発貰っていた。

 軽い足取りでフットワークを駆使してくるボクサーカンガルーもいれば、どっしりと構えてインファイトに持ち込もうとするボクサーカンガルーもいる。

 中には左腕を前に垂らしてユラユラ揺らしてフリッカージャブを放つものまで現れた。

 フリッカージャブは腕全体をしならせて鞭のように斜め下から撃ち込まれるパンチである。

 リーチが長くカウンターを狙ったむらの顎先を捕らえてフラつかせる場面もあった。


 中には拳にトゲトゲが付いた上位種らしきボクサーカンガルーも出てきて、ガードする紫鬼の腕を大きく腫れ上げさせていた。

 だがこちらには緑鳥がいる。

 1戦毎に緑鳥の聖術を受けて全快した紫鬼は次々とボクサーカンガルーを討ち破っていった。

 もちろんその間にも俺達を襲うボクサーカンガルーもいたので、白狐はじめ、金獅子、銀狼が拳を掻い潜りながら刃を潜り込ませてその首を刈っていった。

 なかには首を狙った斬撃を腕を刺し入れて腕で受けて、逆の腕でカウンターを仕掛けてくるような個体もおり、戦闘センスの高さが窺えた。


 そのうち紫鬼もボクシング対決に飽きたのかレスリングで対抗するようになった。

 ジャブを掻い潜りタックルを決めてボクサーカンガルーを押し倒すと、引き倒す。マウントポジションをキープした紫鬼はパウンドパンチで滅多打ちにする。

 馬乗りなんてされた事がないであろうボクサーカンガルーほ為す術無く滅多打ちにされて息を引き取った。

 そこからは寝技も試していた。

 腕ひしぎ十字固めや、腕ひしぎ三角固め、腕ひしぎ逆十字固めに腕ひしぎ脇固めなどなど、紫鬼は打撃系だけでなく寝技にも精通しているようだ。


 俺は大量のカンガルーを解体して、その肉を影収納に収めていった。

 カンガルーなんて始めて捌いたが、ここの迷宮だけでも相当数捌いた為、もう解体方法は熟知した。

 銀狼が言うにはカンガルー肉は食べられるとのことだったが、どんな味なんだろうか?

 とか考えているうちに締め落として紫鬼がボクサーカンガルーを仕留めていた。

 その肉も解体して影収納に収めた。

 ちょうど昼時だ。早速カンガルー肉を調理してみよう。


 まずは肉のクセを確かめるために少量を薄切りにして単純に焼いてみた。

 味付けは塩コショウのみ。

 思ったより味にクセはなく臭みもない。サッパリとした口当たりである。

 そしてなによりあの強靱な肉体からは想像できないくらいに柔らかかった。

 これならローストしても煮込みにしても何にでも合いそうである。

 ってことで早速厚めに切ったカンガルー肉のステーキを人数分用意した。下味は塩コショウのみ。

 別口でソースも作る。

 肉の味から合いそうな赤ワインと粒マスタード、蜂蜜、バター、塩コショウ、ブラックペッパーを混ぜ合わせる。割合は赤ワイン2対粒マスタード1対蜂蜜1、バターはフライパンに敷くだけだから少量、塩コショウとブラックペッパーで味を整える。

 以前作ったことがあるローストビーフのタレに似たものになった。

 付き合わせはパンの方が合いそうな気がしたので買い置きして影収納に収めていた丸パンを取り出す。

 ヨルジュニアの分は薄切りにして塩コショウのみで味付けしたものを用意した。


 いざ実食である。

 皆カンガルー肉は始めてとの事でドキドキの食事となったが、食べ始めてみると皆も俺と同じ感想でクセも無く食べやすいと好評だった。

 これだけクセが無ければカレーにも合うだろうな。

 次はカレー味にして焼いてみるか。


 迷宮での思わぬ収穫であった。

 さて、昼食後の休憩を挟んでさらに下階へと進もう。


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