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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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356話 砂の迷宮9

 ギカントセンチピードと戦い始めて暫く時間が経過した頃、分かったのは相手の攻撃パターンである。

 基本牙を前面に押し出した噛みつきか、口内の粘液に牙から出る毒液を混ぜて飛ばすか、発達した頭板による体当たり、もしくは全身の多脚を用いてすり潰しにくるかの4択だ。

 攻撃パターンが読めれば回避も余裕だ。

 しかし、まだこちらもダメージを与えられていない。


 地中からギカントセンチピードが顔を出す。

 そこに跳びかかったのは金獅子。

「断頭斬!」

 大きく振りかぶった大剣をギカントセンチピードの頭部に向けて振り下ろす。

 ギンッ

 と硬質な音がする。

 見れば金獅子の大剣は4本の牙で受け止められていた。

「なんと?!俺様の大剣を口で受けるか。なんという顎の力だ。」

 そのまま大剣を噛まれた金獅子は壁に叩き付けられる。

「ぐはっ!」

 そしてギガントセンチピードは大口を開けて金獅子に向き合うと口内に光が集まっていくのが見える。

「あ!危ない!熱光線が来ますよ!」

 白狐の予告通り、1m程の太い熱線が金獅子を襲う。

「てりゃっ!」

 咄嗟に横に跳んだ金獅子であったが、その左足に熱線を受けてしまう。

「ぐあっ!」

 熱線は王鎧を焼き切り金獅子の左足ふくらはぎに穴を開けた。


「いけない!今聖術で癒やしの奇跡を!」

 緑鳥は言うなり呪文を唱え始める。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!」

 緑鳥がそう言うと手にした錫杖にはまる魔石が輝き出した。

 光は金獅子を包み込むと穴が空いた左足ふくらはぎに肉が盛り上がってくる。

「ふぅ。助かったぞ。緑鳥。こやつ相手に片足ではキツかった。」

「気をつけて下さい。その熱線は王鎧すらも焼き切ります。」

 緑鳥が言うが早いかギガントセンチピードが再び熱光線を放ち始める。今度は四方八方にでたらめに頭を振って熱線をばら撒く。

 俺達はそれぞれ熱線を避けるように体を投げだして一通りを避ける。

 熱光線を放った後にはギガントセンチピードはすでに砂の中。一向にダメージを与えられない。

 相手の攻撃パターンが1つ増えてしまった。

 しかも受けたら死ぬかも知れないほどの威力ときたもんだ。

 参ったね。どうするか。


 何度目かになる壁からの突進。

 だがそんなギガントセンチピードの目の前にヨルジュニアが躍り出た。

「危ない!」

「にゃー!」

 助けようかと駆け寄ったその時、ヨルジュニアが盛大に黒炎を吐き出した。

 ブォワッ!

 ギガントセンチピードはこれを嫌がったのかすぐさま上方に体を捩り天井部に潜っていった。

 そうか。火か。熱光線を撃ってくるくらいだから忘れていたが相手は蟲系。火には弱いはずである。

「紫鬼!絶鬼形態だ!奴は熱に弱いぞ!」

「なに?熱?そうか熱か。よし。ワシに任せろ!」

 そう言うと紫鬼は右手と左足を前に出して叫ぶ。

「王化!絶鬼!」

 紫鬼がそう言うと右手にしたバングルにはまる赤い王玉から赤紫色の煙が、左足につけたアンクレットにはまる青い王玉からは青紫色の煙が立ちのぼり紫鬼を包み込むと赤紫色と青紫色が混ざり合って紫色の煙となって紫鬼の体に吸い込まれていった。

 煙が晴れた後に残ったのは3本角が特徴的な鬼の意匠が目立つフルフェイスの兜に紫色の全身鎧、王鎧を纏った鬼王の姿となる。

「熱なら俺様の雷も効果的だろう。雷鳴剣!」

 雷を纏った大剣を胴節部に叩き付ける金獅子。

 効果抜群で雷に撃たれたギガントセンチピードの胴節部は痙攣を起こす。

「よし!雷か!ヨルジュニア!黒雷だ!」

「にゃー。」

 まるでわかったと返事をするように一鳴きするとヨルジュニアは天井部に潜っていくギガントセンチピードに向けて黒雷を放った。

 バリバリバリバリッ!

 黒雷の直撃を受けたギガントセンチピードはその動きを止める。痺れたようだ。

 体のあちらこちらから煙が上がっている。

 その間にも白狐、金獅子、それに俺は見えている胴節部に向けて剣を振るう。

 やがて脚部が砕け始め、胴節部に刃が届くようになる。


 1度天井部の砂に潜り込んだギガントセンチピードだったが、再び床から姿を現す。

 そこを狙ったように紫鬼が攻撃を仕掛ける。

「鬼火・蕾。」

 片手を上げた鬼王の前に5cm程の紫の炎が発生。すると鬼王の正面に立っていたギガントセンチピードへと向かい、その頭部を激しく燃え上がらせる。

「Gyaaashaaaa!」

 ギガントセンチピードは頭部の炎を消そうと体を床や天井に擦りつける。しかし鬼火はなかなか消えないのである。

 砂に潜り火を消そうとするギガントセンチピードの胴節部にさらに鬼火が炸裂する。

「鬼火・開花。」

 20cm程度の紫の炎の玉が右手の前に生まれ、ギガントセンチピードへと向かう。

 ボンッ!

 着弾の音は地味だが効果抜群。砂に潜っていくギガントセンチピードの胴節部に消えない炎が纏わり付く。

「Gyishaaa!」

 砂の中からギガントセンチピードの叫び声が聞こえてくる。

 1度完全に天井部に潜り込んだギガントセンチピード。今度は天井部から顔を出して熱光線を放つ動作をする。

「鬼火・大輪。」

 鬼王が言うと突き出された鬼王の右手の先に100cm程の紫の大火球が生まれ、ギガントセンチピードの頭部へと放たれる。

「にゃー。」

 ヨルジュニアもダメ押しの黒雷を放つ。

「Gyiaashasaaaa!」

 熱光線を放つギガントセンチピードだったが、目の前に迫る業火に熱線も途絶える。

 ドゴーンッ!

 大爆発を起こしてギガントセンチピードの頭部が燃え上がる。

 さらに

「雷撃断頭斬!」

 金獅子もダメ押しの雷撃の斬撃を繰り出す。

「Gyiiiii。」

 天井部から顔を出していたギガントセンチピードが落ちてくる。

 顔面に点火した鬼火はすでに全身に広がっている。

 ボォー!

 ゴォー!

 プスプスッ

 鬼火が消えた頃にはすっかりギガントセンチピードは動かなくなっていた。

 弱点がわかればどうということはない。だが今回紫鬼とヨルジュニア、金獅子を連れてきて正解だったな。

 前回メンバーだと俺が呪王形態になっても、そこまでの火力が出せたとは思えない。

 仲間に救われた戦いとなった。


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